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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
55/128

P-055 緊急依頼終了


 ガトルを数頭ヌンチャクで殴りつけたところで、周囲をちらりと眺める。レイナスに横から噛み付こうとしたガトルを見付けて、ヌンチャクを投付けた。

 素早く背中の長剣を抜くと片手で構える。


 「しばらく借りるぞ!」

 

 レイナスが両手にヌンチャクを持って、後方に向かおうとするガトルを次々と倒していく。

 イリスさんが俺の方に少し移動して、俺の死角を防いでくれていた。

 まだまだ剣を使うのは慣れていないんだよな。

 それでも次々に俺の前にガトルの死骸が積み重なる。少しずつ後ろに下がってガトルを相手にしていると、門の扉の穴から大きな頭がぬーっと姿を現した。


 突き出した頭に2本のボルトが深々と突き立つ。

 そんなボルトをものともせずに、扉の丸太を齧りだした。


 「リュウイ! ウーメラだ!」


 長剣を一振りして血糊を飛ばすとケースに戻し、ウーメラを握って投槍を素早くセットする。

 大きく振りかぶって力任せにガドラーの頭に投げた。

 

 ガオォーン!

 一声大きな叫びを上げると、ガドラーが消えていく。

 

 近付いてきたガトルをウーメラで殴りつける。ウーメラを荷車近くに放り投げて再び長剣を引き抜いた。


 弓使いの矢は尽きたようだ。チラリと振り向くと槍を掴んでシグちゃん達に近付くガトルを牽制している。

 

 更に1頭のガドラーが裂け目から頭を出した。

 今度はレイナスがガドラーの息の根を止める。

 

 「油断するなよ。2頭のガドラーは倒したが、まだまだガドラーが押し寄せてくる。もう1頭はいる筈だ!」


 肩で息をつき始めた俺達にイリスさんが声を掛けてくる。

 

 「まだまだだいじょうぶです!」


 そうは答えたが、かなり疲れてきたのは確かだな。

 

 ドン! と大きく門が揺れると、数本の丸太が砕けた。

 そこからガトルとともにゆっくりとガドラーが姿を現した。


 「レイナス、ガトルを頼む。私とリュウイでガドラーを殺る!」

 「任せとけ!」


 2本のヌンチャクを振り合わしてレイナスガ声を張り上げる。

 

 のそりと焚き火に近付いたところを胴体と頭にボルトが突き立った。

 杖代わりの槍を力ずくでガドラーに投付ける。刺さりはしたが、あまり効いてはいないようだ。


 長剣を持ってイリスさんがガドラーに近付いていく。飛び掛ってきたところを長剣で差すつもりのようだ。

 だが、ガドラーを取り巻く、ガトルと野犬が邪魔をしている。

 

 投槍をウーメラを使わずに投付けると、前足の付根に上手く突き刺さった。少しガドラーの動きが鈍くなったようだが、致命傷にはならなかったようだ。

 

 突然、ガドラーが唸り声をあげながらイリスさんに飛び掛った。イリスさんは微動だにせず長剣を引いて構えている。

 俺は奇声をあげながらガドラーに走って長剣をガドラーに振り下ろした。


 ガキィン!

 金属のぶつかる高い音が門の前の広場に響きわたる。衝撃が俺の左手から伝わってきた。

 ドン! と重い音がしてガドラーの首が落ちた。首から噴出する血潮でイリスさんが赤く染まる。


 周囲から寄って来るガトルにイリスさんが長剣を振ろうとした時、長剣の先端が無くなっているのに気がついた。

 慌てて自分の剣を見る。どうやらさっきの衝撃と音はガドラーの首と一緒にイリスさんの長剣を叩き斬った音らしい。


 「とんでもない切れ味だな。片手剣になってしまったぞ。だが、ガトル相手なら丁度良い」


 そんな事をイリスさんが言ってるけど、後で弁償しないといけないのかな。ちょっと気が滅入ってきたぞ。


 それでも門の破れ目から入ってくるガトルはいなくなった。

 どうやら群れを全滅させたのかもしれない。

 

 レイナスが素早く門に上って外を眺める。

 こっちに振り向いて片手を振っている。


 「外には何もいないぞ。終ったんだ!」


 ほっと息をつくとイリスさんと顔を見合わせた。ニコリと微笑んでいるけど、全身にガドラーの血を被っているから凄惨な雰囲気がするな。

 

 俺とレイナスで急いでガトルからボルトを引き抜いた。数本を渡しておけば、安心できるし、弓使いも矢を10本ほど回収してレイナスと場所を代わる。

 

 「どうやら終ったらしいな。悪いがもう1つの門の様子を見てきてくれ。こっちは何とかなったと教えてやって欲しい」

 

 イリスさんの言葉を聞いて、若者が1人走っていく。

 シグちゃんがイリスさんに【クリーネ】を掛けていた。血まみれのままではかわいそうだからね。


 焚き火の傍に腰を下ろすとファーちゃんがお茶のカップを渡してくれる。

 3人で腰を下ろすと、とりあえずお茶で喉を潤した。


 「リュウイ、お前の剣を見せてくれないか?」


 イリスさんの言葉に、剣を抜いて渡した。

 じっくりと剣を見ていたが、普通の剣だよな。少し重心が前にあるけど……。


 「これで、私の剣を斬ったのが信じられん。王都のドワーフが鍛えた業物なんだが……。誰も信じないだろうな」

 「さっきのあの音はリュウイがイリスさんの剣を斬った音なのか?」


 「申し訳ありません。弁償したいと思いますが、たぶんかなりの値段だと思います。少しずつ返しますから」

 「いや、それにはおよばん。私達に依頼を押し付けたのが親父だから、その依頼を完遂した時に生じた武器の損傷ぐらいは補填してくれるだろう。この顛末と長剣の切れ端を添えて送ればどんな返事が返ってくるか、楽しみではあるな」


 そんなことを言いながらパイプを取り出してタバコを詰めている。俺達もそれに習う事にした。

 

 「様子を見てきました。向こうにはガトル1頭も回ってこなかったそうです。こちらの様子を話したら驚いてました」

 

 村の若者が伝令を終えて帰ってきた。

 すると、俺達が全てやっつけたという事になるのかな?


 「ご苦労。悪いが若者を集めて、ガトルと野犬の牙を回収してくれ。毛皮もお願いする。纏めて明日の朝にギルドに持ってきてくれ」

 「分かりました。これでガトルに脅えずに暮らせます」


 直ぐに、もう1人の若者を連れて戻っていく。数を集めなければ大変な仕事になりそうだからな。


 イリスさんが席を立つと広場でなにやら探し始めた。ガドラーは魔石を残すから、それを回収しているようだな。


 イリスさんが戻ってきたところで、再度お茶を飲んで横になる。

 まだ、周辺をうろつくガトルがいないとも限らないからな。

                 ・

                 ・

                 ・


 北門の広場で朝食を終えると、再度門の外を確認する。

 やはり、ガトルの姿は見えない。

 焚き火に戻ってイリスさんに告げると、パイプを咥えたまま小さく頷いた。

 これで終わりらしいな。投槍や長剣はボルトと一緒に纏えておいて、シグちゃんが【クリーネ】で一括して掃除をしてくれた。

 

 「しかし、とんでもない数だったな。リュウイにヌンチャクを投げて貰って良かったよ。やはりもう1つ作っておくかな」

 「いや、1つで十分だろう。必要なら俺のを使えばいい。……そうだ。これをやるよ。村に帰ったら、これの発展型の武器を作って貰うつもりだ」


 「ヌンチャクの発展型だと?」

 「ええ、三節棍と言うんですが、そうですね……。ヌンチャクにもう1つ棒を加えた感じになりますね。フレイルと杖の特性を持ちます」


 「俺にオ使えるか?」

 「ちょっとどうかな? 俺の練習を見て考えた方が良いぞ」


 レイナスは、ヌンチャクで味をしめたかな? だけど、俺にも使えるかどうか分からないからな。

 そんな話を終えると、俺達はギルドに向かう。

 

 扉を開けてホールに入ると既に7人のハンターが集まっていた。

 彼らのいるテーブルに近くのイスを持って俺達も坐ると、直ぐにお茶のカップが渡された。


 「大変だったらしいな。こっちにはさっぱりだったが、これでガドラーとガトルはお終いだろう。ありがとうよ」


 そう言って、イリスさんと握手してるのは、ドネリクとか言っていた白5つのハンターだ。

 

 「これで、狩りの分配をするのだが、村の連中にも助けられた。毛皮は彼らに渡したいと思うのだが……」

 「そうだな。彼らにも必要だろう。それで分配は73ぐらいでどうだ?」


 ドネリクの言葉にイリスさんが驚いている。

 狩りは皆で行なったのだ。平等が普通だろう。たまたま彼らのところにガトルが現れなかっただけだからな。


 「分配は12人で平等だ。たまたま私達の所に群れが集まったに過ぎん。皆で狩りをしたのなら、獲物の分け前は均一だと思うが?」

 「そう考えてくれるならありがたい。俺達のパーティは怪我人が出てるからな。少しでも稼いでおかんと冬がきつくなる」


 イリスさんが片手を上げてギルドのお姉さんを呼んだ。

 やってきたお姉さんに、4個の魔石を渡して報酬を均等割りにするよう告げている。


 「魔石の2個は怪我を負った連中に分けてやって欲しい。残りの2個はガトルの牙の値段と合わせて12に分けて欲しい。毛皮は手伝ってくれた村人に分配してくれ」

 「良いんですか? 魔石1個で銀貨2枚になりますよ」


 「ガトルの数だけで300近い。その上野犬も多い。12人で分けても十分だと思う」


 ドネリク達は、均等割りという事で、魔石の事は口を挟まない。

 お姉さんは直ぐにカウンターに戻ると、事務処理のお姉さんを呼んできて、報酬の確認を始めた。

 直ぐには終らないだろうな。俺達はパイプを楽しみながら待つことにした。

 

 「あんた達はこれで帰ってしまうのかい?」

 「ああ、こいつ等は海辺の村でハンターをしているからな。こいつ等が戻らないと村人が寂しがるだろう。色々と人気者だからな」


 「こっちの2人は俺達で追い出したようなものだったが、やはり、上にいけるハンターだったんだな。すまんな」

 「なに、気にしてませんよ。この村を出たおかげで良い仲間も出来ましたし、今では家まで持てるようになりました。それに、雪深い村では俺達2人で冬は越せませんでしたからね」


 ある意味、良い機会だったわけだ。おかげでレイナス達にめぐり合えたからな。人生、何時どこで何があるか分からないというところだろう。


 それでも、俺とシグちゃんにもう1度「すまない」と言って頭を下げた。

 やはり、ハンターとして気にしていたんだろうな。良心が咎めるという奴だろう。これで彼の気がすめばそれで十分だ。


 しばらくして、お姉さんが俺達に渡してくれた報酬は1人430Lだった。一晩で銀貨4枚以上になったのだから、結構高額な依頼という事になるな。

 その日は村で宿泊し、次ぎの日の早朝に俺達は村を後にした。

 やはり、俺達の居場所は海辺の村だと思う。

 

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