第11話
「進化・・・ねぇ」
どうしよう。こんな仕様全く聞いてないぞ。調べるにも一度ログアウトしなきゃならんし面倒な。
「進化って言う分には弱くはならないだろうが・・・」
ただ、それを選ぶのもノーリスクではない。たった今大事にしようと誓ったBPがまたゼロに戻るのだ。進化させては、もう暫く新しくビルドを手に入れることはできない。
でも、よく考えてみると《液体操作》も別に使えないビルドじゃない。誰も使えなかったビルドだ。地の利を得ることが可能になるのは、決して弱くない。
「よし」
俺は『はい』を選び、指先で押した。
『《液体操作》は《操液術》に進化しました』
ビルドを確認すると、《液体操作》が消えていて、代わりに《操液術》が、その空欄に埋まっていた。
俺はとりあえずその使い心地を調べるため、オアシスの水で《操液術》を実験してみた。
最初に《液体操作》を試したときと同じ動きをさせてみる。そして、すべての動きを終えたとき、MPは1/3は残っていた。どうやら大分燃費がよくなったようだ。それに滞空させるだけならMPは減っていない。
「確かに使いやすくなったが・・・これだけか?」
このゲーム初めての進化だが、他のゲームの能力の進化はもっとオプションがついていた気がする。
《液体操作》にはスキルが無かったが、念のため《操液術》にもないのか調べてみると、1つだけスキルがあった。
「『硬化』・・・分かりやすいのかそうじゃないのか微妙だな」
今になって思うが、スキルの内容が細かいところまで説明されないのもこのゲームの大きな特色だと思う。レベル10になって解放された《棒術》のスキルも分かりづらいし。
まあ、硬化を知るには実験あるのみ。
「『硬化』」
先ほどと同じ大きさの水球を浮かべて、スキルを使用する。
すると波紋を絶えず発生させていた水面がピタリと静まった。どうやらしっかり固まってるらしい。
「常温の氷って感じかな」
冷たくないしね。あとこのままでも普通に形を変えられる。消費MPも前と同じだ。だが、バーの一部が暗くなっていた。封印状態と言うやつだろうか?多分全体の数%のMPを封印して使うスキルなのだろう。
「次は耐久試験かな」
ここで取り出すは、何気にたくさんある『ゴブリンのこん棒』です。『ゴブリンの釘こん棒』は一応イベントドロップなので使いません。それを構えますと次に『硬化』した水球を腰くらいの高さに浮かせます。最後に---振りかぶって打ち付けます。町中でも装備類だけは普通に傷つくので危ない実験には便利だな。
まあ装備してるわけじゃないので、そこまでの威力はないが、結構な勢いでこん棒は水球に吸い込まれる。それらが衝突した瞬間。
パッカーン!
といい音を出してこん棒が砕け散った。これくらいの丈夫さならゴブリンにぶつけても平気だろ。
「これはいい買い物したな」
『硬化』を解くと、しっかり封印されていた部分が元の色に戻った。『硬化』させる水の量で封印されるMP量も変わるみたいだし、しっかり管理しなきゃいけないな。
俺は上機嫌でゲームからログアウトした。
次くらいからまた長くします




