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10/1スケール勇者  作者: 分子
小人の世界パリトット編
18/20

決着&エピローグ~1/10スケール花嫁~

ドカッ


車に乗った淳はとりあえず、アクセルを踏み込んで巨大化した魔王を撥ねた。

「く…こ、これしきの事で…」

さすが魔王だ。一度車で撥ねたくらいじゃ死なない。

淳はバックにギアを入れ、距離を取ると、もう一度魔王めがけてアクセルを踏み込む。


ドカッ


もう一度魔王を撥ねる。

まだ動いてる。

淳はそのままバックして、魔王を轢き直す。

まだ死んでない。

アクセルを踏み、バックし、を繰り返す。


6回ほど轢き直した所で、魔王は動かなくなった。

念のため、もう2回ほど魔王を轢いてから、淳は金属バットを片手に車を降りた。

そして、もう動いてない魔王をこれでもかとダメ押しに滅多打ちにした。


「あー、こりゃ完全に死んでますね。生命反応が無いです。」

しばらく殴り続けてた後、ソニアが魔法で生きてるかどうかチェックしてくれた。


これで魔王は滅びた。

この世界の人類は魔族の脅威から救われたのだ。





淳はアメリア達を連れてパリトットへと帰還した。

人々は勇者の帰還を歓迎し、祝賀会を開いた。


だが、そんな中、アメリア元女王と、ソニア元宰相に対する国民たちの態度は冷たかった。

彼女らのお陰で勇者が召喚され、魔族に打ち勝つ事ができたとはいえ、彼女らの無計画さのせいで多くの国民が命を落としたのだ。無理もない事だった。

今やパリトットはアントニオ新首相の元、新たな支配体制が敷かれ、そこには政治家として無能なアメリアやソニアの居場所は無かった。

パリトットは今や共和制となったのだ。


「やれやれ。ま、しょーがないか。あんな無茶やっちゃ、当然よね。」

「そうじゃな。妾達は民の事をあまりにも考えていなさ過ぎた。」

「そんな…アメリア様は頑張られました。」

「そうです。自分自身を犠牲にしてまで…」

「ロサナ…エマ…ありがとう。だがわかっておるのじゃ。妾は女王の器ではない。あの時…」

アメリアは遠い目をする。

「あの時、淳が元の世界に帰ろうとした時。内心ではそれで確かにこの国がひとまず救われると判っていても、帰って欲しくないと思うてしもうた。例えこの国を滅ぼしてでも、淳と一緒にいたいと思うてしもうた。…女王失格じゃよ。」

「アメリア…」

淳はポケットをまさぐりながら、アメリアに語りかける。

「僕はやっぱり、この小人の世界じゃ生きられない。ここにはあったかいお風呂もあったかい布団も、人目を気にせずできるトイレも無い。食糧だって、物凄い量を消費してしまうから、ここに居ると皆に迷惑をかけてしまう。」

アメリアは辛そうな表情をする。

「…だから、僕はやっぱり、元の世界に帰ることにする。もう魔族の脅威は無くなったんだ。僕がいなくても、この世界は、この国は、もう大丈夫だ。」

アメリアはとうとう涙を流す。

「…わかっておる。元々、我らは世界もサイズも違い過ぎたのじゃ。一緒になどなれるわけが…」


その指に、おおきな輪っかがはめられる。

「…だから、今度は君に、僕の世界に来て欲しい。」

淳は、キーホルダーのチェーンをちぎって作った結婚指輪を、アメリアの指にはめる。

1/10サイズのアメリアの指には、まだ大きかったのか、ブカブカだ。

だが、アメリアはその安い指輪代わりの輪っかを握り締め、崩れるほどの笑顔で嬉し涙をこぼした。

「淳……!!」

「僕の、10/1スケールの世界で、夫婦になろう!!」


二人の背に、パッっと花火が上がった。

それはパリトットの、戦勝を祝した花火であったが、まるで二人の将来を祝っているかのように思えた。


「いいわね、それ!!私もそっちの世界に興味あったし、連れてってよ!!」

ソニアが食いついた。

「アメリア様がそちらの世界に行くと言うのなら、私もお供します!!あの車とかいう乗り物にも興味ありますし!!」

ロサナも同行を申し出た。

「それなら、私も行かねばなりませんね!私は、アメリア様より勇者様のお世話を申しつかっておりますので!」

エマも同行を申し出た。

「皆…」


「よーし、それじゃ行くわよ!!」

ソニアが異世界逆召喚の魔法を唱える。

淳、アメリア、ソニア、ロサナ、エマは既に車に乗っている。

淳は車をゆっくりと発進させる。

その車を、ソニアの唱えた魔法陣が覆った。

そして、小人の世界から勇者達は消え去った。





淳の両親は無茶苦茶驚いていた。

息子を乗せた車が、突如目の前で消滅し、かと思えば、半日後にべこべこになって戻って来たのだ。

色々聞きたい事があったが、そんなことより、淳が小さな人形を取り出し、それを嫁として紹介したのには、さすがに息子の正気を疑った。

だが、その人形がまるで生きているように動いたばかりか、突如脳内にその人形の話している言葉が聞こえた時は、あまりの事態に気を失った。


淳は両親が落ち着いてから、今まであった事を話した。

最初は半信半疑だった。というか、息子か自分たちの頭がおかしくなったのかと思っていたが、ソニアの魔法によって、何とか理解してもらえた。


「けど、結婚って…そんな小さな体じゃ、子供も作れないでしょう?もっと考えた方が…」

「母さん。父さん。愛に年の差や国の差や民族の差や性の差なんて無いだろ?…だったら、体格の差だって乗り越えられるさ。」

何とか両親も説得し、二人の婚約も認めてもらえた。


淳の兄はそんな二人を見て気色悪そうにしていたが、ソニアの妖艶な姿に魅入られ、ソニアもまた理想の男を見つけたといい、いつの間にかラブラブカップルになっていた。


ソニアはこちらの医学に特に興味を示した。ソニアの話では、ナントカ細胞やら体外受精やらの技術と、魔法を組み合わせれば、これだけの体格差があっても子供を作る事が可能だと言う。

どうやら両親に孫の顔を見せる事ができそうで安心した。


小人達の存在は身内だけの秘密にしている。

戸籍上は淳は未婚のままだ。

だがその左手薬指には、アメリアがせっせとこしらえた婚約指輪が嵌められている。


淳は愛する妻と、小さなスケールの女の子達と、美少女フィギュアに囲まれ、今日も幸せだった。






なお、小人の世界の魔魚軍は、結局何も活躍できないまま、魔王がいなくなってしょーがないので、そのまま普通の魚として生きていくことにしたらしい。

初の小説です。いかがでしたでしょうか?

「判りやすい主人公無双」をテーマに、あまり後先考えずに思いつくまま筆を進めてきましたが、何とか無事まとめる事ができました。

ご意見ご感想等いただければ幸いです。

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