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ADVALN ―世界の真実を知るまで―  作者: 安藤真司
―出逢い編―
6/20

絶望と接触するまで

「待ってないわよ」


いまだ喧騒に揺れる街を目下に、ノアが呟く。

突如として中心街モールズに出現した巨大生物は爆音とともに落下、その後動きを見せていない。

ノアはこの生物をアドバルンの力でワープさせ、この街から引き離すべくアドバルンに接近するように威嚇射撃を行って以降、動きのない生物の様子を観察していた。

「二人ともなにしにきたの今のうちに逃げて!あれが、どれだけ凶暴なのかわかってるの!?」

「わかんないよ!でもノアちゃんを放っとけるわけないでしょ!」

「いいから!私はこういう戦闘に慣れてるから!パチャカマックがいつ動き出すのかわからないんだから早くここから離れてよ!お願いだから言うことを聞いて結ちゃん!」

「絶対嫌!私、友達を見捨てたりなんかしたくないよ!そもそもパチャカマックってなにさ!」

「私だって知らないよ!さっき街の人達がそう言ってたけど何よパチャカマックって!」

「語感がいいね!」

「そうだね!」

「知らないのかよ!?」

喧嘩腰な二人をよそにパチャカマックという名に聞き覚えのある一葉はようやく冷静になった頭で自分の記憶を探りながら言葉を紡いでいく。

「パチャカマック…アンデス地方の太陽神だったか…いやでも、パチャが世界で、カマックが創造者だったような…どちらにせよ、南米において神格の高い存在のはず…」

「…えーと、一葉先輩はあれですか鉄高校オカルト研究会だったんですかそれともただ単にご趣味で?」

「あ、ご趣味だけど?」

「あぁ、そうですかごめんなさい高貴なる黒田さんクラスになると趣味イコール勉学なんですねわかります私の趣味柔軟とか意味不明ですよねすみませんいやぁ住む世界が違いますね」

「やたらと饒舌に精神攻撃をしてこないでくれよ!」

と、二人息の合った会話に一区切りを入れて、ノアの方を見やる。

「だから」

「そんなわけで」

「神様の名前つけられてる危なっかしい奴をノア一人に任せるわけにはいかない」

「そりゃノアちゃんみたいに銃が出てくるわけじゃあないし戦うだなんて授業で剣道やってたくらいだけど」

結はそこで思い切りよく叫ぶ。

「私たちを使って!友達でしょ!」

結の言葉をうけてなお悩むノアに、一葉は再度声をかける。

「そもそも、こんな屋上まで一跳びで来れるくらいには人間やめてるわけだしさ」

「でも…」


と、その時空から別の人影が降り立った。

突然のことに一葉と結は顔をこわばらせる。

「おわっ!?なんだ!?」

一葉達のいる屋上に突如降ってきた男はパンパンと服を払うとノアに向けて話しかけた。

「ゴールド・ガンここにいたか、早速だけど協会からの状況報告なんだが…ん?この二人は?見たことないな…民間人か?」

どうやらノアの知り合いらしいこの男は自然とノアのことをゴールド・ガン呼ばわりしていた。

ノアもすぐにそれに応える。

「ううん、二人とも紋章持ち、だけど発現したばかりだから離れてもらおうと思ったんだけど言うこと聞いてもらえなくって…」

「そうか、二人ともってのは珍しいな、でもそれなら好都合だ、そこの二人…ええと名前は…?」

何の話をしているのかはわからなかったがそこはすぐさま対応する一葉。


「あぁ、俺は黒田一葉、こっちは野上結」

「いちょーに結だな、俺はリンドウ、よろしく」

「あ、あぁ、よろしく」


リンドウと名乗った男は体格の良いわけではなかったが筋肉質でどこか力に溢れている印象をうける上背のある男だった。特に武器らしきものを構えている様子は見られないが、半袖のシャツから見える右腕には見覚えのある黒い紋章が刻まれていた。

「紹介はともかく、これを付けてくれ、アリス3人分頼めるか?」

リンドウはそう言って何かイヤホンのようなものを3人に手渡した。

どういうわけかきちんと各々の耳の形に合わせてあるらしい。

イヤホンを耳に装着するとそこから声が聞こえてくる。

『ノアさんはお久しぶりです、いちょーくんと結ちゃんは初めまして、私はアリス、そこにいるリンドウの妹で…あぁ、まぁ紹介はともかく状況を話させてもらうね』

と、リンドウの妹を名乗るアリスという少女からの通信が響く。

ノアの表情を見る限り信頼に足る人らしい、と判断した一葉もその声に耳を傾ける。

『まず現状報告として悪いニュースが二つ、一つ目、パチャカマックと呼ばれるモンスターがこの世界の主要な町4か所に同時に出現しているためモールズのパチャカマックについてはひとまずあなたたちだけで対処してもらうように協会から言われました』

ノアの顔が青ざめる。

「4か所も…!?一体何が起きてるっていうの…」

『うん、確かに未だかつてないほどの以上な現象…それでもう一つの悪いニュースは、パスシティに出現したパチャカマックの下敷きになった紋章持ちが、そのまま、死んだ』

「……死んだ?」

『正確には、パチャカマックの足で潰された部位が、復活しなかったそう、つまり、あの怪物の攻撃で受けた傷は復活しないらしい、ってことみたい』

「それって、相当まずいんじゃ」

『どのみち何度も死んだら心が死ぬんだから一緒だよ、それより作戦の方なんだけど』

「うん、続けて」

アリスの言葉にリンドウが説明を重ねる。

「これから先の作戦だが、アドバルンに追いやるのも一つの手だがどうせアドバルンに追いやるってことは協会に追いやるってことと一緒だから、協会の方で防護装置を起動させるらしい、それまでの時間を稼いで欲しいってのが伝令だ、無論協会側の準備が整う前にどうにかできればそれで構わない」

ノアがそれに続く。

「…わかった、とりあえずここで食い止めないとまずいってことだね…」

一葉は覚悟を決めるための質問を一つだけ通信器の向こうのアリスに尋ねる。

「なぁ…アリス…パチャカマックの攻撃が俺らに通じるってことは…あいつは元々は…俺らとおんなじ…」

『さぁ、知らないな、でも、その可能性もなくはないのかもね、それが何か?』

「いや、わかった、俺は何をすればいい?」

『正直私もノアさんとお兄ちゃんだけのつもりだったからなぁ…お兄ちゃんは良い案浮かんだってさっき言ってたよね?』

「あぁ、下を見てもらえてたらわかるが、まだ市民が避難しきれてない、誘導は協会の人間がやっているから、逃げ遅れてたり閉じ込められてる人を助けてやって欲しい」

「了解しました行きますよ一葉先輩!」

再び結は一葉の手をつかんで瓦礫と化した建物へと跳躍した。


ポツンと残るノアとリンドウ。

「ありがとう、リンドウくん」

「ん、何がだ?」

「いちょーと結の二人のこと、戦闘からは遠ざけてくれたでしょ」

「いや…まぁ、ゴールド・ガンの友達だったみたいだし…」

「あーだからノアでいいってば」

「なんか、慣れなくってよ」

「まぁ任せるけど…とにかく、ありがとう」

「ど、どういたしまして」

間。

『良い雰囲気の所悪いけどご両人』

「「なっ!?」」

アリスが茶々を入れる。

『いや今更驚いてることに驚きだよ、パチャカマックから振動を感じた、来るよ、基本スペックは速くて攻撃も重いから、ノアちゃんが牽制、誘導しつつ隙を作ってお兄ちゃんが安全な場所で爆発、作戦はシンプルイズベストで』

「わかった!」

「行くぞ!攻撃を受けないように最大限注意してくれ!」

二人もまたパチャカマックに向かって跳躍する。


(さて、回復不可能とはいえ、お兄ちゃんたちは大丈夫だと信じよう)

一旦通信を切断し、一息つく少女は、アリスだ。

アリスは今、モールズ近郊にある自身の家の一室にいる。

何も置かれていない机の上には光で構成された立体のディスプレイがいくつも展開されている。

またそのそれぞれの画面にはアリスの力で生み出した端末を持っている者の視覚情報が表示されていれる。

アリスの持つ紋章は首の後ろ側から背中にかけて根を張るように存在している。

アリスは自身が作り出したイヤホンを介して、その端末を持つ者の見る景色をリアルタイムで自分の目の前に映し出すことや、端末を持つ者とコミュニケーションを取り合ったりすることのできる力を持っている。

その性質からアリスを中心にリアルタイムで作戦を立て、共有することが可能であるが、同時に多人数との交信を行うと体力の消耗が大きいことが欠点として挙げられる。

『アリス殿、このような状況だが、新たに何か情報はあるだろうか』

「あぁ、協会さん、今のところは4か所共に優勢です、うまく攻撃を誘導する係と攻撃を加える係に分かれることができています」

『そうか…この数の通信は体に堪えるだろうが、今しばらくお願いしたい』

「わかってます、余裕です」

『すまない、頼む』

プツッ。


「ふぅ~、ちょっとお茶お茶」

さっと冷蔵庫から麦茶を取り出してコップで飲み、またすぐディスプレイ監視に戻り異変や危機がないかチェックする。

(うん…なんとか大丈夫そうかな…)

と、視界の端に二人組が見える。

足取りがなんというか素人くさく、見ていて少し不安になるレベルだ。

「これノアさんのお付きだったっけか…」

現状パチャカマックと呼ばれる怪物は紋章持ちの回復の力、俗にいえばゾンビとしての機能を無効化している。

一般人はもちろん、戦闘に不慣れな紋章持ちも須らく一撃で即死な状況だ。

(確かに取り残された人達を通りまで運び出す役割は欲しい…特にモールズは大きな建物が多いからまだ残っている人が目立つし…でも)

恐らく一般市民の全てを戦闘圏外に避難させるのにかかる時間は、パチャカマックを撃退するのにかかる時間よりも遥かに長いだろう。

その意味では、どのみち戦闘からは逃げられないので、攻撃に参加してもらった方が良いかとも思ったが二人の危うげな足取りを見てなるほど邪魔になりそうだとアリスは素直に思う。

「あー、あー、聞こえる?いちょーくんに結ちゃん?」


『あー、あー、聞こえる?いちょーくんに結ちゃん?』

壊されたホテルのような建物の中を一部屋一部屋見て回る一葉と結の元にアリスからの通信が入る。

「あぁ、聞こえる!」

「アリスちゃんってかわいい名前だよね」

『名前はいいから…それで、どう?人は?』

「結構いるな、急なことだったし…ここ入る前に協会の人っぽい人に『とにかく下まで連れてきてくれたらこちらで避難させます』って言われたんだけど?」

『それで大丈夫、避難自体は協会に任せといて、それで注意事項、今はお兄ちゃんとノアさんが引きつけてるけど、万が一があるからなるべく窓のある場所では外の様子見ながら行動するように、それと攻撃が建物全体に来たり、そもそものしかかってきたりしそうになったらどこでもいいから飛び降りて』

「…飛び降り、ね?」

「どうしたユイ?いや、まぁ俺も嫌だけど…あいつの攻撃を受けたら死ぬけど自分で飛び降りる分には、あんまりよくはないんだろうけど、なんとかなる、ってことだろ?」

『そういうこと…でも、お願いだから、なるべく死なないで』

「うん、わかってる、ユイもな?」

「う、ん」

「…?ユイ…?」

「いえっ、大丈夫です!ってあそこ、今あそこから声が!」

「っし行くぞ!」

『お願いします!』

プツッ。


「はぁ…お兄ちゃんや、皆が、無事に戻ってきますように…」

アリスはただ、祈りながらモニタリングするしかない。

その能力ゆえに。

そのことを歯がゆく思いながら、それでも通信を続ける。

「全員に緊急連絡!パチャカマックはダメージが一定量を超えると身の危険を感じて激しく咆哮する模様!連続で攻撃する際には十分気を付けて……」

ただ、指示を続ける。

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