第9話
土日は恐らく投稿出来ません。ごめんなさい。
新しく出来た心の傷はさておき、俺はまたフィールドにやって来た。
その目的とは《液体操作》のレベルを上げることだ。
前回の戦闘で、フィールドを味方につけることによって生まれる優位性が、嫌なほどに理解できた。どこでも使える魔法と比べたら不便だろうが、それでも十分強いと思う。
なので俺は来るべきに備えてレベル稼ぎをしておきたいのだが---
「いない・・・?」
何故かフィールドの果てまで目を凝らして見てもゴブリンの姿が見えないのだ。同時にそれを狩るプレイヤーもいない。
もっと奥にはいるかもしれないと、湖に足を向けたのだが、そこにも人っ子一人いなかった。
「おかしいな。群れの移動でもあったのか?」
プレイヤーが死ぬことはないのだから、いなくなるとしたらゴブリンの方だ。だが、ゲームであるのだから滅びるのはないだろうし、そう考えるのが妥当だろう。
「・・・もっと奥にいるのかも」
湖から離れることになるが、《液体操作》に使えるものにはあてがある。
そして俺は更に奥のフィールドに足を進ませる。
/////////
端的に言って、モンスターはいたはいた。
かなり歩いてやっと見つけたのだが、遠くから見るにあれはゴブリンだろう。
それが1匹しかいないのは、よくあることだったからさておき。
ちょっと図体がでかいのだ。なんというか普通のゴブリンは小学生なら、アイツは中学生みたいな感じで、少し年齢的に成長しているように思える。
ついでに持ってるこん棒がどうしてもぶっとい釘バットにしか見えない。・・・運営はっちゃけたな。
やっと見つけた獲物なのだが、このまま殴りにいくのはバカのすることだと思う。
俺はインベントリから小瓶を取り出す。
「1匹相手に使うのは勿体無いと思うが・・・」
振りかぶって、投げる。それが落ちたのはゴブリンの足下だ。
ガラスが割れる音に警戒を強め、ゴブリンは周囲を睨むように索敵する。そしてがさりと茂みが揺れるのをみて、ジリジリと近付いていく。
そして、割れた瓶からこぼれ出た、水溜まりを踏み---飲み込まれた。
「---ッ!」
仲間を呼びたいようだが、口をドロリとした液体が塞ぎ、呼吸すら満足にできない。
「よし、予想通り」
俺はひのきの棒を携えてゴブリンの前にたつ。
今俺がやったことは簡単。敵の足下に小瓶を投げて警戒を高め、そこでわざと居場所を特定させ注意を引く。最後にこちらに気をとられたゴブリンを罠にかけたのだ。あっさり成功したので自分でも驚いた。
結構えげつない作戦だが、これだけじゃない。今奴をとらえている液体は、スライムからドロップしたアイテム、『スライムゲル』だ。
町に帰ってからその存在に気づき、こん棒にちらりと垂らしてみたが、俺のひのきの棒と同様に綺麗にとけたので、スライムの特性もしっかり引き継いでいる。
あとゲルというものは、要するに『粘り気の大きい液体』だとこのゲームでは認識されているようだ。なので今回の作戦は成功したのだ。
俺はゴブリンの口から『スライムゲル』を流し込む。ゴブリンはメチャクチャにもがくが、直ぐに体を痙攣させて仰向けに倒れる。もはや喉も溶け、内臓も焼かれて、動くことすらできない。
とどめをさせるかと思ったが、MPが途中で切れてしまった。面倒だが『振り下ろし』で1度叩くと、ゴブリンはポリゴンになり爆散した。
「今回は楽だったな。生物にはこれからもこの手でいこう・・・あれ?」
ポリゴンが空中に溶けきると、青い円陣が目の前に現れた。
短いですが一旦区切ります。




