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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
62/128

P-062 6人組み


 家を作るのは土台が大事だそうだ。

 俺達のリビングとも言える番屋はちゃんと土台の石があった。柱を穴に埋める掘っ立て小屋とは柱の持ちが違うらしい。

 そんな訳で、少し大きな石を俺とレイナスで運ぶ事になった。

 森で焚き木を取って運ぶハシゴを使って岩場から石を運ぶ。10個ほど運んだところで、頭領から後4個と言われたから、再び石を運ぶ。

 

 「まったく、俺達の家でなければ願い下げだな」

 「ああ、だがこれで必要な物は無いらしいぞ。明日から荒地でラビーでも狩るか?」

 「そうだな。ファー達も大工さん達の食事作りで大変らしいんだが……」


 そうだった。大工さん達の御茶や昼食の世話は当家の仕事らしい。

 そんな細々とした仕事をシグちゃんと2人でやっているんだった。


 「そうなると、俺とレイナスで行くしか無さそうだぞ」

 「ラビーは無理だな。野犬でも狩って宿代を稼ぐか?」


 そうは言っても、しばらくは干し肉ばかりだ。たまには新鮮な肉が欲しいぞ。

 一応、シグちゃんのクロスボウを借りていくか。上手く行けば肉が手に入るかもしれない。

 

 次の日。家作りの方はシグちゃん達に頼んで、レイナスとギルドに出掛けル。カゴを俺が背負って、中にはシグちゃんが貸してくれたクロスボウとボルトケースが入っている。

 ギルドの依頼掲示板には、いつものように荒地の野犬狩りが張り出してある。数は10匹だから、多くても15匹前後というところだろう。

 レイナスが依頼書を手に取ってカウンターのミーメさんのところに持っていく。軽い挨拶を交わして、依頼書に確認印を押してくれたようだ。


 直ぐにギルドを出て北門を抜けると、荒地に向かって足を運ぶ。

 「どうやら、先行者がいるらしいぞ」

 「あまり荒らされたくないなあ」

 俺の言葉に頷きながら、レイナスが話を続ける。


 「レベルは赤7つと言うところらしい。王都からやってきたらしいが、男女6人のパーティと言っていた」

 

 微妙なレベルだな。たぶん宿に泊まっているんだろうから、1日の依頼報酬で150Lは稼いでいないと、野宿暮らしになってしまうだろうな。たぶん1日おきに宿に泊まってるんだろう。それなら、2日で150Lを稼ぐ形だからそれ程無理な暮らしでは無さそうだが、雨でも振ると辛い暮らしになりそうだ。


 「どうやら、俺達と同じように、納屋を借り受けたらしいぜ。まあ、似た者同士だから、面倒を見てあげてとミーメさんが言っていた」

 「そうだな。俺達だって色々とあの村では世話になってるんだ。困った事があれば助けてうやろうぜ」


 親切には親切で返すのが流儀だろう。きっとこの村の暗黙の了解事項なのかもしれない。それは大切な事だと思うし、俺達もその流儀に合わせるのもやぶさかではない。何と言っても、俺達だって村人の一人って事になってるからな。


 荒地を歩いて行くと、遠くで焚き火の煙が上がっているのが見えた。たぶんそいつらだろう。俺達はその焚き火の煙に向かって足を速める事にした。


 「こんにちは。ご一緒させて貰ってよろしいですか?」

 「ハンターですか。どうぞどうぞ、俺達もハンターです。王都からやってきたのですが、村の依頼書は奪い合わずに自分達に合った物を選べます」


 坐った俺達に、お茶のポットを渡してくれた。ありがたくバッグからカップを取り出してお茶を注ぐ。


 「今日は何を?」

 「俺達は野犬目当てです。この辺りには多いですからね。ところで、あなた方は?」

 

 「同じです。野犬狩りはそれなりに稼ぐことが出来ますから。俺達は赤7つ、『ソードス』というパーティを組んでます」

 「俺達は『パンドラ』だ。ようやく白の5つというところなんだけどね」


 レイナスが焚き火でパイプに火を点けながら伝える。ハンター同士、初めて会う場合には互いにレベルを教えあうのが慣わしらしい。

 それによって、共同で狩りをする場合の指揮を執るパーティや人物を決めるのに役立つとレイナスが教えてくれた。


 「2人ですが、だいじょうぶなんですか?」

 「ああ、俺達の依頼は10匹だからな。2人で十分なはずだ」


 レイナスの言葉に、ソードスの連中が互いに顔を見合わせて小さな声で囁きあっている。そんなに珍しい話じゃないと思うんだけどな。

 

 「俺達も同じような依頼です。俺達には魔道師も弓使いもいますからそれほど無理な依頼とは思えません。ですが、貴方達は2人ですよね」

 「ああ、そういうことか。たぶんガトルが同じ数でも問題ないはずだ。俺はネコ族だし、コイツも素早いからな。これで、殴るんだ」


 そう言って、背中にさしてあるヌンチャクを彼らに見せる。

 初めて見る武器は、確かに胡散臭いよな。短かい棒を鎖でむすんだだけだから。

 

 「俺達を馬鹿にしているわけでは無いですよね?」

 「そんなわけ無いだろう。ハンターはハンターに誠実であれ! ってことだ。確かに貧弱に見えるだろうが王都のイリスさんだってこれの使い方を覚えて帰ったぞ」


 レイナスの言葉に連中の目が輝く。どうやら、王都では人気が高いらしいな。結構美人だし、あの気性だから誰にも好かれるんだろう。

 俺もパイプに火を点けると、彼らの狩りの方法を聞いてみた。極めてオーソドックスな方法だ。無理も無いが得られる獲物もそこそこだな。俺達みたいに相手に襲わせて返り討ちにしようなんて考えないようだ。

 

 「それじゃあ、頑張ってくれよ。俺達は少し先に行って狩りをするよ。お茶をありがとう」

 そんな俺の言葉に彼らは片手を上げて挨拶してくれる。

 同じ野犬狩りなら、距離を離さねばなるまい。レイナスと足早に西に向かう。


 「少し前なら、彼らのやり方が一番だと思ってたんだけどな」

 「俺もそうだ。だが、今は違う」

 俺の言葉にレイナスが頷く。

 彼にも気が着いた筈だ。俺達の狩りの仕方がかなり他の連中と違っている事に。

 

 「だが、俺は俺達のやり方が気に入ってるぞ。その内、他の連中がマネるんじゃないかな」

 俺に笑みを浮かべた顔を向けてレイナスが言った。

 

 1時間ほど歩いたところで、周囲を2人で眺めながらゆっくりと歩いていく。狙いはラビーのような小さな獣だ。

 直ぐにレイナスが探し当てて俺に腕を伸ばして教えてくれる。

 ラビーだな。小さく頷いて背中のカゴを下ろすとクロスボウを取り出した。ボルトを1本ケースから抜取り、弦を引いたクロスボウにセットする。


 「良いぞ!」

 「向こうから回りこんで注意を引くからな」


 レイナスは大きく回りこんでラビーの頭の方に移動する。近付かずにゆっくりとした動作をラビーに見せ付けているぞ。

 俺はゆっくりと後方から近付き、20m程の距離でゆっくりと身を沈めて、膝撃ちの姿勢を取る。

 狙いを慎重に定めてトリガーを引く……。


 「やったぞ! 1匹目だ」

 「ああ、次ぎは俺だからな」


 そんな事を言いながらハイタッチをして、獲物をカゴに放り込む。

 3匹は欲しいところだな。

                  ・

                  ・

                  ・


 4匹目を狩ったところで、レイナスがラビーを解体して荒地に臓物を撒き散らした。水筒の水で彼の手を洗ったところで、近くのヤブに身を潜める。

 ちらほらと野犬が姿を見せたから、それ程時間を掛けずに集まってくるだろう。

 レイナスはヌンチャクを俺は三節棍を握りしめて、ひたすらその時を待った。


 数匹の群れが集まってきた。しきりに辺りをうかがっているのは、他の野犬を警戒しているのだろう。

 ヤブから周囲を俺達も警戒する。何時後ろから襲われないとも限らない状態だ。

 最初の群れが散らばった臓物を食べようとしたところに別の群れが2方向から走ってくる。

 これで、10匹以上は確実になった。

 

 「ウオォォ!」

 レイナスが奇声を上げてヤブから躍り出る。俺直ぐに後を追って駆け出した。

 吠えながら向かってくる野犬にレイナスのヌンチャクが打ちかかる。後ろから彼に飛び掛かろうとした野犬の頭を、俺の三節棍が唸りを上げて打ち据えた。

 2人で舞うように野犬を倒していくと、数分も立たずに俺達の狩りが終了する。


 「終ったのか?」

 「ああ、どう見ても10匹以上だ。直ぐに毛皮を剥ぐぞ」

 

 そう言っても、毛皮を剥ぐのはレイナスの仕事だ。俺は彼が仕事をしている間に、小さなスコップで荒地に穴を掘る。

 1つ掘ったところで、丸裸の野犬を穴に放り込むと、土を被せて次の穴を掘り始めた。

 狩りの時間よりもこっちの方に時間が掛かるのが問題だな。とは言っても、亡骸ぐらいは土に返してあげよう。野犬は共食いをしないからこうしておかないと何時までも死骸が横たわる事になる。


 「終ったぞ。全部で13匹だ」

 1回で依頼は終了だな。余分に狩る事は無いだろう。ラビーの肉もある事だし、今日はこれで村に帰ろう。

 レイナスと残りの野犬を穴に放り込んで始末したところで、2人でのんびりとパイプを楽しみながら帰路についた。


 途中、ソードス達が野犬を狩っている光景を遠くに見る。

 小さな群れを追い駆けながら倒しているようだ。あれだと、狩れるのは群れの半分ぐらいだろう。それ位群れを狩ると逃げてしまうだろうからな。

 向こうから向かってくるのは極めて短時間だ。相手がこちらを攻撃してくる最中に全力で倒すのが一番確実なんだが、そんな狩りの仕方は邪道なんだろうか?


 そんな彼らの狩りが一段落付いたのだろうか?

 こちらに向かって手を振っている。俺達も手を振るとこちらにやってくるぞ。

 俺達は歩みを止めて、近くのヤブから焚き木を取って焚き火を作る。ポットに水筒の水を入れて火にかけた。


 焚き火の傍でレイナスとパイプを楽しんでいると、ソードスの連中が俺達のところにやってきた。

 

 「もうすぐお茶が出来る。坐って一息入れたらどうだ?」

 「ありがたく頂きます。ずっと走ってましたから喉がカラカラです」


 お茶が出来たところで、彼らの取り出したカップに注いで上げる。最後が俺達の分だ。


 「ところで、そちらはどうなんですか? 10匹となると、やはり2日掛かりになるでしょうけど?」

 「とりあえず13匹だ。依頼をこなしたから戻るところだよ」


 俺の言葉に6人が一斉に俺達を見る。信じられないってことなんだろうか?

 ほら! と、レイナスがカゴの中身を見せて納得させている。

 

 レイナスが簡単に俺達の狩りの仕方を説明してるけど、果たして彼らにそれができるかどうか。


 「まあ、俺達の狩りは今説明した通りなんだけど、あまりお薦めはしないな。相手が野犬ならさほど問題は無いだろうが、それでもどれだけ集まるかは分からないし、ガトルが出てきたら大変だ。周囲を十分観察して、小さな群れがいるとき初めて可能になる。それに餌が取れないと話の外だよ」

 「ラビーを4匹ですか……。そっちの方が難かしく思えますね」

 

 たぶん、彼らは荒地で野宿するのだろう。レイナスがラビーを1匹進呈していた。彼らの夕食が1品増える事だろう。これ位はしてあげよう。長い付き合いになるかもしれないからね。


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