第4話
もうPv2000こえました。てかこのペースだと毎日更新と勘違いされそうだな。
9/13誤字訂正
とりあえず俺達は町を離れ、第1のフィールドである平原にやって来た。その奥の方ではたくさんのプレイヤーが剣なり槍なりで緑の体色の子供っぽいの(ゴブリン?)を七転八倒しているのが見える。
しかし今は、俺をその連中の仲間入りするためではなく、ある一件のために、小川の流れる近くまで来ている。
「それでは第1回!『如何にライトが外れスキルしか取っていないか検証会』を開催します!」
そしてパチパチパチと虚しく響く、まばらな拍手。そうその1件とは俺のビルドの試運転だ。
騒がしいのはサイカだけで、ヒナは苦笑いだ。俺?そりゃ自分をダメ出しする目的のイベントでテンション上がるか。
そんな観客の様子をいつものように無視して話は続く。
「それでは先ず検証しやすいものから始めましょう!ではライトくん!このキノコと薬草を《識別》のビルドでどんな名前か当ててみてください!」
「ん、分かった」
ウザいから正直無視したいが、一応教わる側なので大人しく指示に従う。
俺は先に薬草を手に取って『識別』と言ってビルドを発動する---しかし、発動しない。
「あれ?」
「気づいたかね?ラトソンくん」
無理矢理なボケはやめてはよ教えろと睨むと、サイカは一呼吸溜めてから叫んだ。
「そう!《識別》とは名前のくせして一個も情報を汲み取れない無能ビルドなんだよ!恐らく《鑑定》とごっちゃにして君はこれを選んだんだろうけど、MPを消費しない以外このビルドが勝ってる所は一切ない!」
「それじゃこのビルドってただ枠を1つ削ってるだけ?」
「Yes!」
ヤバイな。そりゃ皆外れって思うわ。
「じゃあ次に《合成》だ!どうせこれも《調合》と勘違いしてたんだろう?」
図星過ぎてぐうの音も出ない。
ちょっと恥ずかしかったので無言でキノコと薬草を《合成》する。
一瞬の発光の後、俺の手のひらにあったものとは---
「「気持ち悪っ!」」
「うわぁ・・・」
---大体どうなるのかも分かってたテスター2人ですら軽く引くような、気持ちの悪いなにかだった。
強引に言葉で表現するなら『薬草みたいな形のキノコ』だろう。これ以上観察してたら意味不明すぎて吐いてしまいそうだ。サイカはその植物Xを俺の手からぶんどって、小川の下流の方へ全力で投擲した。
そして気を取り直して続ける。
「こういうことだよ!一応《合成》はある程度βテストの時も実験したやつがいて、ポーションもできたみたいだけど!少しでも合成に失敗したら謎物質ができて精神力がガンガン削られるんだよ!」
「なるほど」
確かに実験した今だから分かる。あれを大量生産してしまうようなビルドは要らんな。
「じゃあ3つ目は《棒術》かな。《棒術》は武器のジャンルとしては長物兼打撃に位置するんだけど・・・」
そこまで言ってからサイカはインベントリから案山子を出すと。
「じゃあこの案山子に突きと降り下ろしを当ててみたまえ!」
「おう」
俺はひのきの棒を手に持って立ち上がり、案山子の前に立つ。
余談だが。武器系のビルドをとったからといって、幾らレベルを上げたとしても、通常攻撃や普段の扱いがそれらの達人になるわけではない。だが、ゲームには装備という概念がある。装備していない武器は握ることは出来てもダメージを与えたりできないのだ。武器系のビルドは、『その武器を装備できるようになる』という制限解放の意味が大きい。
俺は先端を案山子の腹に突き刺す。だが、正直ただの棒なので藁のなかにうまるだけで芯の木材には刺さらない。これでダメならと今度は横から遠心力も注ぎ込んで叩きつけた。だがまたも案山子は少し傾いただけで、肝心の本体はびくともしなかった。
そこで俺はこの武器が何故使えないか理解した。
「分かった?棒は軽いから手数はこれよりも多くなる!だがしかし!長物にしては突いても刺さらず!打撃武器としては一撃が軽すぎるんだ!」
戦いにおいて、1つでも尖った何かがあれば、大分戦いやすくなると以前聞いたことがある。これだと色々な要素がある分中途半端で、決め手が足りないのだ。
「じゃあこれも分かったようだし、お次は《液体操作》だ!川にそれを使って見たまえ!」
俺はもはや何の躊躇いもなく《液体操作》を使う。川から1つ小さな水球が浮かび上がるのを想像すると、その頭の中のビジョンとほとんど重なるように水球が踊る。
使い手の思い通りに動く。正に理想の性能だった。
---すでにMPが空っぽになっていなければ。
「何これMP消費がヤバイ!」
「これも素早く理解したな少年!確かに魔法系のビルドがMPをドカ食いする!だがコイツは輪にかけてそれが酷いんだ!そして《液体操作》をメニューを開いてタッチしてみろ!」
俺は急いでメニューを操作し、《液体操作》を調べる。
「『スキル』がない・・・!?」
元来ビルドにはそれぞれの技である『スキル』がある。それは素人のプレイヤーが最低限モンスターと戦えるようにする。運営からの救命措置だ。それを発動したプレイヤーはシステムのサポートによりごく一時的にそれぞれの道のプロのごとく動くことができる。
《棒術》は当然《識別》も《合成》にも名前はそのままだが『識別』と『合成』というスキルがある。だが《液体操作》にはそれが一切ないのだ。
「おまけ液体を操作するからには水がないと使えないから、砂漠なんかじゃ役立たず。もうドマゾプレイヤーしか取ってる人はいないビルドだよ!」
「マジかよ」
「よし、これでレクチャー終わりね」
「ん?《テイム》は?」
そこで急に真顔になってサイカは返してきた。
「どうやるの」
「え」
俺は咄嗟に押し黙る。
「テスターのなかに何人か、ここらに出てくる魔法生命体で試した人がいたよ。《テイム》は『スキル』はちゃんとある。だけどね。モンスターには使えないんだよ。それで、倒したら卵なりなんなりドロップするのかと、ひたすらサービス終了まで狩り続けたんだけど・・・ついには1人も《テイム》できなかったんだって」
「・・・」
「分かった?じゃあこれで、第1回『如何にライトが外れスキルしか取っていないか検証会』を終わります」
「有り難うございました」
思わず正座で反応してしまった。
これからも頑張りますのでブクマと評価お願いします。あと以前評価してくださったどなた様。辛い評価を有り難うございます。