第7話
まさか3位か・・・!?もう引き返せない!更にブクマしてくれた100人前後の皆さんもありがとう!
次の日の朝6時、俺は布団から跳ね起き、宿題を小一時間ほどやってから朝ごはんを用意した。
初穂もしっかり夏休みに入っているので、作り終わった今でもぐっすり夢の中だ。
以前初穂の部屋まで起こしに行ったことがあるが、烈火のごとく怒られたので置き手紙でもしておこう。
俺の学校は公立で結構緩いので、宿題などほとんどない。数学と英語があるだけで他は読書感想文だけだ。それも授業中にやったので、今朝の勉強で宿題は全部終わった。これからは自由な日々を過ごせるだろう。
俺はヘッドギアを被り、ゲームの中に飛び込んだ。
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「さて、先ずは武器の入手か」
昨日の戦闘でひのきの棒はぶっ壊れてしまった。ゲットしたアイテムも多数あるが、『ゴブリンのこん棒』以外『ゴブリンの腰布』など、ほとんどが武器とは思えないアイテムだった。スライムさんのドロップもあるが、棒にはならない。
「まだこのゲームも始まったばっかりだし、露店もあるだろ」
このゲームでもプレイヤーホームはある。が、それを利用できるほど大量のゴールド(金の単位)を初期の初期に持っている奴などいない。だから、腕のいい奴でも普通に道端で何かを売り買いしている職人はいるのだ。
俺は掘り出し物を見付けるため、噴水の広場から駆け出した。
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露店は町のとある通り1つだけで開かれていた。とか言っても普通に広く。店の数は500を越え、ポーションやロープなどの道具を売る店も点在していた。
かといって、本格的な1品を作り上げているところなど全くない。テスターの生産職がいれば話は違うのだろうが、見たところいるように思えない。
だが、このゲームの売りはリアルな世界観でのバトルだ。生産職にも楽しみはあるのだろうが、やはり戦線に立つ興奮を求めるプレイヤーが多かったのだろう。
「そういやヒナは生産職だったな。何を担当してるのか聞いておこう」
「おーい!そこの坊っちゃん!こっちいらっしゃい!」
考え事をしながら通りの出口に歩いていると、声をかけられた。
振り返ってみるとそこには長身の女性が立っていた。
服装はハーフパンツに短い袖のシャツを下の方で結んでいて、服の隙間からは褐色の肌が覗く。それに強調される肢体はグラマーで、こちらをみる顔はニコニコというよりはニヤリとしている。
まあ、とにかく。
「あなた猫みたいって言われません?それもイタズラ好きな」
俺の印象はこんな感じだった。
女性はそれを受け、更に笑いを深め、ニヤリと返す。
「あなたこそ猫みたいよ?それも見た目に似合わず歳とって落ち着いた猫みたいな」
俺もそれにニコリと返す。回りにはその店に寄ろうとしているプレイヤーもいるようだが、皆俺たちの妙な気迫に押されてすごすごと帰っていった。
軽いジャブの打ち合いはさておき、俺は露店の賞品を見る。どうやらこの人物は鍛冶師らしい。
どれも驚くような完成度で、素朴なデザインながら、独特の凄みを出しているように見える。このような物を作れるのだから、βテスターなのだろう。
「どう?坊っちゃん?お気に召した物は?」
漆のように黒いショートカットと瞳を揺らして微笑む。
「どれもいい武器だな。---だが、俺の握れる武器はないな」
女性は少し驚いたように少し目を張る。
「あら、結構ウチはメジャーな物を揃えてると思うのだけど?」
「だろうな。大剣、直剣、曲剣、細剣。どれも人気な武器だろう」
「ならあなたの武器は?」
「棒だな」
女性は一瞬キョトンとして、またイタズラ猫の表情に戻る。
「へぇ?それで戦えるの?結構難しい武器みたいだけど」
「問題ない。一応スライムまでは倒せた。溶けたがな。どうして死に戻りしなかったか分からないほどだよ」
「ふんふん」
大したことじゃないと思ったので、俺は今回の目的を伝えるのも兼ね、経緯を話した。女性はそれを聞き、暫く考えるそぶりを見せると笑顔でこう言った。
「それ、溶けない棒も作れるようになるよ」
「本当か?対価は何がいい?」
物事には対価が必要だ。どんなものかはともかくそれは向こうもわきまえてる。
「そうだねー・・・。坊っちゃん『ゴブリンのこん棒』持ってる?」
「あるぞ」
それを聞き、若干声を踊らせて続ける。
「そっか。そりゃよかった。あれは結構削ったら良い柄になるのよ。3個くらい貰えたら今回の件は大丈夫かな」
「それだけで良いのか?分かった」
俺はインベントリからこん棒を3つ取りだし、女性に渡す。
「ありがと、出来るのは明日の朝くらいかな?大体今と同じ時間に来てくれたら嬉しいね」
「分かった。・・・ところで何て呼べば良い?」
名前を聞いていなかったので、俺は何となく聞いてみた。
女性はからかおうと思ったのかニヤリと笑って。
「ヒ・ミ・ツ!」
とウィンクつきで答えた。
・・・まあそう言うなら仕方ないか。
「じゃあな姐さん。また来る」
「あいよ。坊っちゃん。またおいで」
全く。面白い人もいたものだ。
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あの子、自分がそれなりにすごいことやってる自覚あるのかしら?
スライムは単体で出ることはないから、必ずゴブリンがついてくるのは常識。スライムに武器を壊された状態でモンスターに勝つなんて凄いことだ。素手のプレイヤーなら手が無くなるしね。
『ゴブリンのこん棒』もれっきとしたレアアイテム。武器としても使えるし、良い木材にもなる優れもの。そのくせドロップ率も低めで、そこらで売れば言い値で買ってもらえるだろう。それを3つもぽんと売るとは。
それに『姐さん』ねぇ・・・。1人っ子としては憧れてた所もあったわね。可愛い弟 。
「これはいっちょ頑張りますかぁ」
私は弟分に武器を贈るため、店じまいを始めた。
あのね、鍛冶師に褐色は普通にあると思うのです。男勝りな性格もね?だからね?キャラ被りなんて言わないで・・・!
ちなみに先程感想を読んで、追加で説明を入れるのですが。
主人公の『ライト』という名前は『黄昏=トワイライト』ということで語呂の問題から一部だけとっただけのものです。・・・あってるよね?訳しかた?