第13話
誠に遺憾なのですが、これからは毎週土曜にアップすることになります。おのれ学校許すまじ。
「はい。じゃあこれが注文の品ね」
ジーーーーーー。
「ありがとう。いくらだ?」
ジーーーーーー。
「別にいいよ。私も楽しいことに挑戦できたしね」
ジーーーーーー。
「いや、俺も良いものを貰えたし---おい」
俺はいい加減後ろを振り返る。
「いい加減、機嫌直してくれないか?」
その先には、笑顔の癖して極めて不機嫌そうなヒナとサイカがいた。
「機嫌なんて悪くないよ?」
「そうだね。ライトが知らぬ間に美人なお姉さんと知り合ってたからって、全くもって問題ないよ?」
「んー?」
明らかに怒っているのは分かるのだが、なんで怒っているのか分からない。このままでは貢ぎ物にちょっと高いカップアイスを2つ買うはめになってしまう。
そこで露店の方から声をかけられた。
「ほら坊っちゃん。私に構ってる暇があったら嬢ちゃんたちと一緒に新しい武器を試してらっしゃい」
「だがお代は」
「それならソイツを試した感想を教えて頂戴な。私も初めて作ったからどんな出来か知りたいのよ」
どんな出来でもひのきよりは強いのだからお代を払ってもいいと思うのだが、本人にそう言われたら断るに断れない。
(あの人もうすっかりお兄ちゃんを飼い慣らしてる・・・)
(まさか歳上じゃないとダメなのかな?それじゃこれまでの苦労は・・・)
突如襲った寒気はともかく、ここはお言葉に従わざるを得ないだろう。
「じゃあ2人とも、行こうか。姐さんもありがとう」
「良いってことよ。あ、近々店を持つことになるからここに居なくなるし、アドレス交換しない?」
「分かった」
(さらっとアドレス交換!?)
(あたしなんて殴られたのに・・・)
愕然としている2人を余所にアドレスを交換する。
「それじゃまたね。今後ともご贔屓に!」
その言葉を背に、俺たちは露店を離れた。
「しかし、どこにいく?第1のボスでも倒しにいくか?」
「いんや、たったの3人じゃ無理だね。クリアするならフルパーティー。6人は欲しいね」
「それじゃどうするの?」
歩きながら早速相談してみるが、行き先が見つからない。何時もならフィールドに出てゴブリンなりなんなり狩れば良いのだが、今は全くもってモンスターがいないのは周知の事実だ。
「しかしなんでモンスターが居ないんだ?バグか?」
「それも危惧したプレイヤーが運営に問い合わせたけど『仕様です』って返ってきたみたいだよ」
「β版でもこんなことはなかったよね?」
運営もそう言うのだからそうなんだろうが、迷惑な話だ。
「それじゃあちょっと俺についてきてくれないか?狩りは出来ないが面白いところがあったんだ」
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「いい雰囲気だね」
「こんな場所βじゃ無かったよ」
というわけでやって来ました町外れの村。今日も子供が走り回り、大工が木槌を振るっている。
「だろ?つい昨日ここに来たんだ。っとこんにちわ」
俺は目の前を走る子供に挨拶をした。子供たちは俺をじっと見ると一斉に挨拶を返す。
「こんにちわー」
「昨日ぶりだね旅人さん」
「もう棒は要らないのー?」
最後の子はあとで話をしようと心に決め、俺はあるところを目指して歩き続ける。
「確かに良いところだけど。何しに来たの?」
「それは---」
「来たか!坊主!」
前方から大きな声。リズムに乗って伝わっていた木槌の音が止まる。
「ああ、親方さん。作業は順調か?」
声の主は昨日のクエストの依頼人の大工だった。彼はこちらに歩いてくると肩を組んできた。
「おう。お陰さまでな!それよりどうだ?これから休憩なんだが一緒にメシでも食わねぇか?連れも一緒によ」
「そうか?しかしどこにあるんだそれ?」
「もうすぐ娘が持ってくるんだよ。もう少しそこで待ってな」
親方はそういって、作業場に戻っていく。
「ライト。やってきた理由ってクエストかい?」
「ああ。それも面倒な条件付きでな・・・」
面倒なのは受注できる条件だ。俺がハートブレイクした瞬間に分かったのだが、昼にこの村に来なきゃ行けない上に、受注できるのは3人パーティーだけ。しかもその全員がログインしてから食べ物を食べてはいけないらしい。
パーティーしか受けられないと知り諦めかけたが、今日は運が良かったとしか言えない。
「なるほど。結構面倒なチェーンクエストだね」
「ああ。次のクエストの受け方は分かっても条件次第じゃどうにもならんからな」
そこでヒナが申し訳なさそうに手を上げる。
「お兄ちゃん。私戦えないよ?」
「大丈夫だ。俺も最低限戦えるし問題ない」
「おーい!娘が来たぞ!メシだー!」
そこでお呼びの声がかかる。俺たちは声のもとまで歩いていった。