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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-099 落とし穴の効果


 落とし穴に枝を渡して枯れ葉を乗せる。落とし穴に沿って張ったロープが目印だ。っそうでもしないと、俺が落ちそうなくらい上手く擬装ができている。

 最後に、近くの茂みを利用してカモフラージュネットを張る。これで完成だけど、っシグちゃん達が枝に乗るのはもう少し先になりそうだな。


 小さな焚き火を作ってお茶を沸かしながら、パイプを楽しむ。

 まだ、シグちゃん達が帰らないけど、どこまで探しに行ったんだろう? あまり遠くに行かないように言っとけば良かったかも……。


 すでに昼を過ぎているから、簡単なスープを作ってシグちゃん達の帰りを待っていると、耳の良いレイナスが3人の帰りに気付いたようだ。


「遅くなりました。でも、ちゃんと見つけてきましたよ。本当に大きいです!」

「距離はここからそれほど遠くはないです。昼食を済ませたら狩をしましょう」


 そんな報告を聞きながら、ファーちゃんがスープを配ってくれた。ビスケットのような携帯食料を齧りながらスープを頂く。


「方向としては申し分ないな。問題はどうやって得物の注意を引くかだ」

「囮ということになるんでしょうね」

「なら、俺だな。リュウイでは追いつかれそうだ」


 レイナスが志願してくれたけど、向こうが気付いたらすぐに逃げてほしいところだ。


「俺達は、あの網の中で良いのか?」

「バジルでも気付かなかったぐらいですから、あの中なら安心できます。俺達の槍が刺さったところで、止めを刺してください」


 俺の言葉に、ロクスさんとサリーさんが顔を見合わせて頷いている。

 シグちゃん達には上で注意を引いてもらおう。その後は、クロスボウで背を狙ってもらえば良い。上手く背骨に当ればいくら大きなイネガルでも動けなくなってしまうだろう。


 食事が終わったところで、シグちゃん達がハーネスを付けて枝に上って行った。ロープの長さを調節すれば、枝から落ちても地面には届かない。空中に浮いた状態になってもクロスボウが使えるのはピグレムで確認済みだ。


「ウーメラはベルトに挟んでおくけど、投げ槍はここに置いても良いよな?」

「その方が良いな。でないと、木に引っかかりそうだ。挑発したところで全力で走って来いよ」

「だいじょうぶ。そんなに心配するな」


 太い幹の後ろに、俺とレイナスの投げ槍を立て掛けた。一人二本を使うことになるんだが、最初は俺が単独で使うことになるのかな。

 

 準備が出来たことを確認したところで、レイナスが森の中に消えた。

 ネコ族の勘の良さと敏捷性が試されそうだ。

 パイプに火を点けてウーメラを片手に投げ槍を手元に突き刺した。

 ゆっくりとパイプを楽しんだところで、槍の石付部分のくぼみにウーメラの突起を合わせて利き手で持つ。

 これで、数秒も間をおかずに槍を投擲できる。

 枝に腰を下ろしたシグちゃん達もすでにボルトをセットしたようだ。まだセーフティは解除していないだろうけどね。


「帰ってきたにゃ!」

 ファーちゃんの指さす方向にレイナスが見える。大慌てでこっちに来るところを見ると、イネガルに石でも投げたんだろうか?

 カモフラージュネットで機会をうかがう2人に腕を上げて知らせると、了解を知らせてくれたのだろう、ネットの隙間から腕が伸びた。


 太い幹の前に仁王立ちになって槍を構える。

 レイナスが俺の隣を過ぎたと同時に、藪が吹き飛んで巨大なイネガルが現れた。

 

ウオォォ!

 雄叫びを上げながらウーメラを振り切る。

 槍の柄が上下に振動しながらイネガル目掛けて真直ぐに飛んで行った。

 

 2本目の投げ槍をレイナスから受け取った時には、すでに俺の目の前近くだ。

 ドン! と崩れるようにイネガルの頭が下がる。

 すかさず投げた2本の槍イネガルの首筋に突き刺さった。


 グオォォン!!

 イネガルの叫びが森にこだました時、背中に2本のボルトが刺さる。

 雄叫びを上げながらカモフラージュネットを跳ね上げたロクスさん達が長剣をかざして突っ込んできた。


 背中の長剣を引き抜いてイネガルの頭に振り下ろす時に、まるで合わせたようにレイナスの投げ槍とロクスさん達の長剣が同時に突き立った。


 ドサリと音を立ててイネガルの頭が地に落ちる。

 まだ息があるのを見たロクスさんが、長剣で止めを刺した。


「いやぁ、でかいな。こんなイネガルは初めてだ」

「ほんとね。私達だけではどうしようも無かったでしょうね」

「なるほど、イリス姉さんが褒めるわけだ。一瞬の狩に1日の準備をする連中だとは聞いていたが……」


 感心した目で俺達を見てるけど、先ずはシグちゃん達を下ろさなくてはならない。

 どうにか下ろしたところで、細めの木を切り出してソリを作り始めた。

 イネガルの臓物をロクスさんが取り出しているから、形になったところでソリ積んで運び出そう。


 どう見ても200kgを越えてる感じがするけど、ちゃんと運べるんだろうか? 心配になって来た。

 6人で力を合わせてどうにかソリに乗せると、全員で声を上げながら曳き始めた。なんか運動会の綱引きを思い出すな。

 猟師さん達に綱引きを教えてあげようか、なんて考えながらもひたすらソリを曳く。


 数百m程離れた時だ。ファーちゃんがしきりに後ろを振り返る。


「どうやら、ガトルが来たようだ。今夜は間違いなく来るぞ」

「これだけの獲物だから。だが、6人いるんだ何とかなるだろう」


 ロクスさんは楽天家だな。は三節棍がカゴに入ってるから、十分に暴れられそうだ。


 どうにか第一広場の縁に着いた時には、日が落ちかけていた。

 急いで焚き木を集め、野営の準備をする。大きな藪を探し当て、藪を背にして焚き火を作った。


 なるべく早く食事を済ませる。腹は減っているけど狩の途中だから腹一杯に食べるのができないのが辛いところだ。

 武器を傍に置いて、お茶を頂くのも俺達を追ってくる連中が何時襲ってくるか分からないからに他ならない。


「まだ、遠くだな。取り巻いているみたいだからかなりの数だぞ」

「ロクスさん。サリーさんと俺の後ろを頼みます。ガトルなら、長剣よりもこっちの方が戦いやすいですから。それと、槍1本分、後ろに下がってください。攻撃半径が極めて大きいですから、

と前衛をお願いします。シグちゃん達は後ろでクロスボウを使いますから、俺達の後ろはサリーさんに任せますよ」

「俺は、ファー達の前で良いな。だいじょうぶだ。ちゃんとヌンチャクを持ってきたぞ」


 こんな感じです、と焚き火の傍に配置を描く。


「リュウイと俺達2人で三角に陣取るんだな。間が空いているから、俺達を抜けたガトルはレイナスの餌食ということか」

「まぁ、そんな感じです。レイナスが長剣を持った想定で距離を取ってください。俺の場合は槍を持ってる想定で」


 俺達の武器の攻撃範囲は極めて広い。あらかじめ注意しておいた方が良いだろう。当たったら怪我では済まなくなりそうだ。


 パイプを咥えながら、襲ってくるのをひたすら待つ。

 もう少し距離が開いていれば、交代しながら寝ることもできるのだが、たまに森の奥で目が光るのが見える。距離は200mも離れていないだろう。


「少し、気配が変わったな」

「低い声で唸ってるにゃ」


 レイナス達の会話を聞いて、焚き火の傍に腰を下ろしたままで足を動かし、両手を何度も握ってみる。

 前回は、三節棍を持った手が離れなくなったからな。少しでも準備運動をしておけば防げるかもしれない。


「近付いて来るぞ。そろそろ準備だ。ファー達はイネガルの後ろにいるんだぞ」

「分かったにゃ。でも、ちゃんとメイスももってるにゃ」

 接近戦ならメイスが使える。シグちゃん達も良いハンターに育ってるからね。

 

 俺達は焚き火を起点にして3方向に立った。三節棍の真ん中を持って立っている俺を不思議そうな表情でロクスが見ている。

 ヌンチャクはイリスさんの仲間が使っているはずだが、これは初めて見る武器だからね。


 ゆっくりとガトルが近づいてくる。頃合いを見計らって一斉に襲い掛かってくるのが奴らの習性だ。

 すでに【アクセル】は全員に掛けてある。

 2割増しの身体機能上昇効果ならば、ガトルの素早さに少しは追従できるからな。


 ウオオオォォン!!

 遠吠えが闇に響くと同時にガトルの群れが押し寄せてきた。

 一歩足を踏み出した勢いを使って体を捻じるようにして三節棍を振る。その反動を利用して三節棍を回転させると、ボク! と音を立ててガトルがその場にうずくまる。

 杖なら、そこで回転を止められてしまうが、節があるからそのまま振り抜くことができる。

 右左にクルクルと両手で回しながらガトルを狩り取って行った。


 少しガトルの数が減ってくると、周囲の様子を見る余裕ができる。

 ロクスとサリーの周りにガトルが何頭も倒れている。レイナスもがんばってくれたようだ。レイナスの後ろには1頭も倒れていないぞ。

 シグちゃん達は、まだボルトをファーちゃんと交互に放っている。2人とも名人級だからな。無駄なボルトは1本も無いに違いない。


「あらかた終わったようだな……」

 ロクスさんの言葉に周囲を見渡すと、俺達を少しずつ遠巻きにしながらガトルが距離を取り始めている。

 群れの半数以上を刈りとられては、ガトル達の狩も苦労することだろう。


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