第6話
ゲームでモンスターと言えばこの方を出さねば始まりませんよね。それでは第6話。どうぞ!
あのあとゴブリンを10匹ぐらい倒しながら歩いていくと、ようやく湖についた。お陰で《棒術》はLv.3になった。
しかし、やっとついたそこにもプレイヤーの影は見えなかった。
「また皆奥に進んだのか?第1ステージだからって進むの早すぎだろ」
まあ中にもβテスターがいたりして楽に進めるのかもしれないが、もうちょっとゆっくりやってもいいと思う。
「だが、まあここなら景色もいいし、暫くここで戦ってから町に帰ろう」
見たところこの周辺にもゴブリンしか沸かないようだ。とりあえずは《棒術》をLv.5まで頑張ろう。
「そうと決まれば乱獲開始だ!」
俺は周囲のゴブリンを絶滅させる勢いで、戦闘の火蓋を切って落とした。
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ゴブリンは一応、人型の生物らしく知恵を持つものがたまにいる。そんな連中も《棒術》のレベルアップで覚えたスキルを使えば問題なく狩り尽くすことが出来た。
おかげさまで思ったよりも作業が捗り、Lv.5どころかLv.9まで《棒術》のレベルが上がってしまった。
多少やり過ぎたが、今のところ十分満足出来たし、ひのきの棒も若干痛んできている気がするので、そろそろ町に帰ろうか。
「それじゃ町はあっちか・・・っとなんだアレ?」
小川がある方に視線を向けると、ゴブリンが1匹、同種ではないモンスターと行動していたのだ。
まあそれだけだったらモンスターだから、多少そういうこともあるんだろうと流してそのまま 帰還しただろう。
「ま、まさか」
だかそのモンスターに問題はあるのだ。
その体は俺の膝ほどの高さの雫型。その色合いは一点の曇りもない青。
「スライムさん・・・!?」
そう、目と口がないだけで●ラ〇エ人気モンスターの代表格であるスライムにそっくりだったのだ。
それを目にした俺は、それまでの考えを180度切り替えてスライムさん目掛けて突進した。
「元とはいえ腐っても俺は●ラ〇エプレイヤー!スライムさんを見つけて戦わない道理はない!」
FBOのスライムさんは敵を見かけて逃げ出すようにはなってないらしい。スライムさんはゴブリンと一緒に迎撃するつもりのようで、プルンッと体を震わせる。
「先手必勝!『凪ぎ払い』!」
俺は彼らとの距離が0になる寸前にスキルを発動させ、スライムさんだけに攻撃を当てる。
幾らなんでも第1フィールドのスライムさんがしゃくねつを放ってくるとは思っていないが、その分近づかれたときのタイミングを計ることに集中しているだろう。となれば、ゴブリンと共に自分が俺の間合いに入る瞬間行動を起こすはずだ。
「なら俺は先にお前だけを獲る!」
イレギュラーは初手で摘み取るのが好ましい。スライムさんは、俺の目的通り隙を突かれたようで、横一文字に繰り出された俺の『凪ぎ払い』をモロに受け体をポリゴンにして爆散する。
流石Lv.3で覚えたスキルだ。どこが弱点かよく分からないモンスターに当てても満足な威力だ。
さて、自らの手でスライムさんを倒すという小さな夢は叶ったが、その余韻を味わうにはゴブリンは邪魔でしかない。俺はひのきの棒をもう一度振りかぶり、『凪ぎ払い』を発動する。
その振るった棒がゴブリンの脇腹に当たる---その瞬間、棒の先が音を立てて消えた。
「なにっ!?」
よく見れば、棒の消滅は止まっていない。今も煙を立てて短くなっている。その原因は・・・スライムの体液が溶かしているのか!
先端が消えたひのきの棒ではゴブリンの胴体にまで届かない。俺は咄嗟の判断でゴブリンのこん棒を、欠けたひのきの棒で受け止める。
このゲームを始めて、最初のダメージ。痛覚に激しく痛みを訴える訳ではないが、こん棒を喰らった脇腹が痺れるような感覚がある。
俺はその勢いを殺さず、小川の中に飛び込んだ。初期装備のままだったからか、HPは1/3も減っている。
選択肢としては逃げるか闘うか・・・いや、途中で他のモンスターに見つかったら、今の装備じゃ殺られるのは必至だ。生き残るには目の前のコイツを倒さなければ。だが、リーチの減ったひのきの棒では---!
俺が考えを巡らせている間。奴は俺に近付いてくる。まだ策は浮かばない。あと3歩。まだまだ策は浮かばない。あと2歩。もはや何か思い付いても手遅れだ。
---あと一歩。奴の足が小川の水を波立てる。
その音が俺の意識を研ぎ澄ました。俺はゴブリンの頭目掛けて、ひのきの棒を投げつける。
ゴブリン(仮)は鬱陶しそうにこん棒でへし折り、川の底に叩きつける。
振り切ったこん棒を俺は踏んで川底に縫い付け、ゴブリンの動きを止める。
攻撃手段を取り返そうとゴブリンは躍起になってこん棒を持つ右手に力を入れるが、それは急に鉄か何かになったかのように重く、持ち上げることが出来ない。
そしてその事に驚いてるゴブリンを、俺は水面に蹴り落とした。ゴブリンの口にいっぱいの水が入り込む。
窒息する前にとゴブリンは本能的に立ち上がる。
だが、彼の視界は水の中のままだ。
おかしい。
さっきまで立っていたのは小川だ。俺が普通に立てるほどの川でしかなかった。なのに俺はなぜ水の中から出てこれない?
彼はもがく。しかし視界は晴れることはない。
彼は肺の中の空気を吐き出す。しかし新たな空気が入ってくることはない。
ゴブリンは不思議な、なおかつ恐ろしい体験をしながら、ポリゴンの塊になって爆散した。
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「ふう、なんとかなったか」
濡れ鼠状態の俺が脱力して、川に身を投げ出す。
この策を思い付いたのはゴブリンが水を踏んでからだ。俺はそこで《液体操作》を思い出した。
そこで俺はゴブリンのこん棒が水についたとき、川の中の水をありったけくっ付け重くして、動きを止め。そして奴自身も川に沈めてから、窒息させようと試みた。
まさかゴブリンが立ち上がるとは思わず。魔力の消費が爆発的に増え、殺しきれるかビクビクしたが。うまくいって何よりだ。
「だが、これで丸腰か」
俺は濡れたせいで重くなった服のまま立ち上がり、町の方に歩いていった。
今日の教訓。
スライムさんは舐めてはいけない。
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あと9/16ゴブリンの(仮)をけしました