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010 増えるの?

 ◇


 部屋の中にいた男は老人ではなく青年と言ってよい年齢に見える。

「俺はオドンだ、この村の長だ、あらためてよろしくな」


 オドンと名乗った男は立ち上がり、俺に向かって右手を差し出した。おっ、握手かな? 俺も右手を差し出して握手すると、オドンは左手で俺の右肩を二度ほど軽く叩いた。

「サブローと言います、こちらこそ、よろしくお願いします」

「サブロー、あんたこの辺りの人じゃないだろ、握手したあと肩を叩くのがここいらの挨拶なんだ」

「やっぱりわかりますか?」

 俺もオドンの肩を二度ほど軽く叩いて、手を離しふたりとも椅子にすわった。


「ああ、着ている物がぜんぜん違うし帽子も巻いていない、髪も目もこの辺では見ない色だ、砂漠を越えて来たのか?」

 頭に巻いた布を帽子と呼ぶのか! ターバンじゃないんだ。


「まあ、そんなところです、目立ちますかね?」

「そうだな、この村だと目立つが、町にはいろいろなやつらが混じっているから、あまり目立ちもしないだろう。でも、絡まれたくなければこの辺の格好をした方がいい」

「わかりました、そうします、忠告ありがとうございます」

「そんなに堅苦しい話し方をしなくてもいいぞ。あんたは良い商人だから、これからも商売しにこの村に来てくれ」

 ガハハハとオドンは笑う。


「オドンさん、若いのに村長なんですね。失礼なこと言ってすみません」

「いや、俺も思ってるからいいぞ。盗賊どもと戦うと村で決めたとき、前の村長が戦いに備えて若くて強いやつを村長にしようってことで俺が選ばれたんだ。自分で言うのもなんだが腕っぷしには自信がある」

「なるほど、そうでしたか」


「オドン呼び出しとはなんじゃ! なにがあった?」

 オドンと話していると村の長老がやって来た。三人の老人が集まるとオドンが話をはじめた。

「長老衆に集まってもらったのは、盗賊に関することだ」

 なんじゃと! と老人のひとりが逸る。

「ここにいる商人さんが盗賊と会ったらしい。その話を皆に聞いてもらいたい、では、商人さん話してくれ」


「それでは、俺は商人のサブローです。俺が盗賊と会ったのはこの村を離れて二日目でした……」

 俺は盗賊と出会ってからのことを話した。

 もちろん、すべてがナビの幻だったことは誤魔化し、魔獣も盗賊に見せたものよりかなり弱い魔獣として話した。村で別の騒ぎになったらまずいからな。

 盗賊が弱い魔獣に遭遇して逃亡した話になった。


「……という次第です」

「盗賊らは村のせいにせんかの?」

 村の長老が問う。


「はい、俺もその点が心配ですが、起こった通りのことを他の仲間に話すでしょう。村人と戦って逃げ帰ったと話すより、魔獣と戦って生きて帰ったの方が仲間にバカにされません」

 そうじゃ、そうじゃと老人たちも同意する。

「そして当分の間は盗賊たちは魔獣を警戒してこの村に来ないでしょう。この間に武器を用意するなり、戦いの訓練をするなりしてはどうでしょうか」

「おまえの言う通りだサブロー、見かけによらず頭が良いな」


 見かけによらずとは失礼な! 頭は認めるが見かけはダメかよ。

(オドンて人、サブローのことよくわかってるじゃない)

 ナビも失礼なやつだ!


「それから、盗賊が捨てた武器は村の物としてください。村の門番に警戒されかと思い外に置いてきたので後で取りに行ってきます」

「本当か! 助かるぞサブロー、見かけによらずいい奴だな」


 見かけによらずとは失礼な! 性格は認めるが見かけはダメかよ。

 どんだけ見かけがダメなんだよ!

(オドン、本当にサブローのことよくわかってるじゃない)

 ナビも本当に失礼なやつだ!


 今夜は家に泊まっていけとオドンが誘ってくれたが、外に置いた家畜や商品が心配だと断った。つぎに商売で村に来たときは必ず泊まってくれと言ってくれたのはうれしかった。

 オドンには奥さんと子供がいるそうだが二人ともシャイなのか奥から姿を見せることはなかった。

 やはり、俺の見た目が悪いのだろうか?


 ◇


 翌日、村の広場でオドンに剣と槍を渡した。

「これが盗賊の武器です」

「助かる。この剣一本で槍三本分の槍先に鍛冶出来るからな、合わせて槍五本分の戦力アップだ」

「武器だけ渡していなくなるので心苦しいです」

「気にするな、すでに戦うと決めたあとだ」


「そうだ、もしよかったらロバ一頭も村でもらってください、俺には不要なので」

「そうかそうか、本当にお前は! 見かけによらずいい奴だな」

 よけいなお世話だ!


「サブロー、お前を見込んで頼みがある」

「なんでしょう?」

「ちょっとここで待っててくれ」

 オドンは剣と槍を持ってどこかに行こうとした。


「ちょっと待ってオドンさん、俺もロバ連れて来ます」

「おう、悪いなこの広場に連れて来てくれ」

「わかりました」


 俺は一旦、村から出てロバを連れて戻るとオドンが先に戻っていた。二人の少女とともに。

 ひとりは夕焼けのようなオレンジ色の短髪に茶色の目で背丈はナビと同じぐらいだ。痩せていて継ぎ接ぎだらけの薄汚れた服を身につけ帽子を巻いている。彼女は俺をジーと睨んでいる。


(ナビ、俺、この子に何かしたのかな)

(セクハラ?)

 してねえよ!


 もうひとりは汚れた長めの金髪だ。綺麗に洗ったら、さぞ見事な金髪になるだろう。目の色は青だが病気なのか右目が白く濁っている。背はナビより頭ひとつ低くとても痩せている。身につけてる服は隣の娘と同じような感じだ。どこを見ているのかよくわからない。


(ナビ、この娘、大丈夫かな)

(サブロー、ロリコンはだめよ)

 ロリコンじゃねーよ!


「サブロー紹介する。大きい娘がバレンナ、小さい娘がラズリだ」

「あのー、頼みごとって?」

「サブロー、このふたりをあずかってもらえないか?」

「えっ?」

 どういうことだ?




門番の男が村長でした。感謝されたサブローですが娘二人をあずかれと言われました。


次回、バージョンアップ

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