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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
53/128

P-053 準備は大切


 次ぎの朝早く、12人のハンターと村役の壮年の男が2人ギルドのホールに集まった。

 椅子が足りずに数人の若い男女が床に腰を下ろしている。数からすれば彼らが赤のハンターなんだろうな。


 「私は、ライトン村でパンドラを指導しているイリスと言う。王都のガリナム氏から依頼を受けてこの村にやってきた。

 獣が溢れたという事だが、数は多くともガトルと野犬の群れだ。ガドラーに気を付ければこの村を守る事が出来るだろう。

 参加者を募りたい。報酬は頭割りだ。例え私がガドラーを倒しても、それによる魔石は皆で均等に分け合う。ただし、指示は私にしたがってもらう事になる」


坐ったままで、皆を眺めながらイリスさんが告げると、直ぐに床に坐った連中が手を上げた。カレンの仲間はそんなハンターを見て渋々手を上げる。


 「では、全員参加でいいな。私も黒になったばかりだ。連れて来た連中は白の中位。村在住のハンターのレベルも決して高くない。そうなると、こちらから攻撃するのは怪我人を出すだけだ。下手を打つと死人まで出るだろう。基本は迎撃だ。村の門に誘って討取る。

 この村の門の扉は貧弱だ。大至急頑丈にする必要がある。それは村役に頼みたい。幸いな事に現状では、村の南の荒地には獣はいないようだ」


 「村に来るまでは後どれぐらいなんだ?」

 「明後日には確実だ」


 村役の質問に、白のハンターが答える。

かなり近いな。早ければ明日の夜にはやって来るぞ。


 「村を襲うなら北側の門からになる。そちらを重点的にハンターを配置し、南には見張りを置く。明日の夕暮れと同時に村人は家に入って戸を閉めてくれ」

 「分かった。門の扉の補修と、明日の夕刻からの外出を制限しよう。外に何か必要か?」


 「できれば荷車を数台。ひっくり返して広場に壁を作ります。それに焚き火用の焚き木が沢山欲しいですね。焚き火も壁代わりに使えますから」

 「明日の昼には用意しよう。北と南の広場でいいな」


 俺のリクエストに村役が答えると、ギルドを出て行った。早速始めるのだろうか?


 「それで各々の得意な武器を教えて欲しい」


 イリスさんの言葉に、7人のハンターが1人ずつ武器を告げる。

 白5つの2人は槍と魔道師だった。赤7つの連中は片手剣が2人に弓が2人、それに魔道師が1人だ。赤の弓使いは槍も使えると胸を張っていた。


 「弓使い2人を北に回す。南は魔道師が2人いれば、しばらくは持ちこたえられるだろう。その間に北から増援を回せばいい。上手く運べば南には獣が回らないだろうからな」

 「門の外側に焚き木を積んでおけば、そう容易く入れまい。櫓の上に魔道師を2人乗せておけば門を破ろうとする獣は槍と剣で何とかできる」


 白の槍使いがイリスさんに応えた。

 

 「お前に指揮を頼めるか?」

 「いいだろう。俺はドネリク。3日前に獣の群れに挑んだんだが、仲間3人は重症をおってしまった。やはり、群れを村の外で殲滅するのは俺達のレベルでは無理だったようだ。ところで、そこの2人には見覚えがある。確かこの村で薬草を採取していた筈だ。それ程レベルが上がっているとは思えんが、だいじょうぶなのか?」


 「私が保証する、だいじょうぶだ。工夫をする事ができる。レベルは白5つだが、実力は青に匹敵する。ガリナム氏もそんな連中だから私達をここに派遣したのだ」


 それを聞いて、ドネリクが俺達を見て驚いている。かつてはイジメをした相手が自分達を超える実力だと、黒レベルのハンターが言っているのだ。


 そんな話を終えると、赤の弓使い2人を伴って、北の門の検分に出掛けた。

 イリスさんがドネリクに適当な獲物を狩って欲しいと頼んでいたのは、北門にぶら下げて囮にでも使うのだろう。


 北門の広場は30m四方ぐらいの大きさだ。南門と同じような作りだが、早速、村役の立会いの元、村の青年達が門を補強している。門の枠をそのままに丸太を井形に組んでいる。あれなら、後ろから丸太で押さえればそう易々と門を食い破られる事は無いだろう。

 

 「荷車を倒してその後ろにシグ達が着け。弓は門の上だ。矢が足りなければギルドに頼めば用意してくれる。持てるだけ用意するんだぞ。私は門の前に立つ。リュウイとレイナスは門と荷車の左右に立ってくれ」

 「それですと、イリスさんが堪えられませんよ!」


 俺の言葉ににっこりと微笑んで焚き木を指差した。


 「私の前に焚き火を作る。どちらかと言うとお前達の方にガトルが向かうぞ。丸太の塀近くに杭を打ってロープを荷車に結んでおけ、それだけでも少しは足止めが出来るぞ」


 それは散々やった事だ。直ぐに杭を打ってロープを3重に結んでおく。

 レイナスの方もちゃんとできたようだ。荷車の左右に投槍を2本立ずつ立て掛けて、ウーメラを傍に置いておく。万が一にもガドラーが門を破るようなら直ぐに投げられるだろう。赤7つのハンター達は、ギルドに走っていく。たぶん備え付けの矢を貰いに行ったのだろう。


 焚き木を門の横幅に門から20D(6m)程の所に並べた。

 ここに火を点ければ、イリスさんを襲うガトルは焚き火を飛び越えねばならない。その数はそれ程多くないという事だろう。

 

 準備だけをしっかりやっておけば、何時ガトル達が現れても安心できる。荷車の後ろに小さな焚き火を作りポットでお茶を沸かす。


 「しばらくはこの近くで野宿しなければならないな」

 「それなら、あの小屋を使ってください。雨露は凌げますよ」


 村役がイリスさんの言葉を聞いて、俺達に広場の外れにある小屋を指差した。

 レイナスと見に出掛けると、どうやら焚き木を集積しておく小屋らしい。数個の焚き木の束を持ち出して、焚き火の周りにおいて椅子代わりにする。

 小屋は数人が寝るには問題ない。交替で焚き火の番をすれば良いようだ。


 俺達が焚き木の束に座ってお茶を飲んでいると、弓使い達がやってきた。空いた焚き木に座り込むと、ファーちゃんがお茶のカップを渡している。

 恐縮しながらカップを受けっているところを見ると、変な偏見は持っていないようだな。レイナスもそんな光景を見て安心しているようだ。


 「だいぶ持ってきたな?」

 「50本を持たせてくれました。矢羽の色が違いますから、後で自分の矢と区別するのが楽です」

 

 だが、良くもギルドが矢を持っているものだ。そんな疑問をイリスさんが答えてくれる。


 「ギルドはハンターの便宜を図るのはもちろんだが、ギルドを設けた村や町の危機にも対処する義務がある。ある程度はハンター任せになるが、槍や矢はある程度準備しているものだ」


 そう言えば、毒矢の管理をギルドに任せたというのも、そんな事があるからなんだろうな。

 自分達も矢を20本は持っているらしいから、門に近付くガトル達をかなり間引きして貰えるに違いない。

 そういえば、シグちゃん達はどれ位ボルト持ってるんだ?


 「シグちゃん、ボルトの本数は?」

 「17本です。森でだいぶ使ってしまいました」


 たぶんファーちゃんも同じ数だな。なら今の内に作っておくか。


 「レイナス、鳥の羽を見つけてきてくれ。2人のボルトを作れるだけ作っておく!」

 「そうだな。だが、鏃が無いぞ?」


 「釘で代用する。ちょっと鍛冶屋に手伝って貰うよ」

 

 そう言って立ち上がると、イリスさんに断わって広場を後にした。

 鍛冶屋に行って、太い釘を20本買い込み、頭を落としてもらう。ついでに先端部分を焼入れして貰った。

 本来は先端部分を研いでおきたいが、それは時間があればの話だ。

 雑貨屋で小ビンの接着剤と極細の紐を買い込むと、北の広場に戻ってきた。

 まだレイナスは帰ってこない。その間に焚き木の束の中から、ボルトのシャフトに使えそうな小枝を選び出す。


 「何を始めるんだ?」

 「ボルトを作ります。急造ですが、射距離が短いですから、それなりに使えると思いますよ」


 「あんたらは、矢を自分で作るのか?」

 「ああ、シグちゃん達の矢は武器屋で扱ってないんだ。自分達で作るしかないよ」


 「これが、そうです」と言ってシグちゃんが弓使いにボルトを見せている。

 ボルトをしげしげと見ていたが、どうにも納得はしていないみたいだな。まあ、クロスボウがこの世界で使われるようになるにはもう少し時間が掛かるだろう。


 「短すぎる! それに柄が太すぎるぞ」

 「まあ、そうですよね。でも、これは1発でガトルを倒せますよ」


 そんな訳は無い……。2人の顔にはそう書いてある。

 もう1度、じっくりと眺めてボルトをシグちゃんに返している。


 パイプを楽しみ始めたところで、レイナスがやって来た。膨らんだ布袋を抱えている。

 俺の隣にドカリと坐ると、その袋を下においてパイプを取り出した。


 「探したぞ。それでも最後に食堂の裏で見つけてきた。早速作るのか?」

 「そうだな。俺が鏃を取付けるから、レイナスはシャフトの後ろに羽を付けてくれ。間に合わせだが、無いよりマシだ。時間があれば鏃を研げばいい。焼入れは出来てる」


 海辺の村で細工用に作ってもらった折畳みのノコギリでシャフトに切れ目を入れると太い釘を差し込む。取れないように細紐で縛ってウミウシの体液を塗りつける。

 焚き火の前に並べて乾かして、乾けばレイナスが次ぎの作業に入る。


 そんな光景をイリスさんと弓使いが興味深そうに眺めていた。

 夕食を終えて、夜半までに20本のボルトが出来ると、砥石を持ち出して先端を研ぎ始める。

 夜は交替で焚き火の番をするから、暇潰しには丁度いい。

 次ぎの朝には、10本ずつシグちゃん達に渡してあげた。

 2人で50本以上だ。本数と倒せる獲物の数がたぶんつり合うんじゃないかな。


 軽い昼食を食べ、お茶を飲んでくつろいでいると、門番の爺さんがヒョコヒョコと歩いて俺達のところにやって来た。


 「林の出口に集まっとるぞ。かなりの数だ」

 「爺さんは避難してくれ。もう1人は門に近付いたら嬢ちゃん達の後ろで槍を持っていればいい」


 「それじゃあ、ギルドに知らせておくわい。途中の村人に南の門へは知らせて貰おう」


 イリスさんが頷くのを確認して、爺さんはヒョコヒョコと通りを歩いて行った。

 

 「レイナス、残った門番にガトルが1M(150m)まで近付いたら知らせてくれるように頼んでくれ。お前達はそれを合図に門に登ればいい。ベルトをしっかりと柱に縛っておくんだぞ」


 レイナスは門に歩いて行く。ついでに門の隙間から外覗いているようだ。

 門番と話をした後、こちらに戻ってきた。


 「爺さんの言うとおりだ。沢山いるが、まだ向かっては来ない。……頼みにしてるぜ」


 最後の言葉は弓使いに向かって確認するように話してる。今やって来ないならば、夕刻辺りになるんじゃないかな。

 前回のガドラー狩りは夜だったな。今回もそうなるんだろうか


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