爆発ナイフと変態
「最後は倉坂さんですね。こちらです。」
「あ、はい!」
わたしはどんなのだろう?内心ワクワクしながらアタッシュケースが開くのを見ていた。
「えっと、これは?」
それは、いままでのどれよりもこじんまりした。そして、よく見る形の。
「果物ナイフですね、はい。」
「えええ、あの、これに何か特殊な機能は?」
「今は特についてないですね。あ、出刃包丁もありますよ?」
そんなことは聞いていない。ほかの人はトンデモ性能を持った武器やスーツをもらったのに私はナイフ?
「何かのいじめですかこれ、川瀬さん。」
果物ナイフと出刃包丁で何と戦えますかね?。せいぜい大型犬が限界じゃないですかね。
「あ、特殊な機能はついてないって言いましたけど、これすごいんですよ!そうだなぁ。このアタッシュケース、切ってみてください。思いっきり振りかぶって。」
川瀬さんに疑惑の目を向けながら言われた通りアタッシュケースに渾身の切込みを入れようと試みる。ええい。どうにでもなれ!
カーーーーン!!!と小気味のいい音がした。(やっぱりそうだよね)としょんぼりしたが、その2秒後には、ドーンという耳をつんざくほどの轟音とそれに見合う強風が吹いていた。
爆発四散するケースを見て(え?なにこれ、これやばいやつじゃない?)そう思ったのは私じゃなかったようで。
「こりゃやりすぎだろ......」
大山さんがまた頭を抱える。その横では松井さんと木村さんが肩を叩きあって笑っている。
...あの二人は絶対他人事だと思ってるよ。
「あの、川瀬さん?特殊な機能はないってさっき。」
「すみません。試作段階のままほったらかしでした。本当はすっごい切れ味とソニックブームが出るんですよ!ゾウも真っ二つでした!」
いや、それでも十分特殊ですけどね?というのは言わないでおこう。というかこの人は何頭のゾウを犠牲にしたのだろう。
「でもこれはこれで使えそうなんで、私もらっていいですかね?」
「ま、まあ大丈夫ですけど、悪用と取扱いには注意してくださいね?」
悪用のほうは大丈夫だろうけど取扱いには自信がないなぁ。
「あ、出刃包丁は完成品のはずなので安心してください。」
信用できるのか、これ。さっきの爆発だってハリウッドみたいな爆発したんですが。
「大丈夫ですって!そんな目しないで下さいよ!もう。でもまあ、一応出刃包丁は確認のためにお預かりしますね。」
「わ、わかりました。お願いしますよ?」
「もうしわけないですって!」
今私の目は、世間でいうジト目になってるのでしょう。そんな目をして出刃包丁を川瀬さんに渡すと彼が一言。
「あぁ、その眼いいですねぇ。しばらく受けてたいぐらい。」
私はこの時、川瀬さんが本物の変態だと知ってしまったのであった。