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渡り猫のタマ  作者: catcore
タマと世界樹の種
7/8

タマの受難2

 ふむ、なんかやばそうな雰囲気になってきたぞ。

 数人の冒険者が慌てて外に走っていった。

 この世界獣人いないのか、反応がそんな感じだ。


 ターニャが人語で聞くも、えらく警戒されている。

『えっ? なんなんですか?』

 冒険者達は武器を抜いて威嚇している。

 ターニャはおろおろしているだけだ。

『人間じゃないぞ!』

『悪魔の化身め!』

『僧兵はまだか!』


 こう囲まれては逃げるに逃げれんな。

 ターニャから離れテーブルの下に移動する。


「にゃーにゃ、にゃぐるる(ターニャ、ここはひとまず捕まっておくにゃ、必ず助けに行くにゃ)」

「タマさ~ん」


 ターニャは泣きそうになっている。

 入り口から冒険者と兵隊がやってきた。


『あ、あそこです悪魔憑きがいるのは!』

『あとは我々に任せよ』


 白に金の刺繍の入った服を着た兵隊の集団から隊長らしき者が出てくる。

 そいつは背中に白い翼を持っていた。


『ルミナス様の御使様だ!』

『なんと神々しい!』

『ありがたやぁ』

 人々が騒いでいる、どう見ても獣人の有翼人種なのだが、御使とかよばれているな。

『これは確かに悪魔憑きだな、引っ捕らえよ!』

『えぇぇ、いたた、いたいです』

 兵士たちがターニャに群がり拘束する。


 混乱の中、どさくさにまぎれて御使の羽をむしった。

『いたっ! なんだ?』

『御使様、拘束完了しました』

 御使は翼をさすり怪訝な顔をしつつも命令を下した、

『うむ、牢にいれておけ』

『おお、さすが御使様だ』

『悪魔憑きをものともしない!』


 御使達はターニャを連れ、街の中央へと向かう様だ。

 屋根伝いに追いかけると、中央の奥のほうの教会のなかに入っていった。

 次から次にやっかいなことが起こる、まぁ牢に入れられるのだから今日殺されるわけでもないだろう。


 観測器を出して人種の分布を調べる、獣人もいないことはないがこの大陸にはいないようだ。

 世界的に迫害されているのだろうか、個体数は少なく一つの大陸の辺境で固まっているようだ、この大陸にのみ有翼人種がいる。


 さっきの有翼人からむしった羽をしらべる。

 遺伝子情報から、別星系の惑星の有翼人種だと分かった。

 初期の跳躍技術が実用化されているようで、勢力を拡大しているようだ。

 彼らの母星は百八十光年離れている、この星系は勢力図外なのにおかしいな。


 何故この惑星でこんなことしてるんだろうか。

 しかし彼らの宇宙船を鹵獲すれば、楽に世界樹にいけるではないか。

 あるいみ幸運だ、ターニャには悪いが。


 深夜になってから白い布をかぶり街をうろつく。

 しかし猫がいないのが妙だ、大抵夜にふらついているもんだが。

 教会に近づき、壁を登る。

 無駄な装飾のおかげで登りやすい。

 かなり上の方まで登ると、窓から明かりが漏れているところがあった。

 音を立てないように近くに行き、耳を澄ます。


『愚民どもめお布施が足りておらぬな、ぶぽ』

『魔王とやらの出現の影響かもしれませぬな』

『ふん、魔王などいるものか! そういえば、今日獣人をつかまえたそうだな』

『ええ、若い猫族の娘です』

『ぐふふ、売り払う前に少し楽しむか、ぶぇふぇ』

『それは良いですな、この大陸の獣人は皆売ってしまいましたからな』


 酷い奴らだ、これは天罰を与えねばなるまい。

 隙間から除くと有翼人が二人見えた。

 一人は齢五十ほどで、かなり太っていてもはや自力で飛べないだろう、ぶひぶひ言っている。

 もう一人は細身で齢四十ほどで、鷹のような翼をしている、なんか強そうだな。


『しかし乱獲したため数が減っていますな』

『そうか、しばらく数を増やさせねばなるまい、ぐふぇ』

『この間売った猫どもは、金貨にして五十二万枚ほどの価値がつきましたな』

『祖国には猫がいなかったからな、ぐぽ、ワームホールのおかげで人生たのしいわい』

『いまや信徒の数も二十万になりますからな、儲かって笑いが止まりませんな』


 なるほどワームホールで密輸してたのか。

 しかし獣人だけでなく小動物まで売り払うとは。

 それで猫どころか鼠もいないわけだ。

 さて、この悪徳商人どもをどうしようか。


『ぶほほ、それで猫娘はどこにおる?』

『今は白き塔に監禁してますな』

『ぐふぇ、ちと様子見に行こうか』


 二人は部屋から出て行った。

 この部屋はあの太った有翼人の部屋だろうか、豪華な装飾品が多い気がする。

 窓を開けするりと部屋にはいると、豪華な寝具のしたに爆薬を仕掛ける。


 そのまま内部に入ると、太い柱の目立たない天井付近に爆薬を仕掛けて回る。

 教会というか大聖堂って言葉が合うくらいの、立派な建築物だ。

 一周りしてみたが宇宙船を見つけることは出来なかった。

 もう少し泳がせねばならない。


 ターニャが気になったので塔を探すと、敷地の奥に塔が見えた。

 光の漏れているとこまで登ると声が聞こえてきた。


『これはこれは、なかなかの上玉よ、ぶふふ』

『くくく、高く売れるでしょうな』


 ターニャは牢にいれられていた。


『わっ、私に何かすると天罰が下りますよ?』

『ぶふぉっ、天罰だと?

 われこそが神よ、ルミナス神とは我のことぞ?

 ぶふっ』

『ひっ、つばとんでます! きちゃない!』


『なにぃ、汚いだと?

 ぶふっ、まぁ明日の夜に我が抱いてやる!

 楽しませてやるぞ』

『かっ、神に弓を引いたこと後悔させてあげます!』


『ぬふふ、明日の夜までに船に積んでおけ、猫人はすばしっこいからの、逃げられては楽しめん』

『くくっ、良いですな、猫娘狩りですな』

 部屋から二人が出て行くのを確認し部屋に降りる。


「タマさん!」

「ターニャ、楽しんでるかにゃ」

「楽しそうに見えますか?」

 牢屋の棒の間を無理やり抜けて中に入る。


 ご飯の時間だ、袋から食事とキキをだすとぐったりしていた。

「にゃ、キキ! キキ!」

「キキちゃん? 食事時だけは元気なのに」

 観測器で調べると魔力の枯渇で衰弱しているようだった。

 たしかに最近は寝ていることが多かったが、衰弱しているとは思わなかった。

 助けた時のように魔力を流す。


「タマさん、なにしてるんです!」

 ターニャがキキを取り上げる。

「なにするにゃ!」

「なにするにゃじゃありません、神使の魔力を直接外界のものに与えちゃいけないって言われてます!」

「え? ほんとかにゃ?」

「本当です、普通はこうするんですよ」


 ターニャは盗賊からうばった鉄を、変形させて魔法陣を作っていく。

 普通は空間に漂う世界樹産の魔力を、変換して与えるらしい。

 でもすでに直接与えてしまってるからな、言ったら怒られそうだ。

 魔法陣ができると魔力が集まってきたようだ、光属性に変換されキキにそそがれる。


「おかしいです、光の精霊なのにほとんど吸収してないです」

 ターニャがこっちをジロリと睨む。

「実は最初に助けた時に直接与えてるにゃ」

「学校で習わなかったのですか?」

「覚えてないにゃ」

 そう、覚えていないというか、学校なんていっただろうか?

 記憶が無い、以前の魂破損の後遺症かも知れないが。


「キキちゃんの使える魔力は、タマさんの魔力になっていると思います」

「じゃあ、また流せばいいにゃ?」

「ええ、一時的には回復するはずです」

 とりあえずキキに魔力を流すと目が覚めたようだ。


「ふあぁ、なんかよく寝た! ご飯だよ!」

 キキはご飯に飛びついた、食べて少しでも変換しないといけないからよく食べるのだろうか。


「キキちゃんに常時供給できるようにしないといけません」

「どうすればいいにゃ?」


 ターニャが言うには、常時供給の無いキキが大きな力を使ったり供給してやれない状態が続くと、内部魔力を使い果たし霧散するそうだ。

 親である世界樹から生まれた精霊は、世界樹と繋がっていて、一時的に使い果たしても霧散せずにすむらしい。


「いまは親がタマさんに変わっているはずなので、タマさんから供給をうけなければなりません」

「供給されてないにゃ?」

「神使には強力な魔力防壁があるので、他者がタマさんから吸い取るのは無理ですよ」


 常時供給にするには魔力ネットワークを作って繋げるしかないそうだが、そこが弱点になって悪用される問題があるそうだ。


「子供を飢え死にさせるわけには行かにゃいにゃ、今繋げれるのかにゃ?」

「あまりお薦めはできませんが、術式は知ってます」

 ターニャに教わりながら術式を作っていく。

「ネットワークの名前とパスを考えてください、簡単なのはダメですよ?」

 名前はヌコネットで、パスワードを考えれる限り難しくした、六文字しかないが。

 忘れちゃうといけないからね。


「繋げれる対象と、繋げる方法をきめたら設定完了です」

 対象は猫族と精霊にする、方法は接触して接続に設定した。

 術式を起動すると視界に説明書がでてきた。

 ふむふむ、なるほど便利だな。

 魔力供給もできるし、遠距離でも視界共有や会話できるようだ。

 早速キキに触れて繋げる、親から繋げる場合は触って念じるだけだ。


「ひゃ、なんか出た!」

「キキ、ぜんぶ許可するにゃ」

「全部? こうかな?」

 視界共有、念話、位置情報、個体情報などが許可され視界にオーバーレイされる。

 キキの魔力が最大になるまで、毎分魔力生産量の五割分を供給する、魔力が一割を切ると備蓄してある魔力の三割を、即時分け与えるよう設定した。


「ほあぁ、すいとられるにゃぁ」

「おおげさですね、キキちゃん枯渇状態でしたから、少し我慢してください」

「なんか力がみなぎってくるよ!」

 はぁぁとか言いながらキキが発光する。

「無駄遣いするにゃ!」

 猫パンチでキキを抑える。


 キキは一割りきっていたらしく、三割の魔力が吸い取られた。

 観測器で調べると数値にして百八十だ、自分は最大で六百程度、キキはなんと四百もあった。

 毎分魔力量の百分の一が生産されていて、足りない分は食事なんかで回復させている、消費すればするほど回復も遅くなり弱体化する。

 キキには無駄に消費しないように、噛み砕いて説明してなんとか理解させた。


「うーん、なんとなくわかたったよ!」

 大丈夫だろうか、おかわりを出してやるとキキは黙々と食べ始めた。


「ターニャ、キキの魔力数値四百もあるにゃ」

「四百も? おかしいですね、私で五百くらいですから、平均的な人型精霊はたしか八十くらいですよ?」

「キキは猫達から信仰されてるからにゃ」

「神格化が進んでるっていうのです?」

「それか食事のせかもしれにゃい」


 神界の食べ物が影響したのか、信仰集めすぎたのかわからないが。

 異常な増え方をしている。


「それなら供給を絞って、緊急時だけしっかり供給するくらいで良さげですね」

「そうするかにゃ、こっちが吸い尽くされて消えそうだしにゃ」


 最終的に毎分百分の一の供給と、緊急時一割五分に設定した。

 ごっそり減った魔力を回復させるため、食事しなければ。



 ようやく落ち着いて、今後のことを相談する。

「奴らの正体がわかったにゃ、他星系の商人だったにゃ」

「なるほど、それで船は見つかったのです?」

「それが見当たらないんだにゃ、もう少し捕まっててもらう必要があるにゃ」

「えぇ、あの有翼人つばとばすし、嫌なんですが」

 ターニャはげんなりしている、結構綺麗好きなんだろう。


「船を見つけるまでの辛抱にゃ」

「キキはターニャが連れて行かれたら、見つからないようについていってくれにゃ」

「りょうかいだよ!」

 船について扉が空いたらキキが光って目潰し、そこに奇襲をかけるってことにした。

 ターニャとキキを残し塔から出ると、出入り口が見張れるとこに陣取る。


 日が昇って鷹の翼の奴が、部下の有翼人を三人ほど連れて塔に入っていった。

 キキの居場所を示すマーカーが下に降りてくる。

 こりゃ便利だな。

 出入り口から出てくると、奥にある天使の様な像の所で何かしているようだ。

 素早く地面に降りて見つからないように近くに行くと、機械音がして地下に続く階段が現れた。

 ターニャをつれた一行は降りて行き、階段を隠す仕掛けが閉まる前になんとか滑りこんだ。

 しばらく降りると広い空間に出た。

 中には百四十メートルくらいの輸送艦らしき船があった。


 一行はエレベーターで降りていったらしくキキが扉の前で頭をひねっていた。

「キキ、なにしてるにゃ」

「タマさん、扉が開かないの」

「おいで、しっかり掴まってにゃ」


 キキを背に乗せて下に続くパイプを使ってするりと降りていく。

 下のエレベーターの扉が開いたので視界に入らないように止まる。


『ほら、早く歩け!』

『いたっ、やめてください!』

『くくく、元気がよいな』

「ほら、キキさきにいくにゃ、見つからにゃいようににゃ」

「あいさー」

 ふよふよとキキが飛んでいく。

 こっちも音を立てずに地面に降りて近づいていく。

 鷹の翼の奴がパネルを操作しゲートがおりてくる。


 ふらりとキキが降りてきて一行の前で激しく光った。

『くそっ何が!』

『うわっ目がぁ!』

『眩しくて何も見えん!』

『ちっ!』

「あああ、目がぁぁ!」


 最後の声はターニャだった。






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