六話
まるで心に潜む悪魔が耽溺しているようにして離さないこのノートを拾って1日が経とうとするが、俺は刻々と時間が進むたびに、このノートへの中毒が体を巡るのがわかる。ノートをめくり巡る。何が癖になるのかが全く説明できない。文字に触れ、妙な感触だってそれだけのものだし、そもそもこの感触による効果だって神秘的ではあっても数が限られていて、すぐに堪能し終えた。
このノートは一体なんなんだろう、哲学者気分で思考錯誤する俺の前に、ギン色が現れた。現れたと言っても、互いに存在を認識したのでなく、ただ、たまたま眼鏡をかけていて視力は人並みだった俺が、遠目でその銀色の髪を見かけただけだった。
ギン色が俺の如く孤独愛好主義なはずがなく、もちろん学校にいるのだから隣には友人らと思わしき姿があった。しかしその友人らの様子は全員が全員、どこかおかしい。
自信喪失、躁鬱、不感症らしきヤツに不快そうなヤツ、癇癪持ち患者もちらほら。ギン色を含めた数少ないヤツらだけが冷静に彼らを見ていた。人間関係が苦痛な俺にとって、あそこは阿鼻叫喚に違いないし、彼女の本心は如何か知らんが、彼女にとっても気分は悪かろう。
「……」
彼女はただ強く、マイナスの渦中を見ていた。どうするのかね、と俺は他人事を嗤っているが、しかしギン色はただ彼女たちを宥めていた。普通に、何か特別な事をする訳でも、焦って彼らを刺激する様な事をする訳でもなかった。ただ、普通。
何だ退屈だなぁ。最初こそそう思ったが、ただ、俺まで気分が悪くなった。
午後の授業はサボった。後に学校側が正式に、今日の事件の発生率を考慮して早期帰宅を決行したらしい。よって幸運にも、退学覚悟のサボタージュは教師たちの目に留まることはなかった。




