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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-030 ローエルさんの誘い

 俺の投げた投槍は流木に向かって柄を振動させながら飛んでいくと、ガツン!と目標にぶつかって食い込んだ。

 

 「何だ、この投槍は?」

 「手に持って投げても、精々あの流木まで届くかどうかだ。だが、このウーメラを使って投げると、あれだけ威力が増すんだ」


 今度は、レイナスが俺の真似をして投げる。

 少し目標がずれて、手前の砂浜に突き刺さった。結構深く刺さっているようだ。


 「練習が必要だな」

 「ああ。だが、何となく分かったぞ。今日、1日練習すればあの距離なら命中させることが出来そうだ」


 小型の獣なら弓矢で十分だろうが、少し大きくなると矢で致命傷は与えられないだろう。折角当たっても逃げられる可能性が高い。

 そんな時にこれが使えれば、傷を負って逃げる獣を倒すことが出来る筈だ。


 「イネガルなら、これで狩れそうだな」

 「あれか? まあ、矢では足りないし、槍ではちょっと危険だからな」


 だが、その前に俺達のレベルが足りないな。

 白の5つ以上でないと、そんな依頼は受けられないし、途中で出会ったら逃げるほうが賢明だ。


 そんなある日のこと。

 レイナスと適当な依頼を受けにギルドに行くと、ホールの片隅のテーブルでローエルさんが手招きしている。

 数人の仲間と一緒だということは、また何か大きな獲物を狩る相談をしていたのかな?


 「まあ、座ってくれ。漁師風呂は堪能させて貰ったぞ。全く、よく考えたものだ」

 「番屋を貰いましたんで、小さいのを作ったら大きいのを作れと言われまして……」

 

 そんな話をしていると、ミーメさんが俺達にお茶を運んできてくれた。

 皆でお茶を飲みながら、パイプを使う。


 「実は、イネガルを狩りたい。確か、イネガルは倒したことがあると言っていたな?」

 「逃げられない状態でしたから……」


 「なら、手伝ってくれるか? イネガルが3頭だ。1頭なら何とか狩れるが3頭となると俺達だけでは手に負えん」

 

 思わずレイナスと顔を見合わせる。

 俺達のレベルでは請負えないが、ローエルさん達となら何とか成りそうだ。


 「投槍を2本ずつ作りました。弓もありますから是非参加させてください」

 「あの槍を近くで投げれば十分だ。明日の朝にここで会おう。食料は3日分だ」


 俺達はローエルさんに頭をさげると直ぐに番屋へと走った。

 シグちゃん達に、ローエルさん達とのイネガル狩りを話して、準備を始める。


 2人が鉄鍋をひっくり返して薄いパンを焼き始めるのを見て、俺達も槍と鏃を砥ぎ始める。


 「イネガルが相手だとこの鏃は通らないな」

 「フェルトン用の奴を使うか? あれなら深く刺さるぞ」


 シグちゃん達から釘で作った長い鏃の矢を取出してもらい、再度先端の焼入れを行って砥ぎ始める。

 フェルトン狩りで数本ダメになったから、2人とも7本ずつだ。これと通常の矢を5本入れておけば他の獣にも使えるだろう。


 投槍と今までの槍、そして片手剣や短剣と研ぎが必要な武器は沢山ある。

 夕食を終えても砥ぎを続けて、きちんと装備ベルトにそれらを納めた。

 背負い籠には雨具兼用のマントと寝る為の毛布を入れておく。更に袋に入った俺達の食料と、大型の水筒に水を入れて準備は完了だ。


 翌日。

 朝食を終えると、囲炉裏の火を消して外に出る。

 互いの服装を眺めて、忘れ物が無い事を確認した。

 レイナスの腰にはウーメラがしっかりと差し込んである。俺も自分の腰に手を回して途中で落ちないように深く差してある事を確認した。

 ファーちゃんが俺達全員の水筒を抱えてきた。これは腰に下げる奴だから、めいめいの水筒を受取るとベルトに付けておく。


 「どうやら、これで全部だな。籠は交代で担ごう」

 「ああ、出掛けるか」


 俺とレイナスは、何時もの槍に投槍を紐で括って杖のようにして持つと、先を行くシグちゃん達に付いていく。

 

 ギルドにはローエルさんのパーティが俺達を待っていた。

 魔道師のレビトさんは顔見知りだが、その他に人族とネコ族の男が1人ずつ座っている。

 挨拶もそこそこに森へと出発する。場所は第4広場の先の森らしい。


 「歩くだけで1日は掛かる。少し早めに狩場に付けば準備も出来るだろう」

 「やはり準備が必要ですか?」


 「1頭なら、そんな必要はないだろうが3頭ともなるとな」


 そんな話をしながら、森を進む。

 たまに休みを取って、第2広場で小さな焚火を作ってお茶を飲む。


 第4広場の縁で野宿をすると言っていたから半分以上進んだ勘定だな。

 シグちゃん達女性陣がお茶を飲んでいるのを見ながら、俺達はパイプを使う。

 

 そして、まだ日が高い時分に、目的地の第4広場に着いた。

 ローエルさん達が丈夫そうな革のロープを地面から少し上に張って、しっかりと木に結び付けている。

 更に50cm程の高さにロープを張っている。

 俺達も、ロープを用意してきたことを告げると、広場側に張るように言いつけられた。


 そんな作業をしながら薪を集める。

 作業を終えて、薪の束を焚火の傍に持ち帰ると、シグちゃんがお茶のカップを渡してくれた。

 

 「この辺りは野犬やガトルが出てくるんだ。ロープは柵代わりだ」

 「意外と物騒ですね」


 「ああ、夜間の見張りは手を抜くなよ」


 とは言え、レイナス達がいるからな。勘が良い種族が一緒だと色々と助かるな。

 

 皆でスープを作り、パンにハムを挟んで食べる。

 日干しの魚を焼いて、ローレルさん達に振舞うと、喜んで食べてくれた。

 酒があれば……なんて、言っているけど、確かに酒が欲しくなるな。


 「これが作れるなら、漁師でも食って行けそうだな。……ところで、その細い槍が投槍なのか?」

 「ええ。この間、ヤクー狩りをしていてやはり投槍が必要だと考えて作りました」


 そう言って、槍の紐を解いて、1本をローエルさんに見せた。

 投槍を受取ってジッと見ていたが、突然立上がって投げる構えを取った。


 「バランスは良さそうだが、細すぎないか? これでは上手く投げられんぞ」

 「大丈夫です。散々練習しましたから。今では100D(30m)なら深く刺せるようになりました」


 「これがか? 100D(30m)だと、槍は届くが、刺さるとは思えねえな。刺されば、この穂先だ。十分に役立ちそうだが……」


 男達でパイプを咥えながら投槍に花が咲く。

 森の奥で焚火を囲みながら、そんな話をするのは何となく1人前のハンターになった気分だな。


 「あそこの大木なら丁度100D(30m)はあるだろう。……見せてみろ」

 

 ローエルさんの仲間の一言で、俺が問題の投槍を持って立上がる。


 「あの大木ですね。見ててくださいよ!」


 そう言って、腰からウーメラを引抜いた。

 ウーメラの突起に投槍の柄を引っ掛けると、狙いを付けて勢い良くウーメラを振る。


 ドン!っと言う音を発して大木に突き刺さった投槍を、ローエルさん達が驚愕の表情で眺めていた。


 「手で投げるんじゃないんだな。これに柄を引っ掛けているのか……」

 

 ウーメラを手に取って、大木から回収してきた槍を一緒に見ながら考えている。ローエルさん達の仲間も、興味深そうにそれを見ていた。


 「良くも考え付いたもんだ。これなら弓がいらねえぞ」

 「そうでもないんです。投げるのに立たなければなりませんし、1歩踏み出す必要もあります。そんな事をしたら獲物が逃げますよ。だいたい、これを投げる間に矢なら2、3本放てます」


 「それもあるな。だが、俺達の狩りには役立ちそうだ。帰ったら俺達も作ってみよう。あれを見せられたら、ここにいない連中だって欲しがるぞ」

 「イネガル狩りに使えそうですか?」


 「十分だ。たぶん今までよりも安全に狩れる。……となると、配置を少し見直すか」

 「ファー達は、フェルトン狩りに使った鏃の矢を持ってきた。それも使える筈だ」


 「そうだったな。忘れてた。あれならイネガルの頭を貫通できるかもな」

 「俺にも分けてくれないか。俺も弓を使うんだが、あの鏃は作れなかった」

 

 確かに、使う機会は少ないだろうな。そして釘を叩いて焼入れするなんてことは知らないだろうし。

 そんな男に、レイナスはファーちゃんを呼んで4本の矢を渡していた。残りが5本ずつだから、また作ってやろう。


 「確かに釘だよな。俺も作ってみたんだがこんなに先端を硬く出来なかったんだ。曲っちまうんだ。やはり、武器屋に特注するほか無さそうだ」

 「俺達も次は特注しますよ。これは抜け易く出来てますからね」


 「狩りから学んで武器を改造するのは良いことだ。だが、良くも次々に思いつくもんだな」

 「あまり昔のことは覚えていないのですが……」


 そう言って、ウーメラと投槍の話を始めた。

 大型の獣を倒すことが目的だったが、小型を倒せない。それに、嵩張るのも問題だ。

 何時しか弓矢に淘汰されたことを説明する。


 「なるほどな。俺達は既に弓矢を使っているから、こんな発想は生まれて来ない訳だ。だが、イネガルやガトル以上の獣には有効だ」

 「ああ、あれだけの威力があればイネガルでも一撃になるな」


 「でも、精々持てる投槍は数本です。フェルトンは無理ですよ」


 俺の言葉に皆が頷く。

 群れを狩るにも限度がある。多数を相手にする狩りには向かないからな。

 そして、シグちゃん達が最初の見張りに立つ。

 夜半はローレルさん達が行い、明け方が俺とレイナスの番だ。

 焚火近くに毛布を敷いて、マントを体に掛けると直ぐに眠りに着いた。


 体を揺すられて目を覚ます。

 半身を起こすと周囲を見渡して状況を理解した。俺とレイナスの見張りの番が回ってきたようだ。

 

 「先ずはお茶を飲んで、頭をすっきりさせろ」

 

 ローエルさんの言葉に、俺とレイナスはポットから自分のカップにお茶を注いで一口飲んだ。


 「うぇ……、これは利くな」

 「だが、眠気は飛んで行ったぞ。半分程飲んで水で薄めようぜ」

 

 とても、最後まで飲む気はおきない。渋くて、苦い代物だ。

 それでも、眠気覚ましにはなるようだ。最初の一口で目が冴えてしまったぞ。


 空を見上げると、開けた広場の上には星空が広がっている。

 まだ夜明けには間があるようだな。


 焚火を囲みながら、2人でパイプを楽しむ。革の小袋に入っているタバコは半分位だ。あたらしい紙袋からタバコを摘み出して、小袋の中で混ぜ合わせた。

 

 「半分あるぞ」

 「良いのか? 後2回分位だからちょっと心もとなかったんだ」


 嬉しそうに、紙袋のタバコを革袋に詰めている。

 嗜好品だから、無くなっても困ることはないんだけどね。

 残った紙袋のタバコをパイプに詰めると俺に返してくれた。確かに一服分はありそうだ。

 パイプの灰を落として新たにタバコを詰め込むと、紙袋を焚火に投げ込む。

今度は明け方楽しもう。レイナスも火を点けないでベルトに挟んでいるところを見ると、俺と同じような考えなんだろう。


 「ところで、昨日の話の続きなんだが、弓と投槍の中間的な武器ってあるのか? ファー達はそれなりに弓を使いこなしてはいるが、獣を1矢で倒すのは大型は無理だ。中型も止めは別に差す必要があるだろう」

 「あることはあるんだ。ちょっと作るのが面倒だけどね。そして、使う間隔は投槍と同じぐらい間が空くぞ」


 思いついたのはクロスボウだ。

 強力な矢は確か、ボルトとか言ったんじゃなかったか?

 ガトルクラスなら一撃だろう。それに狙いも弓よりは正確だ。弦を引いたり、携行するのは大変だが、シグちゃんやファーちゃんも今年は15歳だからな。両手で弦を引くのも何とか出来るかもしれないな。

 

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