松井さん、固まる。
結局なにか使えそうな車両はみつかることなく、私は10分間も地獄を味わったのだった。
【お、おい。倉坂、大丈夫か?さすがに悪かった。これから気を付けるから許してくれ。】
半分死んだ顔をしている私をみて、松井さんが謝ってくれた。本当にもうこりごりだ。
発電施設は、小さなテーマパークほどの大きさがあった。大きすぎなのか、これが普通なのかはわからないけどこんなもんということにしておこう。
【よっしゃあ!じゃあ行くぞ!倉坂は分かれて施設の機能を停止させてくれ。ブレーカーがあるはずだ。】
「わかりました。では、またあとで。」
別れを告げて、二人駈け出そうとした。と思ったが松井さんが動かない。
【おう!じゃあ......。あれ?おかしいな。】
「どうしたんです?松井さん。」
【動かないんだ。体は動くんだけど、スーツのほうが。】
松井さんが仁王立ちの格好で固まって、困った声をだしている。なかなかシュールなので笑ってしまいそうになるが堪えた。そこに川瀬さんから無線が入る。
『あー、あー、聞こえますかー?倉坂さん、松井さん。』
「はい。私は聞こえてます。どうしました?」
【倉坂、俺は何も聞こえないぞ】
「川瀬さん、松井さんが聞こえてないそうです。」
『やっぱりですか。実はその近辺、ジャマーとか妨害電波のようなものが張られているようです。ハチャメチャな機械を制限するためでしょうか。でもこの程度のジャマーにやられてしまうなんて、僕の設計ミスですね。悔しい。仕方ないので倉坂さん、一人で制圧してください。松井さんの言う通り、12ある施設の一つ一つにメインブレーカーがあります。頑張ってくださいね。』
えぇ.....一人でこのテーマパークを攻略しろというのかこの人は。
『ま、できますよ。敵もそんなに強くないですし。まだ人ですから。』
そ、そりゃ人でしょうよ!ここで悪魔とか出てこられたら困ります。
『それとウィンドブレーカー機能使ってます?あれ、機関銃の銃弾ぐらいなら防げますから使ってくださいよ。』
「あ、忘れてました。あれ、どこについているか地味にわからないんですが。」
『出刃包丁の右側です。ログ見てたら、倉坂さん果物ナイフしか使ってないでしょう?ちょっとは出刃包丁使ってくださいよ。』
「えぇ、だって怖いんですよ。至近距離で爆発するの。」
『そのためのウインドブレーカーですよ!』
走りながら無線で会話してると、一つ目の施設についた。
「えぇ、そうだったんですね!?あれ出刃包丁の爆風も防げるんですか?」
『そうですよ!施設内部に入るみたいなんで、いったん切りますよ?』
ぶつっと音がして、無線が切れたことがわかる。ここに来るまでに30人ほど切った。
ウィンドブレーカー機能は私の出刃包丁に付けられた機能で、この機能を使うことにより、使用者の周り1mくらいを不思議なパワーの風で覆ってしまい、それに触れた射出物や、投擲物を地平のかなたに飛ばしてしまう魔法のような結界なのだ!すごいテクノロジーである。
「ふぅ。この扉、開かないなぁ。」
実はさっきから施設の扉をガチャガチャやっているんだけど、鍵がかかっているのか開かない。
「......出刃包丁、使ってみるか。」
出刃包丁に持ち替え、ウィンドブレーカー機能をオンにする。振りかぶる。ドアに思い切りたたきつけて、すぐに距離をとる!
すると大きな爆発。煙が晴れて、扉がなくなったことを確認する。
「かんっぺき!さすが私!」
一人、出刃包丁をもってはしゃぐ、19歳女性。
ふと我に返って悲しくなった。




