突然のおかえり
「いかんです、いかんです。こりゃあいかんですよ!」
緊急事態に私は叫びながら走っていた
目的地に着き、蝶番が外れんばかりの勢いでドアを開く。
「いかんですよ!大山さん!」
大山さんは、ソファに座ってタバコをふかしていた。
「どうしたんだ。また寝過ごして昼飯でもぬかしたか。」
顔だけこちらに向けそう言った。あ、そういえばそうだった。
「そうですよ!なんで起こしてくれなかったんですか!ってそれどころじゃないんですってば。」
「なんでもいいから、緊急事態なら早く言え。」
心底面倒臭そうな声で大山さんがそういうので、私はすこし大きめの深呼吸をして、
「......支部長が、15時に帰ってきます。」
「おい、倉坂。それは本当か。」
口調を変えずに大山さんが言う。この人は少しくらい焦らないのか。
「はい、マジです。急がないと。」
「今すぐ片づけをしろ。でないと殺される。総動員でだ。」
ここは広い施設だが幸い、人の出入りする場所は少ないので助かる。まあ、普段から掃除しておけって話なんですけどね。
2時。片づけはまだ終わらない。私は支部長室の掃除を任されていた。
「ふう、こんなもんか。ここはもう大丈夫でしょう!」
「おお、丸半年使ってなかったのにきれいに片づけたなぁ。倉坂?。」
もしかして、この気だるそうな声は...私はソニックブームでも出そうな勢いで振り返った。
「み、宮本さん。お早いお帰りで。今は......2時3分ですね。」
「一時間も早く着いたか。あれほどたまに掃除しろと言ってるのに毎度毎度...」
前回もそうだ。この部屋は、支部長が来るときしか使わないから仕方ないとしても。
大山さんには大掃除デーを毎月設けるようにいっておかないと。
「申し訳ありません!そ、そんなことは置いておきまして、今回はどんなご用事で?」
「うーん、掃除の件はまぁいいか。支部のみんなを集めてくれ。」
ん?支部長が掃除のことを言わないなんて今回は何か重要な用事かな?
「了解しました。」
『えー、各員に告ぐ。支部長室に速やかに集合せよ。5分以内にです。光の速さで来てください。』
支部長室の施設内のスピーカーに発せられる招集。
えーっと...今の時間は2時10分ですね。みんな困ってるだろうなぁ。