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10/1スケール勇者  作者: 分子
小人の世界パリトット編
15/20

おとなげない勇者無双

「あ…あいつは……」

魔鳥将ブラニックスは、巨大な箱の中から現れた人影を見るや、頭に血が昇った。

「デスベロスの、カタキ――!!」

それは異世界へと帰ったハズの勇者であった。

「全軍、攻撃目標変更!あいつを…勇者を集中攻撃しろ!!特に、頭と目を重点的に狙え!!」


魔鳥将ブラニックスは、魔族軍の中でも、唯一自分達魔鳥軍だけは勇者に勝てる可能性があると確信していた。

地を這う魔獣や魔蟲達では、どうあがいても勇者に致命傷を与える事などできない。踏み潰されるのがオチだ。

魔魚軍に至っては、そもそも海に入ってもらわないと攻撃しようがない。

だが、空を飛ぶ魔鳥軍は、人間の弱点が集中している頭部を直接攻撃する事ができる。

特に眼球を潰せば一気に形勢は逆転する。

勿論、勇者もそうさせぬよう、手で目をガードするだろう。だが、そうなれば攻撃はできない。

魔鳥軍は安全に、皮膚や髪の毛を少しづつ啄み、ジリジリとダメージを与えていく事ができるのだ。

何羽かは叩き落されるだろうが、数に任せて攻撃をし続け、長期戦に持ち込めば、魔鳥軍なら、あの巨大な勇者に勝てる!!!

魔鳥軍は一斉に勇者へと襲いかかった!


「そう来ると―――思っていたよ!!!」

淳は車の名からフルフェイスヘルメットを取り出し、装着した。

バイク好きの兄から黙って拝借してきた物である。

魔鳥将ブラニックスの考えは正しかった。

だからこそ、勇者は、吹田淳はあの時、あのまま魔王城へ侵攻するのを躊躇ったのだ。

空を飛ぶ魔鳥軍相手には、高さという圧倒的なイニシアチブが通用しない。

もし逃げられない状況で魔鳥軍に襲われたら、淳は本当に殺されてしまうかもしれない。

だからこそ、十分な対策をする為、彼は一旦元の世界に帰るという選択をしたのだ。

真の狙いを魔族軍に悟られぬよう、皆を騙して、臆病者のフリをしてまで。


「な…なにぃ??!!」

次々と魔鳥達がヘルメットに追突し、自身のくちばしに体がめり込んで潰れてゆく。

「ば、馬鹿な!!こちらの攻撃が通用しないだと?!いや、そればかりか、魔鳥達が次々と…」


「今度はこっちの番だ!!」

淳は今度は車の中から凍殺タイプの殺虫剤を取り出し、魔鳥軍に向けて噴射した。

「ぐぁあああ!!は、羽が凍って飛べな…」

魔鳥達は次々と地面に落下してゆき、トドメに踏み潰される。


「いかん!退避!全軍退避!空へ離脱せよ!!」

ブラニックスはすっかり血の気が引いて復讐心はどこかへ消え失せ、とにかく逃げ出そうとした。

だがもう遅い。

「逃がすかよ!!!」

淳は今度は虫取り網を取り出し、逃げ出そうとする魔鳥達を次々と虫取り網で捕まえてゆく。

「ぎゃあああ!」

「な、なにだこの網は?!」

「く、くそ、逃げられん!!!」

ある程度虫取り網の中に魔鳥達を捕まえると、淳は今度はフライパンを取り出し、網の中でもがく魔鳥達を叩き潰していく。

「うぎゃあ!!」

「ぶべら!!」


虫取り網より高い場所に避難した魔鳥達に対しては、母の部屋より拝借した全身用鏡を取り出し、太陽の光を反射させた。

「ぐああ!」

「目がくらんで飛べな…!!」

魔鳥達は次々に落っこちてゆき、一匹残らず潰された。


「わ…我らは間違えていた……こんなやつに勝てるわけがない……我らこそ、降伏すべきだったのだ…」

地へと落下してゆく魔鳥将ブラニックスが最期に見たのは、巨大な棍棒を自分めがけてフルスイングしようとしている勇者の姿だった。


カキーン!!


淳は元野球部の兄から黙って拝借した金属バットで一番大きな魔鳥を打った。

当たり所が良かったのだろう。

「ホームランだな。」

運動があまり得意でない淳でも、その打球がイイ感じに飛んでいったのは打った感触で判った。


こうしてパリトットは魔鳥軍を撃退した。

今度は以前のように一匹も見逃すことなく、しっかり全滅させた。



魔鳥軍を全滅させた淳は、冷蔵庫の中から回収してきた大量の食材を降ろすと、パリトットの住民たちに配った。

「これだけあれば、当面は食料の心配をする必要は無いよ。」


「勇者殿!勇者殿!!」

食料を配っていると、女王親衛隊隊長の騎士ロサナが手を振って駆けつけた。何か知らせたい事があるようだ。

「ロサナじゃないか。無事だったんだね!アメリア達は?」

「それが…アメリア様とソニア様は魔族達に連れられてキュスブレフの魔王城へ連れて行かれてしまったのです!!」

「何だって?!それは本当かい?!」

「ソニア様はまぁどうでもいいとして、アメリア様はパリトットの魔族への永久服従を誓う為、魔王子コゾーマと結婚させられようとしています!!アメリア様の貞操のピンチです!!このままでは魔物の子種を植え付けられて出産アクメを迎えさせられてしまいます!!」

「な…何だって?!そんな事させてなるものか!!ロサナ!!案内してくれ!!」

「承知!!」

淳はロサナを掴んで車内のフロントガラス付近に置くと、魔族達の国、キュスブレフへ向けて車を発進させた。


「アメリアの…アメリアの膜は僕が守る!!」

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