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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-070 二足歩行のワニ?

 次の日の昼下がり。漁師達数人掛かりでサルマンさんの家から織機が運ばれてきた。

 頑張れよ! と言って帰って行ったが、お婆ちゃんの家の織機とは少し形が変わってるな。長さが短い気がするぞ。

 おさが3本付いていた。手前の板は座るように少し幅広だな。丸い棒の下に巻き取る為の太い棒があって、逆に回らないような木製のラチェット機構が付いている。一番奥の太い棒に経糸を巻き付けるようだ。糸の上下機構は真ん中の橋のようになった柱の横木から滑車と重り、それに足元の踏板で上下が出来るようだ。筬も真ん中の柱から伸びた左右の横木から吊り下げられており、横糸を叩いた後で奥にいどうするように木製のカラクリ仕掛けがあった。


 「どうだ? 俺は見たことはあるが、どうやって織るかは知らないんだ」

 「私も、近所のお婆ちゃんの姿を見たのは小さいころにゃ……」


 実物を見て、レイナス達は戸惑っているようだ。

 シグちゃんが何も言わないのは、途方に暮れてるのかな?


 「俺も、そんなに詳しくはないよ。だけど、基本的な動きは分かる。奥の丸太に経糸を巻くんだ。その糸を1本ずつこの2つの枠に交互に通した後に、この横に動く枠に通して、この下にある丸太に結ぶんだ。

 この板を足で踏むと、2つの枠の片方が上に動く。そしたら、2つの糸の列の間に、この糸巻を通して、この枠で叩いて密着させるんだ。トントン、カラリって感じだな」


 「そうにゃ! お婆ちゃんが、そう言っていたにゃ」

 

 ファーちゃんが思い出したように目を輝かせてる。きっと機織りをしていたお婆ちゃんの傍で、色々と話を聞いていたんだろうな。


 「2つ課題があるな。1つはこの上下に動く枠なんだが、これは綿織用の物だ。俺達が作る布の経糸は1,200本だぞ。この隙間が600個以上無いとダメなんだ。残りの1つが、この経糸を一定の力で引っ張る仕掛けなんだけど……」

 「作ればいいさ。この横に動く枠よりも縦に動く枠の方が幅が広いぞ。細い針金で出来るんじゃないか?」

 経糸を上下させるのは、簡単に見えるけど糸を交互に上げ下げする必要がある。まあ、時間はありそうだから、ゆっくりとレイナスと考えてみよう。

 後は、の中の糸車に巻き取る横糸だな。これは、釣り糸よりも細い感じにファーちゃん達に巻き取ってもらおう。その為の繭は用意してあるからな。

 

 雑貨屋で木綿糸を何個か買い込んで織り機にセットしながらどのように織れるのかを確認する。そんな事をやっている俺達を見ながらシグちゃん達がお湯の中で繭を広げていた。

 今日干せば、3日もせずに糸を紡げるだろう。


 10日程過ぎたところで、横糸用の少し細目の糸が出来た。繭は全て使い切ったから、秋に再び集めることになるだろう。先ずはちゃんと織機を動かして布が織れることを確認せねばなるまい。

 あれほど悩んでいた経糸をどうやってピンと張るかは、経糸を巻きつける丸太の重りを利用することが分かったし。経糸を交互に上げる方法は、細い銅線を使うことにした。先端をUの字に折り曲げた針金を何本も並べ。枠からの長さを揃えるのは、テーブルで揃えたところで接着剤を塗り両側から木の枠で固定した。横幅は少し広がってしまったがおさで揃えるから問題はないだろう。


 「後は筬だけだな」

 「ああ、何とかなりそうだ。だけど、かなり難しい注文だから、しばらく掛かるかもしれないな」


 そんな話を昼食後にしていると、シグちゃんが焼肉の注文を出してきた。

 しばらく本業をさぼってたな……。レイナスと顔を見合わせて互いに頷く。


 「行ってくるぞ!」

 「ああ、なるべく美味そうなのが良いな。確かにしばらく食べてない」

 

 残ったお茶を一息に飲み込んで、ギルドに向かう。レイナスは武器を研ぎ始めるようだし、シグちゃん達は雑貨屋に用があるみたいだな。

 ギルドの依頼書を眺めて草食獣の依頼書を探していると、ポンっと肩を叩かれた。振り返った先にいたのはレビトさんだった。


 「まだ依頼書を決めてないなら、ちょっと手伝ってくれない?」

 その言葉に、レビトさんの肩越しに奥を見ると、ローエルさん達が片手を上げて俺に挨拶してくれた。

 ローエルさん達は、俺達よりも遥かに難易度の高い狩りをするんだが、俺達を誘ってくれるということは比較的難易度は低いのだが、人数が必要となる狩りってことだろう。

 「返事は聞いてからで、良いですか?」

 「付いてきて」と笑顔で答えてくれた。


 ローエルさん達のテーブルに行くと、隣のテーブルから椅子を持ってきて座り込んだ。

 「お話があるとか?」

 「しばらく見てなかったが、また何か始めたようだな。忙しくなければ、手伝ってほしい。少し面倒な奴が東からやってきた。サラマンドと言うんだが……」

 

 ローエルさんの話によると、どうやら2本足で歩くワニって感じだな。帰ったら図鑑で良く見てみよう。そいつの目撃例が2度あったそうだ。どうやら2匹以上と言うことだが、ワニと同じようにかなり皮が固いと言っていた。


 「通常の弓は効かん。至近距離で投槍を使って狩るのだが、相手が複数となるとかなり手こずる。それに瞬発力があるからあまり近付くのは問題だ。その牙はガトルより鋭く口も大きいんだ」

 「お前達は、ウーメラの考案者だ。他のハンターよりは心強い」

 

 そう言って、ローエルさんの話に、腰にヌンチャクを挟んだ若いネコ族の青年が追加する。問題は、狩りの対象が俺達の狩りのレベルに合うかどうかだな。確かにウーメラで投槍は30m近く投げられるけど、下手をしたら足手まといになりそうな気がするぞ。


 「お話は分かりました。ですが、仲間の話も聞いてみないと、俺一存という訳には行きません」

 「ああ、返事は明日の昼で良い。もし行けるならば、準備をして来てくれ。お前がダメなときは王都からハンターを呼ぶつもりだ」

 

 それはローエルさんとしては避けたい事だろうな。手助けしてやりたい事は確かだが、返事は明日にしよう。

 ローエルさんに別れを告げて、急いで番屋に駈け出した。


 番屋の中ではレイナスがのんびりと片手剣を研いでいる。シグちゃん達はお茶を飲みながら魔法の袋の中身を確認している。


 「どうだった?」

 俺を見るなりレイナスが砥石を置いて俺に顔を向ける。シグちゃん達も身を乗り出してきたぞ。


 「ああ、ギルドでローエルさんに狩りの手伝いを頼まれたんだが……。獲物はサラマンドと言っていたぞ。2匹以上いるらしい」

 「サラマンドだって? ファー、聞いたことがあるか」

  

 パラパラと図鑑をめくっていたシグちゃんの手が止まる。

 「これですね。身長は8D(2.4m)体重は人間の2倍はあるそうです。俊敏で、その表皮は矢を跳ね返すとあります」

 テーブルにシグちゃんが図鑑を広げてくれた。


 「どうやって倒すんだ?」

 レイナスがパイプに火を点けて俺の方に体を向けた。

 「槍を使うらしい。俺達が例の槍を使えるという事が、誘われた理由だと思うぞ」

 「投槍を使うのか。なら、良いかも知れないな。ファー達のボルトも強力だ」

 「青の獲物です。私達で狩れるでしょうか?」

 「だいじょうぶにゃ。クロスボウは強力にゃ!」


 ファーちゃんの言葉に俺達は顔を合わせて頷いた。

 「やるか?」

 「ああ、やろう! で、リュウイの作戦は?」

 「たぶんローエルさんが立ててくれるだろうけど、シグちゃん達がクロスボウ、俺達が投槍でいいんじゃないか。だが、投げてしまえばそれで終わりだ。レイナスも片手剣を持って行けよ」


 俺達はそれぞれ分担して狩りの準備を進める。

 非常食はシグちゃん達が買出しに行って、俺がボルト、レイナスが投槍の穂先を研ぐ。ボルトはだいぶ数が減っているな。12本入れてあったはずだが、今では7、8本だ。外したボルトは回収しているんだろうけど、それでも見つからないものもあったんだな。

 「レイナス。ボルトを作らないとならないぞ」

 「そうだな。確かに少ない。前にモグロンド狩りをした時に外したヤジリが残ってる。数本だが今夜作ってやるか」

 

 2本でも多いほうが良いに決まってる。レイナスは器用だから良いものが作れるだろう。背負いカゴに天幕用の布と、野営用の毛布を2枚入れると。レイナスがその上にロープの束を入れる。

 「こんなものか?」

 「後はこれだな」そう言って、ウーメラを2本カゴに入れた。これが無ければ、投げるのにも苦労する細身の槍だからな。

 

 夕食は簡単なパンにスープだけど、大きな魚の切り身が入っていた。隣の漁師さんに頂いたらしい。5日おきにお酒を届けているから、そのお礼だと思うな。

 食事が終わると、お茶を飲みながらレイナスがボルトを作り始める。俺は久しぶりに自分の長剣を研ぐ。

 リビングの隅で、雑貨屋で購入した一番目の細かな砥石で研ぎ始めると、レイナスが俺の動きをジッと見ていた。

 研ぎ終わって、暖炉傍でパイプを取り出すと、レイナスもパイプを持ってやってきた。


 「研ぐのに水を使うのか?」

 「ああ、そのまま研げば、長剣が熱を持つだろう。水を使って研げばそれが無い。切れ味が良くなるんだ」

 「変わってるな。誰もそんなことはしないぞ。俺も昼間研いだけど、研げば研ぐだけ切れ味が良くなることは確かだ」


 確かに、今まで見たことはないな。だけど刃物は水を使った方が良さそうだ。

 「まだ掛かりそうか?」

 「とりあえず終了だ。2本ずつ渡せるぞ」

 

 シグちゃん達が風呂から帰ってきたところで、今度は俺達が出掛ける。

 村の風呂は大きいし、夕方からはいつでも入れるから利用者が多い。入浴料を1Lとして焚き木と風呂の維持費にしているから、村のおばさん達が交代でお風呂を管理していると漁師さん達が言っていた。

 今では家のお風呂を使わずに、村のお風呂を利用することが多くなった。村のお年寄りの思い出話を聞きながらのんびり湯に浸かるのは気持ちがいい。

 シグちゃん達も、同じような感じなんだろう。たまに村のおばさんを訪ねていくから、村人に可愛がられているんだろう。

 そんな些細な事柄が俺達と村人を繋いでくれるんだろうと思うと、サルマンさんのお風呂作りは色々と役立ってると思うな。


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