支部長、嵐のように去る。
「これで一通り皆への説明は終えました。なにか気になることとかあったりします?」
眼鏡をクイッとしながらまるで教師みたいに川瀬さんが聞くと、大山さんが、
「お前は、なにをするんだ?まさかここに引きこもって開発じゃないだろうな?」
すこし凄んでいるように聞こえた。確かに私たちに危険なものをわたして自分は実験、なんていうと反感を買うだろう。
「僕ですか?僕はですね、昔作った趣味全開のロボットを今回の経費の余りをあててこの隊用に改良したんで、それを使います。クラスはエンジニア兼オペレーターとでも言いましょうか。でかくなってサポートに特化した松井さんみたいな感じですね。小さい移動要塞みたいなもんですよ、ちなみにこれに乗ってみんなも移動するんですよ。乗り心地は僕が保証しますからご心配なく。」
ロボット?ガ○ダムとかマ○ンガーみたいなのに乗るのかな?それはそれで。
「そういえば宮本さんはどうなるんですか?」
支部長の話を一切聞いてないと同時に支部長が言葉を発していないことにも気づいた。いままでなにをしていたんだ。と思っているところ、支部長が口を開く。
「ん?俺はいつも通り支部を離れて自分の仕事だよ。それと、これからはここの支部長の席を大山に任せるつもりだ。」
「え、私にですか?」
「あぁ、そうだ。普段からいないこんなくたばりかけのおっさんが支部長というのも示しがつかんだろうからな。異論は認めん。それに俺はこれから用事があるからドロンさせてもらうぜ!」
宮本さんが逃げるように射撃場から出ていく。よくわからない人だったけど、わすれないよ、私。7-8行しか出演してないからって、わすれない。
「うーんどうしたもんか。任されてしまったものは仕方ないし、でもうーん。」
大山さんが珍しく身内のことで悩んでいる!これはレアだ!といってもこんな状況じゃしかたないか。
「ま、今度支部長にあったらとっちめるとして、これから模擬戦闘を行いたいと思います。武器は一度ここに置いておいてもらって僕についてきてください。」
武器の扱い方を教えられずに戦闘訓練?私、不安です!
そんなことを思っている間に、皆さん黙って川瀬さんについて行ってますね。私も追いかけないと。
川瀬さんについて行って入った部屋はなんとよくわからない科学施設だった。
パーマ当てや洗脳ができそうなヘルメットを被せられて、手術台のようなところに座らせられた。
そのまま数分。機械のセッティングを終えたのだろうか、川瀬さんがヘルメットのスピーカー越しに私たちに話しかける。
『あー、あー。聞こえますね?聞こえましたら好きな体勢で寝転がってください。』
指示に従い寝転がる。真っ暗で、外の音が聞こえないので少し怖い。
『よっし、全員OKですね。ではこれからの模擬戦闘の説明を行います。』
内容は全員で敵拠点の一個師団を壊滅させるミッションをする、というものだった。
川瀬さんは、今回は戦闘に直接参加せず、オペレーター、指示役をするらしい。わからないことがあったら聞けということだ。
制限時間は60分。超えたら拠点が爆発し、ゲームオーバー。壊滅と判断するには敵戦闘員の8割を無力化することと、敵拠点の主要施設の破壊。
今回は全員違うスタート地点で、開始後拠点内でチームの誰かと合流しツーマンセルで行動し、自分の役割を知ることと、武器の扱いを覚えることが目的らしい。
武器の扱い方についてはデータが送られているはずだからそれを見ろとのことだった。これなら私でもどうにかなりそうだ。
『では、ステージに移動しますよ。どれだけ派手に暴れても現実世界には影響ないのでご心配なく。では楽しい戦場にいってらっしゃーい!』
その言葉を聞いてまもなく、フッと意識が遠のいた。