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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
37/128

P-037 防備は必要だ


 ガトルを狩った次の日。

 夕暮れ時に、俺達は村へと帰ってきた。ギルドのミーメさんに、狩りの証であるガトルの牙を手渡す。


 「8頭だったのね。怪我は酷いの?」

 「上手く牙は避けられたようです。骨にも達していませんよ。5日もあれば治るでしょう」


 心配してくれるのがありがたい。

 「大事にするのよ」と言いながら。銀貨2枚を渡してくれた。


 次は雑貨屋だな。【メル】を受けた毛皮はダメだが、5枚は剥ぎ取れた。これだけで75Lになるからな。


 俺達がギルドを出ようとしたところに、ローエルさん達が入って来た。

 俺の腕を見ると、テーブルで待っているように言い付かってしまった。


 「俺達は先に行くぞ。タバコを買っておけば良いな?」

 「ああ、頼むよ」


 シグちゃん達がギルドを出て行き、俺は何時もローエルさんが座っているテーブル席に着くとローエルさん達を待った。


 どやどやと4人がやってきた。

 全員が席に着くと、ミーメさんがお茶を運んできた。


 「それで、どうだったんだ?」

 「一応、狩りは成功です。ガトル8頭を狩りました。ですが、御覧の通り、俺は手傷を負ってしまいました」


 そう言った後、「頂きます」とお茶を飲む。

 ローエルさん達も、俺を見ながらお茶を飲み始めた。


 「少し、多かったか……。だが、怪我を負ったのは痛かったな。しかし、お前が怪我を負うような事は考えられないんだが?」

 「シグちゃんを襲おうとしたガトルをファーちゃんがメイスで殴りつけたのは良かったんですが、ファーちゃんの後ろにもガトルがいました。剣を投げて急場を凌いだところをガブリとやられました……」


 「ガトルとの狩りの最中に武器を手放すとは、思い切ったことをしたもんだ。噛み付いたガトルは?」

 「採取ナイフで喉を抉りました」


 その答えを聞いて、一同が俺を感心して見ている。

 採取ナイフだって馬鹿には出来ない。あれは肉厚で丈夫だからな。


 「牙に貫かれると厄介だが、外れてるなら5日もあれば元通りになるぞ。それで、あのカラクリは上手くいったのか?」

 「最初に2頭を狩りました。十分使えますが、問題はやはり次の攻撃ですね。肉食獣を狩るようになるなら、前衛の俺達も少し防御が必要だと思い知りました」


 「皆、それぞれに工夫してるぞ。簡単に革鎧を着る者もいるが、動きが制限されるのが問題だな。それに気が付けば、いよいよ肉食獣を相手に出来る。お前達がどんな工夫をするかが楽しみだな」


 防備を固めれば重くなる。だが俺達ハンターは狩人だから、重い装備では自由に動けないのが問題だ。

 そうなると、やはり工夫ということになるのだろう。レイナスと良く相談してみるか。


 「俺達も期待している。今度は10頭を狩る事を念頭に考えてみろ」

 「分かりました。お茶をご馳走様でした」


 席を立って、皆に頭を下げると俺達の番屋へと向かった。

 番屋に着くと、シグちゃん達が夕食を作っている。具沢山のポトフみたいな感じだな。美味しく頂くにはしばらく掛かるだろう。


 そんなことを考えながら、囲炉裏の傍に敷いてある毛皮の上に胡坐をかく。

 パイプを取出した俺にレイナスがタバコの紙包みを投げてくれ、シグちゃんが25L銅貨を2枚渡してくれた。

 

 「全部で275Lですから、55Lずつです。5Lはタバコ代ですよ」

 「ありがとう」


 シグちゃんにそう言って、レイナスに先程の話をした。


 「やはり、そう言うことになるのか……。青や黒の連中は確かに衣服が補強してあったぞ」

 「これからは、肉食獣も狩るようになるだろう。俺達も考えないとな」


 硬くて軽く、それでいてバネのように粘りのある材質があればいいのだが……。

 そんな材料が無いから革鎧があるんだろうな。


 夕食を終えると、シグちゃん達は編み物を始める。

 俺とレイナスは、お茶を飲みながらどうやって防御をするかを考え始めた。


 「一番簡単なのは、今着ている革の上下をもう1枚の革で補強することだ」

 「……だな。肩と腕、腿と脛と言うところか?」


 「だが、ガトルの牙でこの革は簡単に穴が空いたぞ。犬歯だったらと思うとゾッとする」

 「もう少し、厚手の革が良いと言う事か……」


 俺達の着ている革の上下はリスティンの皮をなめしたものだ。しなやかではあるのだが、刺突には弱い。

 ガトルの牙を防ぐならば、何重にも革を重ねなければならないだろう。

 そう言う意味では薄い鉄板を入れるのも手ではあるが、重くなってしまうのが難点だ。


 「硬い皮を持った獣はいないのか?」

 「そうだな。ガトルの毛皮も薄いんだよな……。しいて言うなら、海老やカニみたいな奴を探すことになるが、あいつ等の甲羅は長く置くとボロボロになるんだ」


 外骨格を使うのか……。その手は使えそうだ。

 そんな外骨格をもった陸棲の奴となると……。いるぞ!


 「レイナス。フェルトンだ。フェルトンの皮膚を使うんだ!」

 「フェルトンだと? まあ、確かに奴らの皮膚は硬い。だが、どうやって手に入れるんだ?」

 

 「だよな……。それが問題なんだよな」


 去年はフェルトンが群れでやって来たけど、今年はそんな話は聞いていない。

 あれだけの群れだと俺達だけでは手も足も出ないが1、2匹なら何とか倒せそうなんだけどね。


 「とりあえず、『次は10匹のガトルを目標にしろ』とローエルさんが言ってたが、直ぐにそんな依頼が出てくるとは限らないだろう。もう少し、考えてみようぜ」

 

 俺の言葉にレイナスが頷いてパイプを取出す。

 俺も一服を楽しんで、そろそろ寝ることにするか。

                ・

                ・

                ・


 しばらく近場で野犬狩りを続けていた俺達に、ミーメさんが思わぬ情報を教えてくれた。


 「リュウイ君達は第2広場までは良く出掛けているようだけど……第4広場でフェルトンを見掛けたハンターがいるみたい。くれぐれもそっちには行かないようにね」

 「フェルトンの群れの怖さは知っています。ありがとうございます」


 「はぐれたフェルトンみたいだから、2匹だけらしいんだけど……。ローエルさん達が森の奥に出掛けたわ」

 

 心配してくれるからありがたいな。

 だが、2匹なら何とかなるんじゃないか?

 そんな俺達の所に、レイナスが依頼書を持ってきた。ガトル3匹……。これも群れをはぐれた奴だろうな。場所は第2広場と書いてある。


 早速、村を出て森に向かう。そして森の入口で休憩を取った。

 小さな焚火を作って各自1杯分だけのお茶を沸かして飲む。

 

 「第2広場の奥にフェルトンがいるらしい。第4広場付近ということだが一応注意は必要だ」

 「ローエルさん達はそっちに行ってるんだろうな。だが、数が多ければ問題だぞ」


 「数は2匹らしい。ミーメさんが教えてくれた。……そして、もしもだ。俺達の前に出て来たなら……」

 「倒せるぞ。2匹ならな。そして例の話になるんだな」


「ああ、だが出て来たらの話だ。こちらから探すのは、どう考えても後々問題が出てくる」


 レベル差がありすぎる。

 依頼をこなす訳では無いから、黙ってればそれまでだが、何れ表沙汰になるのは目に見えてるからな。

 俺達のスタンスとしては、他の狩りをしている時に遭遇して、逃げ切れずに戦ったということにしたい。

 出来れば、ローエルさん達に狩られずに、こちらに逃げて来て欲しいものだ。


 シグちゃんに【アクセル】を掛けてもらって、森の中に入る。

 第2広場までは2時間程の距離だ。何時ものように、槍で足元を確認しながらレイナスが先頭を歩いて行く。

 俺は殿で籠を担ぐ。

 たまに蔦を見つけると丸めて、背中の籠に放り込む。

 

 途中で、シグちゃん達がラビーを2匹倒してガトル用の餌を確保した。

 今夜も夜の狩りになりそうだな。


 第2広場の外れに着くと、レイナス達に籠を預けて俺は薪を集めに出る。

 適当に薪を束ねてシグちゃん達に預けると再び薪を集める。フェルトンが出るとなれば沢山あった方が良いからな。

 

 どさりと、新たに運んできた大きな2つの薪の束を、焚火の傍におく。


 「これで足りるか?」

 「ああ、十分だろう。ラビーは解体してバラ撒いてある。後ろは蔦とロープで柵を作ってあるから、奥からファー達に援護してもらえばガトルはどうにでもなるだろう」


 シグちゃん達の座っている後ろは半円状に蔦が張り廻らされている。

 これならフェルトンにも有効だろう。

 

 焚火の傍に野犬の毛皮を敷いて座ると、シグちゃんがお茶を出してくれた。

 夕食には、まだ間があるようだ。

 ありがたくお茶を頂きながら、パイプを楽しむ。


 日が落ちる頃に夕食を取ると、いよいよ狩りの始まりだ。

 とはいえ、何時やって来るか分からないから、のんびりと待つことになる。

 先にシグちゃん達が焚火の番をするのは何時ものことだ。

 俺とレイナスは、籠から毛布を取出して横になる。


 うとうとし始めたときに、体を揺り動かされる。

 急いで飛び起きると、焚火の傍に置いてあるカップのお茶を飲み干した。

 濃いお茶でたちまち目が覚めていく。

 傍らでレイナスも同じようにお茶を飲んでいた。


 「来たのか?」

 「あっちから物音がするにゃ。ガトルではないにゃ!」


 レイナスにファーちゃんが教えている。

 俺達には聞こえない音も、レイナス達には聞こえるからな。


 シグちゃん達はクロスボウを準備している。

 俺も槍を片手に持って、レイナスをうかがった。


 ぴこぴこと耳を動かしていたレイナスが、俺に顔を向けた。


 「フェルトンだ。間違いない!」

 「数は分かるか?」


 「お前が聞いてきた通り、2匹だな。もう直ぐ、顔を出すぞ」

 「ガトルが厄介だ。出来ればこっちに来てくれると助かるな」


 後ろに振り返ると、シグちゃん達にクロスボウを準備するように伝えた。

 

 「どうやら、俺達に気が付いてるようだ。向こうからやって来る」

 「となれば、焚火を広げた方が良さそうだ」


 焚火は俺達の柵代わりにも使える。沢山運んでおいて良かったぞ。

 焚火の左右にも薪を積むと何時でも火を点けられるように準備をしておく。


 広場の全体がぼんやりと俺には見えるくらいだが、その一角から2匹のフェルトンが姿を現したときには、その姿を捕らえる事が出来た。

 レイナスが左右の薪に焚火から火を移す。


 「シグちゃん。【シャイン】だ!」


 2つの光球が俺達の上空から周囲を照らし出す。

 キチン質の体表面を光らせながら、フェルトンが俺達に近づいて来た。

 

 「俺は右をやる。リュウイは左を頼むぞ!」

 「了解だ。……シグちゃん。出来るだけ接近させて頭を狙ってくれ!」


 先ずはフェルトンだ。前の戦いを思い出せばそれ程恐い相手ではない。接近させないこと。そして焚火に隠れて戦うようにすればガトルよりは容易い筈だ。


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