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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
63/128

P-063 俺達の家


 村に帰ると、依頼書と野犬の牙を持って俺はギルドに向かい、レイナスは毛皮を持って雑貨屋に向かった。

 ギルドのカウンターに牙を並べて報酬を貰い番屋に向かう。

 番屋の庭の外れに作った焚き火で早速ファーちゃんがラビーのシチューを作っているようだ。周囲に数本刺してある魚は、ラビーのお返し物かな?


 焚き火の傍で一服しているレイナスの隣に座って、パイプを取り出す

 「140Lになったぞ」

 「俺の方は65Lだ。シグちゃんに渡しておいたぞ」

 「俺も、早く渡しておくかな」


 俺達にお茶を出してくれたシグちゃんに報酬を渡すと、25Lずつ俺達に分けてくれた。

 「今日の宿代と明日の朝食代を引いて、4等分です。5Lは共通費で良いですね」

 「ああ、それで良いよ。明日も獲物があれば良いんだけどね」


 そんな俺の言葉にレイナスが頷いている。

 「まったくだな。宿代がこんなに高いとはしばらく実感が無かったからな」

 

 確かにそうだな。ずっと番屋暮らしだからね。明日も頑張って狩りに出掛けねばなるまい。

 夕食を大工さん達と一緒に食べて、俺達は宿に向かう。


 そんな日が、数日過ぎると、柱が立って、おおよその新しい家の輪郭が見え出した。

 そうなると、荒地で野犬を追うのも楽しくなってくるな。


 何とか、4人分の宿代を確保しながら一ヵ月後に、頭領が俺達に家を引き渡してくれた。4日ほど雨で狩りが出来なかったが、シグちゃん達が確保しておいた共通費で何とかやりくりが出来たようだ。

 良く考えたら、皆の短剣を作るのは家を建ててからにすれば良かったと思う。まあ、それでも何とかなったんだから、良かったと思わないとな。


 今度は、リビングの左右に部屋があるから、俺達が東側、レイナスガ西側の部屋を使う事になった。大きさは8畳ぐらいなんだけど、ロフトが付いている。急なハシゴのような階段を上ると、3畳ぐらいの大きさだ。落ちないように手摺が付いているぞ。


 「結構広く使えますね。少しお金が貯まったらベッドを買いましょう!」

 「そうだな。この棚も色々と使えそうだ。扉まで付いてるぞ」

 

 リビングにはファーちゃんが欲しがっていた暖炉がある。火口が大きいから暖炉に付けられた腕木のフックにポットや鍋を掛けることも出来そうだ。


 「小さなテーブルが欲しくなるな」

 「ああ、だが椅子はいらないから、高さは1.5D(45cm)ぐらいで十分だぞ」

 レイナスが頷いてるから、ちゃぶ台モドキを作るんだろうな。


 「明かりも欲しいですね。【シャイン】だと明るすぎるんですが……」

 シグちゃんが悩んでるな。


 「それは俺が何とかするよ。【シャイン】の光を和らげれば良いんだろう」

 頷いてるけど、信用はして無いって感じだな。

 板や、柱が余ってるから、簡単な照明器具は作れるだろう。枠を作って紙を張るだけでも十分だろうしね。


 「お風呂と井戸はそのままだ。トイレは新に作ったと言ってたな。この扉の先だろう」

 レイナスが暖炉脇の扉を開けると、そこは小さな土間になっていた。3mほど先にあるのがトイレらしい。左手は風呂場だな。屋根を大きく張り出しているから焚き木も積んで置けそうだ。


 暖炉の右側には、2段の棚があり、食器や調理器具を並べるみたいだ。

 早速、隣の番屋にシグちゃん達が、一時頼んでおいた荷物を回収しに出かけたぞ。


 俺とレイナスは、火の無い暖炉の前に腰を下ろして一服を始めた。互いの顔を眺めて笑い出す。


 「何となく落着くな」

 「ああ、俺達の家だ。ここでずっと暮していこう」


 そう言って互いの肩をバシンと叩く。

 やがて、レイナス達が結婚したなら、俺達は別の場所に住めば良いだろう。それまではずっと一緒だ。


 一服を終えると、早速仕事に取り掛かる。

 レイナスがテーブルで俺が天井ライトを作ればいい。

 接着剤は残りがあるから、紙を買いに雑貨屋に出掛ける。


 「いらっしゃい。どんな御用ですか?」

 「ああ、厚手の紙が欲しいんだけど……」


 雑貨屋のお姉さんが出してくれた紙は和紙に近い物だ。確かに厚手だが、こんな物を何に使うんだろう?


 「壁紙ですけど、どれ位入用なんです?」

 「そうだな……。横が3Dで長さが5Dもあれば十分なんだけどね」

 

 俺の言葉で、壁紙に使うのではないと判断したようだ。奥の棚から1Dより少し大きい真四角の紙を数枚持ってきた。

 

 「壁紙用は切り売りが出来ないんです。これで代用出来ませんか?」

 

 先程よりも少し薄手だが、俺が作る物には十分使えそうだ。色も白だから丁度いい。

 

 「これを貰うよ。数は6枚欲しいな。それと、20D(6m)ほどの紐とフックが2個ってところだ。ところで、あれはなんだい?」

 「あれは、中にロウソクを入れた明かりです。家の中で、裸火は危ないでしょう。ですから、あの中でロウソクを灯すんです。ひっくり返してもガラスですから火事にはなりませんからね」


 随分分厚いカップだなと思っていたが、そんな用途だったのか。あまり透明度が良くないけど、それが返って良いのかも知れないな。金属製の取っ手の付いた皿に直径5cm高さ10cmほどの粗悪なガラスの円筒が乗っているだけだけど、これを家庭ではつかってるんだな。

 1個50Lは高いけれど、ローソクを2本付けて購入する事にした。


 家に帰ってみると、玄関先でレイナスが一生懸命、ノコギリで板を挽いている。客を想定して少し大きいのを作ってるみたいだ。大は小を兼ねるって言うからね。俺達だけってわけには行かないかも知れないな。


 家の中で色々整理している2人にロウソク立てを渡すと喜んでくれた。

 

 「これにロウソクを入れて明かりにするんですね。ファーちゃんと私達の部屋にも確かに必要でしょうね」

 そんな事を言いながら、値段を聞いて、俺に代金を渡してくれた。家の中で共通的に使う物なら共通費から出せるらしい。


 「箱の上においておけば邪魔になりませんよ」

 「後は、リビングの明かりだけど、何とかなりそうだ。でも、シグちゃんが頼りだよ」


 暖炉でお茶を沸かそうとしている2人を置いて、俺も外に出て木枠作りを始める。

 凝った物なら時間も掛かるけど、今回は簡単に済まそう。

 レイナスの隣で、彼の好奇心に満ちた目を気にしながら、四角い枠を細い棒を使って組み上げる。

 

 「箱ってわけじゃ無いよな。どうするんだ?」

 「これか? 部屋の明かりにするんだ。この枠に紙を張って、天井の垂木に吊り下げる。中にシグちゃんが【シャイン】で光球を作れば、リビングの照明になるだろう。夜なべ仕事も出来るぐらいの明かりになるはずだ」


 1cm程の断面の角材を使って、四角形を作るのは以外に難しいものだ。何とか四角い枠を4個作って、接着剤で張り合わせると一番上の枠に針金を使って吊り具を作る。

 後は、紙を枠に張りつければ出来上がりだ。

 レイナスにリビングの真中の垂木と暖炉脇の壁にフックを付けてもらい、それを使ってこの仕掛けを上げ下げ出来るようにした。紐の最後は暖炉脇の棚の柱に結んでおく。

 シグちゃん達が不思議そうな表情で見上げているけど、夜になれば分かるだろう。

 レイナス謹製の低いテーブルが出来たところで、リビングの真中でお茶を楽しむ。


 「今夜は豪華にチリ鍋にします。せっかく出来たんですからお祝いです!」

 「そうだな。これで冬も暖かく過ごせそうだ」

 やはり嬉しさは隠し切れないようだ。

 明日も狩りは休もう。暮らしていけるだけの狩りで十分な気がする。


 その夜。シグちゃんに天井の四角い箱の中に光球を作ってもらうと、リビングの中が明るく照らし出される。

 予想したとおり、紙を通した光は優しい光に変化しているぞ。

 「これなら、夜なべ仕事も出来ます」とシグちゃん達が言っているけど、無理はしないで欲しいな。


 出来たてのチリ鍋を囲んで酒を飲もうとした時、扉を叩く音がする。シグちゃんがそうっと開けると、サルマンさんとミーメさん、それにローエルさんとレビトさんの4人が入ってきた。


 「出来たそうだな。祝いを持ってきたぞ!」

 大きな魚にファーちゃんの顔が輝いている。「俺はこれだ!」と言ってローエルさんが2つも酒瓶を持ち上げた。

 早速、リビングに上げてテーブルを皆で囲む。レイナスが大きく作ってくれたんでこんな時には役に立つな。


 「ほう、椅子ではなく、床に坐るのか。酒を飲むならこっちの方が良いかも知れねえな」

 そんな事を言いながらチリ鍋を突付いているぞ。

 大きな魚は、レイナスが外へ持っていった。捌いて来るんだろう。慌ててザルを持ってファーちゃんが追い掛けてったからな。

 シグちゃんが木製のカップを皆に配ると、レビトさんが酒を注いでいる。

 そんな所に、レイナスが帰ってきて、とりあえず魚を暖炉で炙り始めた。


 「昔の番屋の面影があるな。お前達がここで暮してくれるなら村の連中も助かる。ずっとここにいてくれよ」

 「ええ、特に行く場所はありませんし、高望みもしないつもりです。自分に合った殻にいるのが一番です」


 「そうは言っても、周りが放っておかないだろう。この村では精々黒止まりだ。お前達なら銀を目指せるんじゃないかと思ってるんだが……」

 

 カップを傾けながら、ローエルさんが俺達に話を向ける。だけど、放浪のハンターよりはしっかりと根を下ろしたハンターの方が俺達には合っていそうだ。

 

 「村の狩りや、ガリナムさん、イリスさんそれにローエルさんから誘いがあれば、出掛けるのはやぶさかではありません。でも、ハンターには向き、不向きがありますし、俺達の故郷はここにしようと思っていますから……」


 「そうだぞ! 俺達漁師だってお前達は仲間だと思っているからな。たぶん外にもいろいろ知ってるに違えねえと漁師仲間では持ちきりだ。それだけ、あのグラフィン狩りは俺達の度肝を抜いたからな」

 「それは俺達だって同じ事だ。ヌンチャクをアイツは離しはしないからな」

 

 「確かに、私達はガトルに苦労しなくなったわ。私のこのバトンもお嬢ちゃん達の真似なんだと思うと、私達もこの村を拠点にしたいわね」

 

 そんな話をするもんだから、サルマンさんが家を斡旋しているぞ。それを頷いて聞いているローエルさんもまんざらでは無さそうだ。


 魚が焼けて、大皿に切り身で盛られると、皆で少しずつ切り分ける。何となく親戚が集まったみたいで嬉しくなるな。

 

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