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渡り猫のタマ  作者: catcore
タマと世界樹の種
5/8

タマ宇宙へ行く

 廃屋に戻り勝利のマタタビ酒を長老と飲み交わす。

 キキはマタタビに興味はないのでお茶を出してやる。


「いやはや、なかなかに楽しかったですのぅ」

「長老と帝都の猫達には世話になったにゃ」

「これで腐肉もなくなるのじゃ、おたがいさまじゃよ」

「うー、つかれたよぅ」

 キキも疲れたようで、少し魔力を流しておいた。


 ゆっくりしていると猫達が次々に食べ物を持ち寄り、狸も一緒になって宴会が始まった。

 宴会はまたも混乱を極めたが、長老はおとなしかった。

 狸達の腹太鼓は宴会でも活躍した。


 それから三日ほどして、監視の猫が廃屋に帰ってきた。

「長老、帝が呼んでるよ」

「おお、そうか、タマ殿いきますかな」

「にゃー、そういえば怪しい動きはなかったかにゃ?」

「交代で見てたけど、変なことはしてなかったよ」

「ありがとにゃ、助かったにゃ」

「良いってことよ、あキキ様頭撫ででください」

「あいよー」

 キキに頭をなでられると自慢になるらしい。

 監視の猫は満足して帰っていった。


 城に向かい城門につく。

 あの門番を探す、もちろんアルだ。

 ぬふふ、いるじゃないかアルくん。

 これまでは追い返されていたのだが。

 しかし今は猫は顔パスである。

 これみよがしに出たり入ったりを数回繰り返しチラチラとアルを見た。


「ぐぅ、ニャンカスのくせにぃ……」

 まさにざまぁである。

「タマさん性格わるいよ? めっ! だよ」

 キキがなにか言っているが気にしないでおこう。

 悔しそうなアルを眺めつつ玉座の間に行く。


「にゃー(こんちにゃ)」

「にゃーご(ここは美人が多いのぅ)」

「なにか美味しそうな匂いがするよ!」


 宰相がなにか言いたげな顔をしているが帝はスルーして挨拶を始めた。

 猫と妖精に作法を求めても仕方ないからだろう。


『よく来た、精霊と猫達よ、宰相説明せよ』

『御意』


 ここ数日でほぼ全ての関係者を拘束し裏で糸を引いていたものも捕まえたそうだ。

 その結果、錬金術士は死刑、その連中をまとめていた上級貴族と協力した貴族は取り潰しの上で死刑に、家族などは流刑となったようだ。


 逃げた関係者は指名手配したとの事だ。

 彼らはなにかと理由をつけ、賢者の石の研究のため国庫からかなりの額使い込んでいたようだ。

 最終的には帝位の簒奪が目的だったそうだ。


 見つかった資料は持ってきてまとめてあるから回収して欲しいと。

 錬金術士も資料も失えば、もうここでは研究できないだろう。

 資料を猫達に回収してもらい、廃屋にはこんでもらう。


 一つ目の仕事はほぼ完了した、あとは種持って変えれば良いだけだ。

 キキに帝に言ってもらう言葉を伝える。


「『一つ目の約束は守られたにゃ、他の約束も守られることを望むにゃ』」

『うむ、精霊と猫達には国を救ってもらった、手厚く保護する決まりを作るから安心して欲しい』


 なんでも記念に猫と精霊の銅像を作るらしい。

 おっと、わすれてた帝に下水道のことと、精霊を捕まえた者のことも話しておく。


『ふむ、そのような事が、大鼠は討伐隊を近いうちに出す、今後は監視を強めておく』


 次に隣の大陸のことを聞いてみた。

『宰相、たしか援軍の派遣を求められておったな?』

『はい、リセクトル王国からです陛下』

『魔王か、多くは送れないが近いうちに必ず兵は送る』


 それなら船に乗せてもらうかな。

 キキに乗せてもらうよう言ってもらう。


「『その船に載せてもらいたいにゃ』」

『だが危険だぞ、行けば帰ってこられぬかもしれぬ』

『大丈夫にゃ、送る日が決まれば教えてほしいにゃ』

『そうか、宰相頼んだぞ』

『では準備出来次第連絡いたしますぞ』


 これで海を越えることができる。

 しかし我ながらスピード解決で自画自賛せざる負えない。

 猫達ががんばって、自分は大した事してないけど。


 廃屋にもどってくると、狸達が旅の準備をしていた。

 ぽこ太郎がこちらに気付いてやってきた。


「長老様、おら達そろそろ里に帰りますだ」

「そうか、今回は本当に助かったのじゃ、長にもよろしく伝えてくだされ」

「はい、お世話になりましただ、長老様もお元気で」


 長老が用意したお土産をもって、猫達に見送られ狸達は帰路についた。

 狸と猫の行列に人間が驚いて道を開けてくれたりして、井戸端会議でも話題になっていた。


 さて、一段落したし賢者の石をしらべてみようかな。

 猫気のないとこに行き袋から取り出すと、光にあたって綺麗に輝いている。

 キキが興味深そうに覗いてくる。


「赤くて綺麗だねー、これどうするの?」

「どうもしにゃい、見て見るだけにゃ」

 うーむ、技術的にちょっとありえない気がする。

 核の部分の魔術回路が小さすぎて見えないのだ。


「キキ、ちょっと力を貸すにゃ」

「なになにー?」

「向こうにある花の花びら部分を大きくしてからそこの影になってるとこに映してみてにゃ」

「うーん、こう?」

 日陰に投影されたがぼやけている。

「もっと絞り込むにゃ」

「うー、むずかしいよー」


 色々と噛み砕いて教えて、顕微鏡のような事をしてもらう。

 しばらく四苦八苦していたが、ようやく見れるようになってきた。


「じゃあこの石の奥のほうの模様を大きく移して欲しいにゃ」

「やってみるー」


 石の模様が拡大されると電子回路のようなものが映った。

 うーん、これ魔術回路じゃないな。

 どちらかというとナノテクノロジーとかそっちっぽい。

 どっかで拾ったか、どうかして手に入れて。

 魔術回路と組み合わせたのだろう。


 核の部分はおそらく敵勢力の機械神が作ったものだ。

 機械神はひたすら勢力を拡大させている、眷族も作りたい放題だから複数の神界が共同で戦線を維持している。

 この宇宙は前線といって良いかもしれない。

 たぶんこの星にも尖兵がいるんだろう、すでに基地くらいはあるかもしれない。

 そういえば魔王の眷族が剣も矢も通らず、硬いって話だったなぁ。

 まぁ、まずは猫神様に報告だ。


「キキ、乗るにゃ、長老のとこに行くにゃ」

「ふぇ、ちょとまってよタマさん!」


 慌ててしがみついてきたキキをつれ、急いで廃屋に戻る。

 祭壇さえあれば猫神様に連絡できる。


「長老! 祭壇はないのかにゃ?」

「うん? タマ殿、祭壇なら教会にいけばありますじゃ」

「それは猫神様の祭壇かにゃ?」

「はて、たしかルミナスと言う神様のだったかのぅ」


 聞いたこと無い神様だな、まいったな。

 古い猫神様を祀った祭壇がないと、連絡が取れない。

 長い時を掛けて多くの者の思いや、願いが集まって、初めて連絡網の一端に加われるのだ。

 今から作っても百年はただの飾りでしかない。


「猫神様を祀ってるとこ知らにゃい?」

「うーむ、カラカルなら知っておるやもしれませぬが」

「そういえばカラカル殿はどこにゃ?」

 ここ数日見てない気がする。


「この間のキキ様降臨の報せで他国にだしたのじゃ」

 なんてこった。

 いや待てよ、どこかで猫神様の名前を聞いたぞ。

 あれはたしか、王都の大集会だ。

 どの猫かは分からないが、ミコトもいるし行ってみるか。


「長老! 王都にむかうにゃ」

「王都というとアリストレーテですかな?」

「アリス? どこにゃそれは?」

「タマ殿がカラカルと一緒に出て来たとこですじゃ」


 そんな名前だったのか、知らなかった。


「そこで間違いないにゃ」

「キキ様も一緒にですかな?」

「キキはどうするにゃ?」

「え? もちろんついてくよ、タマさんと離れたら団子たべれないよ?」


 食べ物につられて誘拐されそうだなキキは。

 長老は残念そうにしている。


「ふむ、そうですか仕方ないのじゃ」

「まぁすぐ帰ってくるにゃ、船はここから出るにゃ」

「おお、そうでしたな待っておりますじゃ」


 たぶん他国にまでキキ降臨とか言っちゃたから、使者が来た時いないと困るんだろう。

 まさに自業自得である。

 さて、急がねばと街中を縫うように走り外に出る。

 そして、そのまま走り続けた。


 すると、十分で疲れた。

 息も絶え絶えである。


「もう無理にゃ、ゆっくりいくにゃ」

「タマさんもうバテたの?」

「ちょっとキキおんぶしてにゃ」

「タマさんのほうが大きいんですけど!?」


 キキに支えられてフラつきながら立ち上がり街道を歩く。

 馬車が来たら飛び乗ろう。

 とぼとぼ歩いていると、平原から木の部屋に移動していた。


「にゃっ!?」

「あれ? あれ?」


 キキもびっくりして混乱している様だ。

 よくみると猫耳のお姉さんがいた。


「突然ですが、駆逐艦五月雨へようこそ」

 転移で船に拐われていたのだ。

「急に転移するからおどろいたにゃ」

「え、そうですか? 私は驚きませんでしたけど」


 ふぁ! なにいってんのこの猫耳。

 そういえば猫神様が船を送ると行っていたな。


 五月雨は猫神様が指揮する第二八中艦隊ダイニーハチチュウカンタイの八隻の中の一隻だ。

 駆逐艦の殆どは最大で長さ百五十メートル、幅二十メートル、高さ三十メートル程の流線型の艦船で、乗組員六十名ほどで動かしている。

 代替わりした世界樹の幹を使って船体を削りだして作り、世界樹の種を核にして造っている。


 船体は種から供給される魔力で自動修復ができるようになっている。

 そこに装甲やら兵装を乗っけてできたのが戦闘艦だ。


 生木のようなもので燃えにくく、また木の温かみも感じられる居住性の良い戦闘艦なのだ。


 第二八中艦隊の恐ろしいところは、すべての乗組員が猫神様の眷族ということだ。

 にゃー艦隊という愛称で恐れられている、主にダメな感じで。


「そのちっこいのはなんです?」

「光の精霊にゃ」

「ふむふむ、精霊なら大丈夫ですね、妖精ならポイしなくてはいけませんでしたけど」


 基本的に神々の存在を知られるわけには行かないので、転移などで巻き込まれた場合記憶操作され地上に戻される。

 小さい人型精霊に似ている妖精なんかも、生身の体を持っているので同様の扱いになる。

 精霊は世界樹の眷族なので、大丈夫な感じだ。


「タマさんタマさん、外に青くて丸いのが見えるよ!」

「さっきまでいた大地にゃ」

「ふぇ、じゃあここはどこなの?」

「空の上のもっと上にゃよ」


 考えているようだが想像つかない様だ、キキにはまだ早いかもしれない。


「そうだ、艦長室に連れて行くんだった、タマさんこちらですよ」

 この猫耳は指示を忘れていたな。

 猫耳についていくと、艦長室と書かれた扉の前についた。

 猫耳が呼び鈴を押しているが返事がない。


「寝ているようですね、困りました」

 うん、予想はできていた。

 艦長も忘れて寝てしまったのだろう。


「じゃあさきに、観測室に連れて行って欲しいにゃ」

「仕方ありません、付いてきてください」


 観測室では船外カメラで色々見たりできる。

 地上をみるくらいなら高解像度でミジンコも細かく見れる。

 ガラントを探して、そこから東の海を越えたところの大陸を見てみる。


 世界樹を見つけたがなにかおかしい、あと数年で種ができるのに花すら咲いてない。

 先端の宇宙側をみると、大きな花が咲き誇っていた。

 蝶のように精霊が周りを飛んでいる。

「わぁ、きれいだねタマさん!」

「キキのお仲間がいっぱいいるにゃ」


 精霊も色んな色があるもんだ、拡大してみると先端に一際大きな精霊がいた。

 「あ、大婆様だ!」

 「にゃぁ、これが世界樹の精霊なにょ……」

 なんとうか、妖怪?


 しばらくキキに見せてまた地上を見る、じっくり調べると魔族らしき集団を見つけた。


 軍団というよりは、難民のように見える。

 集団の来ている方に移動していくと、何も無いところから魔族が急に現れていた。


「おかしいですね、大規模な立体映像装置か何かで、見た目が変わっているようです」

 猫耳も気付いたようだ。

 おそらく世界樹とその周辺は、偽装されている。


「ちょとあそこに光子魚雷うちこめないかにゃ?」

「え、無理ですよ、怒られちゃいます」

「たぶん機械神が関わってるにゃ」

「それでも確証がないと無理です」


 楽に終わりそうなんだけど無理か。

 そうだ、猫神様に報告しないとか。


「猫神様に連絡したいにゃ」

「じゃあ通信回線開きます」


 猫耳がパネルを操作し猫神様の部屋に繋がる。

《どうした? あ、タマじゃない》

「お久しぶりですにゃ猫神様、賢者の石を回収したにゃ」

《えっ、もう? タマはタマかい?》

 どういう意味だ。


「やるときはやるんだにゃ、いま送るから見て欲しいにゃ」

 猫耳に渡すと転移装置で送る。

 受け取った猫神様は虫眼鏡で観察しているようだ。

《これは機械神の眷族に使われてる副脳だね、所々機械の部品があって魔術回路で繋げてあるようだ》


「これもみてほしいにゃ」

 さっき調べた映像もみてもらう。


《やれやれ、厄介なことだねぇ》

「砲撃できないかにゃ?」

《それは無理だよタマ、いまも魔族が逃げてきているみたいだしね》


 というのも魔族も人間も、動物も同じ扱いになっている。

 信仰してくれるのであれば守る対象になるのだ。

 条件は色々あるけれども。


《まぁ偽装装置を先に壊さないことには、どうにもならんよねぇ》

「なんとなく想像つくにゃ」

 仕事の増える予感。


《爆薬と観測器を貸すからタマちょっと行ってきなよ》

「にゃぁ、しょうがないにゃ」

《まぁ、残りの艦隊も送るから安心しな》


 これも仕事か、最前線なんていやだなぁ。

 美人のお姉さんに撫でられながら暮らしたい。


《ところでそのちっこいのは?》

「光の精霊にゃ、道中で拾ったにゃ」

《飼うのは良いけど私は世話しないからね、ちゃんと自分で面倒見るんだよ》

 そう言うと猫神様は通信を切った。


 子猫を拾ってきた子供じゃないんですけど!


 キキは初めて見るものばかりなのか、はしゃいで飛び回っている。

 生暖かい目で眺めていると、猫耳が箱を持ってきた。


「とりあえず装備を渡します」

「ありがとにゃ」


 観測器か、暗視装置に似ていて分析や艦船の武器と連動できる神器だ。

 付属の引き金を引けば上から質量弾とかレーザーが降り注ぐ。


 爆薬は自分で設置しないといけないからあまり使いたくない。

 あとはこれは通信器か、あとでキキにつけてもらおう。


「タマさんタマさん、おなか空いたよ!」

「にゃ、それもそうにゃ」

「そうですか、では食堂にいきましょう」


 さて何を食べるかな、最近は猫缶か団子だったからなぁ。

 カレーかピザか麻婆豆腐とかもいいな。


「タマさんタマさん何頼めばいいの?」

「そだにゃ、オムライスとか良いんじゃないかにゃ」

「じゃあオムライスだよ!」

「ベーコンとパイナップルのピザ、玉ねぎ抜きでにゃ」


 目の前にオムライスとピザが現れた。

 猫耳は豚汁定食をたのんでいた、良い趣味をしている。


「タマさんタマさん、オムライスおいしいよ!」

「豚汁もおいしいのです!」


 キキがハムスターみたいになるくらい口に詰め込んでいる。

 猫耳もなぜか報告してきた。

 ピザも旨いなぁ、パイナップル入れると美味しいのだ。

 酢豚とかにも合う、毛嫌いする人もいるが。


 キキはおかわり八回もしていた、燃費悪いのだろうか。

 何故か猫耳が、キキに張り合って食い倒れていた。

 ついでに食料として色々頼んで袋に詰め込んだ、猫耳のツケにしておいた。


 食後マタタビで一服していると、警報が鳴り出した。


 すぐに強く突発的な衝撃で床に打ち付けられ転がった、一人を除いて。

「なにごとにゃ!」

「うわわ、なに? なんなの?」

「うっぷ、吐きそうなのです」


『戦闘配置! 対艦戦闘!』

『繰り返す! 戦闘配置! 対艦戦闘! 急げ!』


 床ペロ状態で伏せていると、敵襲を知らせる艦内放送が流れた。

 次回予告


 敵襲を受けた宇宙魚船五月雨丸はこれまでみたこともない多さの宇宙マグロに囲まれた。

 これ以上はふねがもたねぇ!

 船長が叫ぶ、そこに渡り人の哲也が現れる。

 宇宙マグロ、ごきたいくd

 

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