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渡り猫のタマ  作者: catcore
タマと世界樹の種
8/8

タマと有翼人

 有翼人とターニャが、顔を手で抑えて倒れる中、鷹の有翼人は翼で顔を隠して無事だった。

 倒れている有翼人に、躍りかかり一人を気絶させた。

『くそっ、なんだこのちっこいのは!』

「ひぇぇ、タマさーん!」

 キキが鷹の有翼人に、剣で襲いかかられているが、意外とすばしっこいため、翻弄している。


 今のうちにと、倒れた残りの、二人のみぞおち辺りを、叩いて気絶させ、キキに夢中な鷹の翼に飛びつき、爪を立てて引っ掻いだ。

 『つっ、くそっ、今度はなんだ!』

 「にゃー」

 鷹の人が、振り返り睨んでくる。

 二本足で立ち、猫唱拳の構えを取った。

 手のひらを上にし、手先を内に曲げ二回曲げる。

『猫? 何だそれは! ありえないだろう!』

 鷹の人は、痛みと挑発により怒った様だ。

『ふざけやがって! きりきざんでやる!』


「にゃおおお!」

 気合を入れ猫唱拳の風拳で、速さを得る。

 鷹の人は、剣を横に、低く、鋭く斬りかかってきた。

 体をねじって横転してかわしつつ、距離を詰めてすねに連打する。

「にゃにゃにゃにゃんにゃ! (すねすねすねすねひーざっ! )」

『がぁっ! くそっ!』


 これだけ脛に集中すれば痛いはずだ、最後のひざへの一撃も良い感じで入った。

 鷹の人は羽ばたいて飛び上がる。

 上からナイフを投げてきたが、板術の自動防御によりフライパンではじくと、はじいたナイフの一本は、近くの部下の膝に刺さった。

『面妖な術を使いやがる! これならどうだ!』

 鋭く羽ばたき羽をたくさん飛ばしてきたが、これも防ぎ二人目の部下は、羽だらけになった。


 自動防御の間に、猫弓を袋から取り出して引き絞り、無理な体制で矢を放つ。

『うお、猫のくせに弓だと!』

 矢は掠りもしなかったが、輸送船に当たって跳ね返り、矢は最後の部下の膝に刺さる。

「にゃにゃぁ! (キキあの鷹を撃ち落とすんにゃ! )」

「わっ、わかったよ!」


 キキから鷹の人に向かって、細い光の筋が伸びる。

『くそっ、なんなんだ!』

 鷹は急降下し地面に逃れる、光は上から下に鷹を追い詰めるが、当たる手前でキキが力尽きた。

「もうだめだよぅ」

 キキはふよふよと、地面に落ちていった。

「にゃふ、にゃにゃ。(いま魔力もってかれたにゃ、どうゆうことにゃ。)」

 鷹の人の、後ろの輸送船が、二つに割れて重い音を立てて、ゆっくりずれながら倒れた。

 ふぁぁ、キキなにしてくれちゃってんの?

『なっ、なんだと! 船が……』


 だが今は鷹の人を、なんとかするのが先だ、後ろから近づき、柔軟な体を使い足払いで横に倒し、地についた剣を持った方の、拳を踏みつけた。

『ぐぅぅ、ばかな、猫がなんで――』

 鷹の人は悔しげにこちらを見ていた、それもそうだろう猫に見下されているのだから、しかし小さくて素早い者の相手ほど厄介なものだ。


 ターニャがようやく復活し、起き上がってきた。

「ふぅ、油断しました」

「にゃぁ、にゃご(馬鹿だにゃ、拘束してくれにゃ)」

 油断? 作戦忘れてただけろう。


 ターニャが有翼人達を、金属の縄を作って拘束する。

 ついでに猫パンチを顎にあてて、脳を揺らすことで意識を刈り取った。

 しかし宇宙船を、光で真っ二つにするとか、どうなっているのか。


「あはは、キキちゃんすごい、船が割れてます!」

「えへへ、ターニャが教えてくれたのやってみたの」

 そういえばターニャが、この街に来る前に、キキに技術的なことを、教えていたのを思い出した。


「ターニャ、キキにどんなこと教えたにゃ?」

「キキちゃんに対艦砲の、光を圧縮する術式を教えたんですよ、ここまで出来るなんて、キキちゃん優秀ですね」

「――たしかにキキは優秀だにゃ、でも猫耳はバカなんだにゃ!」


 いったい何を教えているのかと、ターニャの頭を猫パンチではたくと、なんだか小気味の良い軽い音がした。

「にゃぅ! 痛いのです!」

「この、ばかちんにゃぁ」


 ターニャの尻尾にかじりついていたら、キキがターニャを、かばいだした。

「いたた、ちょっとかじらないでください!」

「タマさん! めっ!」

 ふむ、なんか可愛らしいな、キキに免じてゆるしてあげよう。

 なんだかキキと、魔力のやり取りで繋いでからというもの、妙な感情が、生まれてきたきがする。

 これが父親の、娘を思う気持ちなのだろうかと思ったが、子供を世話をしたことが、なかったことを思い出した。


「まぁいいにゃ、この船で海を越えようと思ったのににゃ」

「はっ! その手がありましたか」


 はっきりとは言ってないけど、分かるだろう、いやハッキリいっても忘れるから意味ないかもしれない。

「とりあえずこの船から使える金属を抽出するにゃ」

「わかりました、すぐに終わりますよ」


 輸送艦から、軽い金属と、貴金属を中心に抜き取ると、結構な量になった。

 もうこの割れた船は、船体を繋げて修理したとしても、二度と飛ぶことができないだろう。

 ちょうど良いので、ターニャに頼み、複合装甲板を作ってもらった。

 この先生き残るには、フライパンでは心もとなく思えたからだ。

 光学兵器用に、魔力障壁も書き込んでもらったため、かなり丈夫な板ができた。

 ターニャは将来良い板職人になるだろう。


 ターニャのローブにも、金属を編みこんで強化した、矢などは貫通できないはずだ。

 奪った資源を整理して、お腹の袋にいれていると、ブタの悲鳴のような声が聞こえてきた。


 声のした方を見ると、上のエレベーターの広間に、ルミナス神こと教祖がいた。

 飛べない鳥は、ただの豚だと言わんばかりの、太り具合だ。


『なんじゃこりゃぁ、我の船が! ぶふぇ!』

 教祖は自分の船が、割れていることに驚いたことだろう。

 慌てて部下に命令を出している。

『お前たち奴らを捉えろ! おっ、応援も呼ぶぇ!』

『はっ、すぐに!』


 有翼人の一人が階段を登って行き、十人ほどが広間から飛び立つと、こちらに向かって槍を構え、降下してきた。


「タマさん、いっぱい来ましたね」

「タマさんどうするの?」

 ターニャとキキが、不安げな顔を見せている。


「キキは目眩ましにゃ! ターニャはこっちにゃ。」

「あいさー」

 キキはすこし上に飛んで行って光りだした、まばゆい光に怯んだ有翼人達は、降下をやめ、空中に留まった。

 周りを見ると大きな金属製の扉と、横に普通の大きさの扉があった、狭いところでは有翼人は、飛ぶことができなくなるはずだ。


 幸い扉に鍵はかかっておらず、楽に入ることが出来た、キキも遅れて扉をくぐると、中から鍵を締めた。

 部屋を見回すと、ここが宝物庫であることが予想できた。結構な奥行きと広さが有り、棚や物で視界が悪い、豪華な調度品に大量の金貨に銀貨、見たことのない白銀の硬貨もあった。


「これはすごいですね! まさに金銀財宝です。」

「よくここまで貯めこんだもんにゃ」

「ピカピカして綺麗だよ、これ食べていい?」

「やめときにゃさい、お腹壊すにゃ」


 とりあえず色んな所に隠れる場所がある、幸いこの部屋には高さがあまりないため、飛べば届くだろう。

 ターニャとキキと別れて隠れる、息を潜めて気配を殺し、有翼人が入ってくるのを待つ。

 ガチャリと鍵を開ける音がし、先ほどの有翼人と教祖が入ってきた。


『探して捕まえろ! 逃がすでないぞ!』

『はっ! すぐに捕まえてみせます!』

 有翼人たちは、きょろきょろと左右を確認しながら進んでいるが、彼らは商人だ。

 見えないところがあるにも関わらず、奥へと進んでゆく。


 隠れている通路の、一番後ろの有翼人が通るとすかさず跳びかかった。

 後頭部に二本の足を思い切り叩きつけると、軽く浮いて地面に顔面から突っ込んでいった、うまいこと気絶してくれたようだ。


 前に通った有翼人が、音を聞きつけ足早に向かってきた、棚の上に登り真下に来る瞬間に飛び降り脳天から同じように蹴りを当てた。ぐにゃりと膝が折れて、ゆっくりと地面に倒れ込んだ。


 これで二人、他の通路からもなにやら音が聞こえ、戦闘がはじまったようだ。

 棚の上を伝って応援に向かう、音の方に向かう有翼人は、見つけた二人ほど襲った。


 ターニャが追い詰められ、三人と教祖に囲まれていた。

『ぶべっ、追い詰めたぞ猫娘、こっちにこい!』

『おっ、お断りします!』

『お前ら押さえつけろ、ここでやるぞ! ぶふぇ!』

『ひぇっ、きちゃないので触らないでください!』

 部下の有翼人二人が、ターニャを捕まえようとするが、するりと腕の間を抜けてしまう。

 しびれを切らして教祖が脱ぎだした、いやまず捕まえろと思ったが好機だ。

 見張っていた有翼人に跳びかかり、顔面を殴打し転がした。

 倒れた音に驚いて、全裸の教祖がこっちを見て驚く。


『ぶひっ、猫だ! さっきの猫がいるぞ、お前たち後ろだ!』

 ターニャを襲っていた二人が後ろを向くと、ターニャは金属を縄にして、二人の足を縛った。

 襲っていた二人は地面に倒れ、今度は手を地面に〈コの字金具〉で固定した。

『ぐぅ、動けない!』

『形勢逆転です! あなたもここで終わりです!』

『ぶぶっ、くそっ、使えない奴らだ!』

「キキ! 服を焼くにゃ!」

 教祖は急いで服を着ようとしたが、突然服が燃え上がり手を放した。


『あつっ、ぶふ、なんだ……

 なんなのだ! 我は神ぞ!

 お前たちそこを動くな!

 わしは――我こそが、神なのだ!』


 教祖は地団駄を踏み、子供のように怒った。

 我々の前で、神を名乗ったのは、失敗だったね。


 どたどたとターニャに向かい、教祖が走りだすが、何も無い所でこけた。

『くそう、このわしが、こんな無様な』

「ターニャ、拘束するにゃ」

「わかりました! 観念するのです!」

 ターニャが教祖を拘束し、口をふさいだ。

 教祖はジタバタともがくが、金属の縄も口枷も外れようがない。


『言いたいことは沢山あるでしょうが、聞く気はありません。』

「ターニャ、爆薬を仕掛けてくるにゃ」

「わかりました、必要な物は集めておきます」

「ピカピカいっぱいもってく?」

「キキちゃん、集めれるだけ集めるよ!」

「あいさー」

 ターニャとキキは宝物の選別にいった。

 輸送船周りに爆薬を仕掛けていると、応援の有翼人が地上からの階段を、降りてきている音が聞こえた。

 急ぎ足で宝物庫に戻ると、ターニャとキキに声をかけ、入口付近の箱を裏返して隠れた。


『ルミナス様! どこだ?』

『ルミナス様! おかしいな、見当たらないぞ?』

『宝物庫かもしれない、いくぞ!』

 宝物庫の扉が開き、三十人ほどの有翼人がなだれ込んできた。

『どこだ? みあたらないな』

『お前らは向こうの方を頼む』

 隊長格らしき男の指示で、奥に向かって探し始めた。


 有翼人たちが奥に行ったのを確認して、静かに箱から出ると、扉から外に出た。

「ターニャ! ふさぐにゃ」

「まかせてください」

 ターニャの金術が金属製の扉の、端の部分を変形させ、壁側とがっちりくっついて開かなくなった。

 大きな扉の方も同じように、変形させ固めると急いで地上に向かう。


 ここにはもう用がない、急ぎ足で街から離れて、二キロほど離れた岩陰に身を隠す。

 ターニャをみると、瞳の奥に赤い光が宿っていた。


「タマさん……」

「わかってるにゃ、キキ袋に入ってるにゃ」

 何故という顔をしたが、キキがおとなしくもそもそと袋に入っていくのを見届けると、爆薬の起爆を行う。

 閃光と炎の渦が空に登ると、少しおくれて何度も大きな爆発音が聞こえ、草原を空気の波がなでた。

 教会は跡形もなく吹き飛び、瓦礫がれきが街中に降り注いでいる。


「神罰の執行を、確認しました」

 ターニャの瞳からは、赤い光は失われていた。


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