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崩れ去る城  作者: 錦鯉
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夢の終わり


その時、見渡す限りの砂漠に、薄紅色に染まる城を見たーーー

瞬き一つで虚像は消え去ってしまったが、視界の端に仄かな赤が見え、土埃の匂いがした。


そこで僕は悟った。あれは自分だと。



私は幼い頃によくこんな夢を見た。

手のひらに収まる程の小さい煉瓦を積み上げて想像もできないほどの巨大な城を作る夢。

僕は掌で包み込むことができる程の小さい煉瓦を摘み黙々と積み上げ土台を作っていく。どれほど時が経っただろうか。積み上げられた煉瓦はまだ全体の1割にも満たない。煉瓦の数は10000を超えた辺りから数えるのをやめた。


果たして僕が生きている内に城を完成させることができるのだろうか。いくら積み上げても終わりが見えない。底知れぬ不安感が纏わりついたじっとりとした汗を拭おうとするが、それらは顔面に張り付いたかのようにこびりついている。


煉瓦を取る手が急に動かなくなった。指が麻痺したかのようなピリピリとした微弱な電流が流れ、いくら力を込めてもそれらは言うことを聞かない。両目から涙が溢れ、視界が霞んだ。


「こんなの無理だよ。僕なんかに出来っこないよ…。」


「もう諦めて良いよね、僕こんなに頑張ったよ、でもできなかったよ。指が動かないんじゃできるはずないじゃん。仕方ないよね」


今自分の顔を鏡で見たらきっと醜いほどの歪んだ顔をしているだろうなと思った。


やがて、僅かに積み重なった煉瓦は意志を持つかのように仄かな赤い光に包まれた。それらは無力な自分を嘆くかのように長い間チカチカと赤を明滅させながら粉々に砕け霧散した。



夢から覚めると私は呼吸が荒くなっていることに気づいた。手足は強張り、夢の中と同じように汗を掻いていた。この現象は幾度となく私を苦しめ果てしない絶望と虚無感を与えた。私は静かに目を閉じそれらの光景を詳細に思い浮かべようとするが、私という存在が拒否するかのように胸の辺りが締め付けられるような痛みがした。しかし、同じ夢を何度も見る内に少しずつだが積み上がる煉瓦の数が増えているような気がする。いや、これは錯覚かもしれない。


いつかこの夢の続きが見たいと強くーーー思った。

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