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10/1スケール勇者  作者: 分子
小人の世界パリトット編
14/20

オーバーキルの準備

吹田淳は気がつくと、元の世界に戻っていた。

見慣れた日本の街並み。

自分と同じ大きさの人々。

視界を埋めるビル群。


淳はポケットをまさぐると、中から綺麗な手ぬぐいを取り出す。

汚れた身体を拭くのに使った、異世界パリトット王城のカーテンである。

「…あれは夢なんかじゃない。」

そう確かめると、淳は走り出した。


家に帰ると、両親に激怒された。

「あんた!!昨日一日どこ行ってたの!!何の連絡もしないで!!携帯も通じないし、どんだけ心配したか…」

「大丈夫か?何かの事件に巻き込まれたりとかしてないか?」

「ごめん、父さん、母さん。ちょっと色々あって…携帯は、電源切れてたのに気付かなくてさ……。でも、大丈夫だから。心配しないで。」

両親は一先ず落ち着いたようだ。

とりあえず、心配したほど大ごとになってなくて良かった。

「まったく…お前ももう高校生だから色々あるんだろうがな、両親に心配をかけるような事はしてはいかん。…ちょっと話があるからこっちに来なさい。」

まずい。こんなところで時間を取られるわけにはいかない。

「…ゴメン、父さん。今は時間が無いんだ。僕にはどうしてもやらなきゃいけないことがあるんだ。帰ってきたら、説教でも何でも必ず受けるから、どうか今は……!」

「何を言ってるの?まず父さんと母さんに話しなさい!!」

「…いや、いいんだ、母さん。今はあの子の好きにさせてやろう。」

「アナタまで何を言ってるの?」

「あの子の目……あれは、何か責任を果たそうとする男の目だ。…あの子があんな目をする日が来るとは……。」


淳はドタドタと階段を駆けがり、自室に入ると、タンスや押し入れをひっくり返す。

「あった!これと…これと…これも!!」

使えそうな物を手当たり次第に大きな旅行カバンに詰め込んでいく。


次に淳は兄の部屋に入る。

「悪い。邪魔するよ!」

兄は不在だった。丁度いい。

兄の野球部時代の金属バットとボールと、趣味のバイク用ヘルメットを拝借する。

母の部屋からは全身用鏡を拝借する。

その他、家中から使えそうなものをかき集める。


これだけじゃ…これだけじゃ足りない…!!

淳は自転車に飛び乗って近くのスーパーまで行くと、ATMで金を下ろし、使えそうな物を片っ端から買っていった。

そしてそれらを担いで戻ると、用意していた荷物と一緒に車の中に押し込む。


「父さん!車の鍵貸して!!」

「い、いや、お前17歳だし、免許持ってないだろ。」

「大丈夫。駐車場でほんの少し動かすだけだから!公道には絶対に出ないから!!」

「そ、それならいいが、車の運転の仕方はわかるのか?」

「大丈夫!ウチAT車だろ?操作はゲームみたいなもんだよ!」


鍵を受け取り、荷物を全て積み終わった所で、改めて必要な物を思い出した。

淳は自室に戻り、キーホルダーのチェーンを一つ外してポケットに入れる。

「おっと!食料も必要だ!!」

淳は冷蔵庫を開けると、中の食べ物を片っ端から袋の中に突っ込んでいき、それも車の中に押し込む。


「お、おい…何するつもりなんだ…?旅行にでもいくつもりか?」

「うん。ちょっと、異世界までね。大丈夫、晩御飯までには帰ってくるから!!」


淳は車に乗り込み、エンジンをかける。

そして、携帯を取り出す。


初めて小人の世界に飛ばされた時、淳の着ていた物だけでなく、フィギュアの入った買い物袋なども一緒に飛ばされた。

だが、淳の立っていた地面までは飛ばされなかった。


どこまでが召喚対象となるのか。どこからが召喚対象ではなくなるのか。

おそらく、淳と接触しているもので、淳と一緒に動いているもの。それが召喚対象となるはず。


淳はブレーキペダルを踏みながらギアをDに入れ、サイドブレーキを外し、ゆっくりとブレーキペダルから足を放す。

AT車はそれだけで動き出す。

淳は車が動いたのを確認してから、携帯のメールを開いた。

例の、異世界へと通じるスパムメールを。


「皆……無事でいてくれ……!!」

そう念じて異世界への扉をクリックした。



直後、車ごと落下する。



衝撃に、少し頭をぶつけた。

「いてててて…」

どうやら上手くいったようだ。淳の狙いどおり、車ごと異世界へ来れた。

フロントガラス越しに、外の世界を見る。

先程までの住宅街はそこにはなく、低い山、低い空、そしてミニチュアのようなお城がそこにはあった。


パリトットのお城は、今まさに魔鳥達によって襲われていた。

「ひでえ…パリトットは降伏したハズじゃなかったのかよ…」

改めて、魔族は滅ぼさなければならない存在だという思いを強める。

もう、何も遠慮する必要はない。

淳は持ってきた荷物を片手に、クルマのドアを開けた。


「ただいま。悪かったな。色々と準備する必要があったんだ。でも、もう大丈夫だ。今度は魔族を……本気でぶっ潰す!!!」

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