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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
61/128

P-061 ランクの4つ上


 「まったく驚いたぞ。ミーメからあの話を聞かされたのは俺達も一緒だ。だが、罠猟では5日で15匹は不可能だ。精々が数匹、上手くいっても10匹を越える事は無い。

 だが、お前達は3日でそれを可能にした。いったいどうやったんだ? 外にも聞きたいハンターはいるだろう。出来れば聞かせてやってくれないか」


 俺がテーブル席に着くなり、ローエルさんが聞いて来た。

 その内、誰かが気が付く話だから教えても問題は無いだろう。教えないで恨まれるよりは一目置かれる方が良いからな。


 「実は、ホーグルとラビーの関係を利用したんです……」

 そう言って、簡単に狩りの方法を説明した。


 「確かに俺も見たことがあるぞ! あれならと思ったんだが、どうやれば狩りの方法に出来るかは考え付かなかった」

 「だな。それに、弓の腕も少しはいるぞ。逃げずにうずくまっても、やはり近付けば逃げてしまうからな。その辺りの頃合も大切なんだろう」


 「後は、ホーグルの似姿を作ってそれを空に飛ばすのはもっと大変だ。リュウイは簡単に話しているが、木を削っただけでは無理だ。良くも100D(30m)も、ホーグルのように飛ばせたものだ」


 俺の肩越しに他のハンターの声が聞こえてくる。ローエルさんはそんな話をするハンターと俺を交互に見比べていた。

 

 パイプを手にすると、誰かがパイプを俺に寄せてきた。ありがたく火を点けさせてもらうと、礼を言って頭を下げる。


 「リュウイよ。お前が作ったホーグルをギルドにしばらく預けてくれないか? やはり1度は皆に見せてやってくれ。真似をする者もいるだろう。そう簡単に飛ばせなくとも、現物を見れば少しは自分達で工夫が出来るに違いない。それにお前達もだ。子供では無いんだから狩りに工夫をしてみろ。最初から無理だと思わずにどうしたらと考えるんだな。俺達も今回は考えさせられたぞ」


 確かにローエルさんの言うとおりだ。ヒントはあっても良いだろうな。実際にはホーグルとラビーの話をしてるんだから、俺の作った鳥モドキの飛行機を見る事は2つ目のヒントを得る事になる。後は工夫しろってローエルさんは言ってるんだな。


 そんなローエルさんを恨めしく見ながらもハンター達は俺達の座ったテーブルを離れていく。

 5人になったところを見計らって、ミーメさんがお茶を持ってきてくれた。


 「リュウイを見てると退屈しないな。確かに俺も見た事はある。だがあれを利用使用とは考えないぞ」

 「私達が、狩りの方法をこれだと決めているからでしょうか?」


 「それも、あるだろうな。今回だってそうだ。5日で15匹と聞いて誰もが自分達の罠猟の結果を思い浮かべている。そして無理だと結論付けた筈だ。だが、リュウイ達は違ってた。引き受けなかったのは罠猟を思い浮かべたかもしれんが、その後でどうしたら良いかを考えている。それでも自信は無かったんだろうな。ギルドに寄らずに狩りに行ったんだから」


 パイプを燻らせながらおもしろそうに呟いた。

 

 「だが、リュウイの作ったホーグルを使えば簡単に狩れる事になるんじゃないか?」

 「たぶん無理だ。リュウイそのホーグルを見せてみろ」


 ローエルさんの言葉に、背負い籠からホーグルモドキを取り出してテーブルの上に置く。


 「これか……。良いか、良くみてろよ」

 ローエルさんが、ホーグルモドキを摘むと、腕だけでホールに飛ばした。数m飛んだところで床に滑り落ちた。

 レビトさんが急いで席を立つと、ホールの床からホーグルモドキを拾い上げて戻ってきた。


 「不思議だわ。なんであんなに飛ぶの。それに飛ぶ姿も自然だったわ」

 「それが、最大の秘密だ。それが判らなければいくらそれがカウンターに飾られていても狩りは無理だな」

 

 「だが、なんでそれをローエルが知ってるんだ?」

 ネコ族の青年が質問する。確かにそれを知ってるのは不思議な話だ。


 「俺は王都の生まれだぞ。裕福な商人の家だが兄弟5人の末っ子では、家業を引継ぐわけにも行くまい。だが、そんな訳で王国の博士達の教えを受けたことがあるのだ。その時に何故鳥は空を飛べるのかを聞いた事がある。その時に俺達が子供だった事もあるのだろう、簡単な模型を作って見せて貰った。試行錯誤で散々苦労したと言っていたが、その模型とリュウイが作ったものがそっくりだ。もっとも、リュウイの方が良く出来てるな」


 「なるほど……。形を似せただけではダメだという事か」

 「それに、良く考えてもみろ。ホーグルに襲われそうになったラビーは身を縮ませるんだぞ。リュウイのところの嬢ちゃん達の腕もあるのさ」


 パイプを取り出してタバコを詰めると、マッチモドキで火を点ける。

 確かに俺達は恵まれてるな。狩りの工夫が出来たとしても、レイナスのように素早く獲物を見つける目が無ければ問題外だし、シグちゃん達のクロスボウがあってこそこの狩りは成立すると言っても良いだろう。


 「ところで、お前の練習は上手くいってるのか?」

 「ああ、レイナスに教えられて、今では朝晩に自ら練習するまでになったぞ。次ぎにガトルを相手にする時は十分に使えるはずだ」


 朝の遅い俺に代わって、レイナスが教えてくれていたのか。

 

 「次ぎはお前が他の者に教えれば良い。ガトル相手には絶大だとイリスが言っていたからな」

 「そうするつもりだ。しかし、それも全てリュウイから出たものだ。リュウイ達とはしばらく狩りをしていないが、その度ごとに驚かされる」

 

 「だが、悪い事ではない。リュウイ達がいることで俺達は王都のギルドからの特別依頼をこなせる。リュウイよ、しばらくはこの村を離れるが、後を頼むぞ」

 「でも、俺達はようやく白ですよ……」


 「ガリナムは十分に、青の中位の実力があると評価していたぞ。イリスはこのままパーティを組んでも良いとまで言っていた。正直、お前の実力とギルドランクは合っていない。王都ならば経験値を緩和する事も可能だろうが、ここではそうもいくまい。だが、困った自体になったならば頑張ってくれ。ギルドランクの2つ上までは、他のハンターでも受けられるが、サムレイ村の一件でお前達にちょっとした恩恵がギルドの上の方から下りている。リュウイのギルドランクの4つ上までは依頼が受けられる。ミーメには俺から話をしておくが……。村を頼んだぞ」


 少し長い話だが、3つあったな。ローエルさん達がしばらく村を離れる。俺達が4つ上までの依頼を受けられる。最後に村をローエルさんから託されたってことだ。これは早く帰ってレイナス達に伝えねばなるまい。


 ローエルさん達に別れを告げて、カウンターにホーグルモドキを預けておく。一ヶ月ほど預けておけば良いだろう。

 だいぶ時間を潰したから、皆が待ってるはずだ。俺は番屋へと足早に歩いて行く。

                  ・

                  ・

                  ・


 「そうか。そんな事をローエルさんが言ってたんだな」

 「ああ、依頼書の4つ上ってどんな事になるか分からないけど、サムレイ村での一件を評価したらしい」


 「王都のギルドが動いたんだな。王都のギルドがこの王国のギルドの元締めだ。ガリナムさんが動いてくれたんだろうな」


 そんな事を言いながら、俺達は夕食を食べている。

 俺が帰って来るまで待っててくれたらしい。先に食べてても文句は言わないんだけどね。意外と律儀な連中だ。今度の狩りの分け前は35Lだけど、取り立てて欲しい物はないから、明日からは再び板作りになるのかな?


 「それより、冬がもうすぐ終わりですよ。材料はだいじょうぶなんですか?」

 

 シグちゃんの言葉にレイナスと顔を見合わせる。

 たぶん、まだまだ足りないかもしれないな。明日から昼は材木を切り出して、夜は板にするためのノコギリをひく仕事が始まりそうだ。


 そんな暮らしが半月ほど過ぎると、だいぶ建築資材が溜まって来たぞ。大工の棟梁が確認にやってきて、こんなものだと言って帰って行った。

 ほっと、俺達は肩の力を抜く。

 狩りの方が、どれだけ楽だか……。


 「でも、番屋を作り直す間は私達はどこで暮せば良いんですか?」

 シグちゃんの素朴な質問が俺とレイナスに爆弾を落とした。

 確かに、それは考えてなかったぞ。


 「宿に泊まるか?」

 「そうなると、1日で80Lが無くなりますよ。銀貨10枚ほどありますけど、無くなったらちょっと不安です」


 シグちゃんの言葉に俺達は唖然となった。

 そうだよな。家が出来るまで宿に泊まるしかないのだが……。そうなると、最低でも10日以上は利用しなければなるまい。素泊まりで20L、食事に5Lとなれば、1日で銀貨1枚に成ってしまう。春になればそれなりに俺達向けの依頼はあるんだろうが、雨でも続けば直ぐに文無しになりそうだ。


 「春のグリル採取を終えてからなら、少しは余力がでるだろうな。その後にレブルが続くから丁度良い。野犬が出ても俺達なら問題ないだろうし」

 「そうですね。私も賛成です」


 レイナスの言葉にシグちゃんが賛同してる。となれば、明日にも頭領に伝えておかねばなるまい。

 家を建てている最中の俺達の荷物は、隣の番屋で預かってくれるそうだ。普段からの付き合いがこんな時に役に立つんだな。

 完成した際にはご馳走しなければなるまい。


 あくる日から、再び罠猟を始めた。

 冬の獲物は少ないけれど、何とか暮していける。そんな森の風景も少しずつ変化が現れた。森の木々の新芽が膨らんで来たのだ。

 朝晩の気温もだいぶ暖かくなってきたように思える。もうすぐ、春の薬草狩りが始まりそうだな。


 そんな日が続いたある夜。俺達は薬草採取の準備を始める。

 俺が4人分の採取ナイフを研いでいると、レイナスは湯上げしたグリルを陰干しするザルを補修している。去年隣の番屋から古いのを貰ったんだが、至る所に穴が空いているからな。森で採取してきたツタをナイフで細くしながらザルの網目を縫うように補修してる。器用なものだな。

 シグちゃん達は、手カゴに新しい布を被せている。布をカゴの上部に付けておくと、籠が揺れてもグリルが飛び出さないという話だ。その情報は大きな風呂でおばさん達から教えて貰ったらしい。

 あの風呂は村の貴重な情報交換の場になっているようだ。

 男だけだと、狩りや漁の自慢話ばかりなんだけどね。


 そんな、作業が一段落するとファーちゃんが皆にお茶を入れてくれた。俺とレイナスはのんびりとパイプを楽しむ。

 準備は出来たって事だな。明日から20日は薬草採取に勤しまねばならない。

 10日過ぎたところで、俺達は一旦この番屋を離れて宿住まいだ。いよいよ俺達の新しい家が出来るぞ。

 

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