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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-027 漁師風呂の完成

 家に帰って来ると、レイナスが俺のいない間にサルマンさんと大工さんがやって来た事を話してくれた。


 「あの図面を持って帰ったぞ。お前が武器屋に出掛けたことを話しておいた」

 「途中ですれ違わなかったから、別な道を行ったのかな? さて忙しくなるぞ。先ずは場所を作らないとな」


 「その話はサルマンさん達が決めたらしい。番屋の東に作るそうだ。俺達が火事を恐れて、番屋から距離を取ったことを知って感心してたな。お前が帰って来たら、俺達も手伝うことにしてたんだ」

 

 レイナス達も村人の親切には親切で返したいんだろう。

 小さな村だから互いに助け合う風習が昔から続いているんだろうな。俺のお婆さんの住む村のような感じだからな。


 「となると、また石運びをしなければならないぞ。今度の炉は大きいから作るのが大変だ」

 「任せとけ。お前が作るのを見て、それなりに理解したつもりだ」


 そんな事を言いながらお茶を飲んでタバコを楽しむ。

 シグちゃん達もやる気があるな。


 休憩を取ったところで、漁師さん達の番屋の東に行ってみると、ちゃんと縄張りが作られている。

 南北に、3.6m、東西に6m程の大きさだ。結構大きな建物になるぞ。


 「やって来たか。どうだ。大きいだろう。風呂が13D(3.9m)に12D(3.6m)。炉が7D(2.1m)の大きさだから、十分だろう?」

 「かなり、大きくなりますね。数人が一緒に入っても、まだ余裕がありそうです」


 「漁師仲間は20人はいるんだ。大きくなければ順番待ちが長くなるからな。それとお前が武器屋に頼んでいた物は銅製にしておいたぞ。長く使えるなら少し割高でも十分だ」

 「値段が数倍になりませんか?」


 「お前が心配する話でもないだろうに。俺が漁師にしてやれることはもうあまりないんだ。今まで、散々稼がせて貰ったからな。風呂を全て作れば金貨1枚にはなるだろうが、それ位は余裕で出せる話だ。村人にも使わせて評判になるならもう1つ位は作ってやれるぞ」


 そう言って豪快な笑い声を上げた。

 大工が弟子に指図しながら図面を作っている。

 そして、最大の危惧である、土台の強化を大工に話してみた。


 「リュウイさんが杭を打ってその上に土台を作ったのは正解ですね。そうすることで土台の沈み込みを防ぐことが出来ます。この場所もそうするつもりで、早速ギルドに杭20本の依頼を出しました。後は土台の石ですが、猟師さん達が取りに出掛けましたよ」

 

 大工の目から見ても土台は重要らしい。

 そっちは猟師さんに任せて、俺達は炉の方を何とかしよう。

 と言っても、最初は石運びだけどね。


 4人で海岸を東に向かい、少し平らな石を集めて籠で運ぶ。

 1日で3往復が良いところだな。

 その夜は風呂を焚かずに眠ることにした。

 毎日では薪が持たないからな。明日はシグちゃん達は薪を取るって言ってたから、お風呂に入りたいのかもしれないな。


 次の日。

 最初の石を運んできたら、サルマンさんが俺を番屋の壁際に呼び寄せた。


 「これを見てくれ。下水用に使ったものの余りなんだが、使えそうか?」

 「これって、土管じゃないですか。こんなのが良く手に入りましたね」


 直径20cm程の土管だ。長さは60cm程なんだが、煙突としては申し分がない。それに湯船のお湯を流すのに使えるぞ。

 20m程先は砂地だから少し穴を掘っておけば十分に滲み込んでしまうだろう。

 土管があれば炉を作るのも苦労せずに済む。何と言っても煙突が一番苦労するからな。

 

 3日ほど石を集めたところで、炉の側面を作り始める。

 と言っても、実際に作るのは後になるのだが……。炉の側面と上面をあらかじめセメントモドキで板を作ってそれに沿わせて石を積み上げることを考えたのだ。

 鍋を載せるような炉ではないから、それでも十分だろう。

 

 10日程過ぎた頃、ようやく杭が揃ったみたいで、杭の表面を火で焼いて焦がしたものを、土台の中に打ち込んでいく。長さ2.4m程の杭だが最後の方は中々入っていかないようだ。杭の頭が20cm程出たところで次の杭を打っていく。

 予定より多く全部で30本以上も打ち込んでいた。

 

 そして、土台を作るのだが、3.6m×3.9mの大きさだから、その大きさに大きめの石を並べて側面を作る。裏側にセメントモドキを塗りたくって、中に小石を詰めていく。

 ここで運んで来た小石が足りなくなって漁師総出で集めに出掛けた。

 小石を20cmほど敷き詰めたところで皆で脚で踏み込む。

 それが終ると、セメントモドキを流し込んでさらに棒で突く。

 そんなことで、高さ30cm程の土台が出来上がった。


 「いよいよ湯船だな。確か組み立てながら隣で炉を作ると言っていたな」

 「そうです。間を板塀にすれば問題ないでしょう。排水の方は頼みましたよ」


 そんな会話をサルマンさんと交わしながら、炉の土台を作っていく。湯船の位置が高いから火を焚き易く出来そうだ。

 

 大工さんが太い柱を並べて底板を作り始めた。

 その位置で概略の水を通す位置と場所が分かるので、炉の設置位置を調整しなおす。

 

 そして、武器屋から届いた加熱器を風呂の側面に取り付けて貰って、いよいよ炉を作り始める。

 数本の鉄棒を貰って、灰を下に落とせるようにすると同時に下から空気が入り込むように炉を組み立てていく。

 あらかじめ作ったセメントの板を組み付けて、その周囲を石で積み上げセメントで塗りつけるだけだから作業は簡単だ。それでも、石が足りなくなって慌てて漁師さん達が運んでくれたけれど……。

 

 出来上がった炉は横が50cm長さが1.2mもある大きな物だ。中に銅のパイプが5本も通ってるんだからこれ位は必要だ。大きな棒状の石でセメント壁から配管が落ちないように2箇所で支えているんだが、あまり必要も無かったようだ。かなり頑丈に作ってあるぞ。

 

 最後に大工さんが小屋を作ってくれた。

 その小屋の梁を利用して煙突を立ち上げる。

 土管だから燃え出すことは無いだろうが、少し屋根から高くしてある。屋根は板張りだ。

 周囲の壁と炉と風呂の間の壁も板で張り付ける。

 そして、一月程の期間で風呂が完成した。


 早速、皆で井戸から桶をバケツリレーのようにして風呂に水を入れる。

 200杯と計算していたのだが、1時間も掛からずに風呂に水が入った。板を並べたような蓋をすると、炉に火を入れて状態を確かめる。

 数分もすると、上のパイプから温かなお湯が出て来た。

 後は、時間がどれ位掛かるかだな。

 

 「どうだ。立派なもんだな。先ずは一杯だ」

  

 炉に薪をくべていた俺達にサルマンさんが迎えに来てくれた。太い薪を炉に入れて、俺達も完成祝いの席に同席させて貰う。

 天気の良い浜辺に焚火を作って捕った魚が串にさしてそれを取り巻いていた。

 

 筵のようなところに俺達4人は座ったが、直ぐに酒のカップが回されてきた。

 そして、上機嫌のサルマンさんの音頭でお風呂の完成祝いが始まった。

 

 レイナスやファーちゃんなんか涙目だぞ。

 祝いの席に同席なんて今まで無かったに違いない。

 

 祝いの料理は魚だったが食べても食べても次が用意されてくる。

 どうやら、番屋で漁師のおかみさん達がこの料理を作ってくれているようだ。

 

 そして、クジ引きが始まった。

 どうやら風呂に入る順番をクジで決めるらしい。

 サルマンさんも箱の中に手を入れて小さな木札を取り出したが、それを見て踊りだしたぞ。どうやら、一番風呂の面子に入ったみたいだな。

 そんな箱が俺達にも回ってきた。

 俺は2番でレイナスは3番だ。

 シグちゃん達は番屋に走っていった。どうやら向うでも女性だけのクジ引きが行なわれているらしい。

 

 「どうだ。楽しんでるか? これから風呂だからあまり酒は飲まん方が良いだろう。俺達の後にかみさん連中が入るって言ってな。確かに俺達だけでは勿体無い」

 そんな事を俺達に言って、他の漁師達と酒を飲み始めた。

 だいじょうぶなんだろうか? ちょっと心配になってきたぞ。


 俺とレイナスは宴を中座して風呂を見に行く。

 炉に薪を継ぎ足して、風呂桶を櫂で掻き混ぜた。

 あれから、1時間程経ったいる。そして、もうすぐ入れそうだな。

 2人で桶に水を汲んでおく。熱ければ水を入れれば良いからな。

 

 宴に戻ると、早速サルマンさんに風呂が沸いたことを伝えた。

 すると、焚火の傍に駆け寄って、大声で1番風呂の連中を呼び出した。


 「良いか、光栄にも最初の風呂に入れるんだ。早速出かけるぞ!」


 そう言って数人の漁師をつれて風呂場に向かった。

 風呂の近くで、シグちゃんとファーちゃんが【クリーネ】を猟師さんに掛けている。あれなら風呂が汚れる事は無いからな。


 風呂に行った連中を見送った漁師達もそわそわと落ち着きが無い。

 精々15分位で出てくるはずだから、1時間も待つことは無いのだが、どうしても目が風呂小屋に行ってしまうようだ。

 

 そんな姿を見ながらレイナスとパイプを楽しむ。

 作ってあげて良かったと、声に出さずとも互いの目を見れば分るしな。


 そして、俺の順番がやって来た。

 入る前に薪を足しておく。

 風呂は熱い位だ。少し下の方に体を沈めると、6人では少し広い気がするな。


 「あったけぇな……」

 「ああ。全くだ。これが去年の秋にあればなぁ……」


 「あまり気にするなよ。これがあれば今年の秋や冬は楽しみが増える」

 「作るのが面倒だったんで、済みませんでした」


 「なぁに、気にすんなって。……だが、これだと、村の年寄りが放って置かねえぞ」

 

 確かに、それも良いかも知れない。毎日と言う訳にはいか無いだろうけど、日を決めて招待したら喜ばれるんじゃないかな。


 そして、今度はレイナスの番だ。

 桶に水を入れて運んで行ったぞ。


 「いやぁ、やはり漁師には風呂だな。良い物を作ってもらったぞ」

 「それで、ちょっとお願いなんですが……。村の年寄りにもたまに利用させてはもらえないでしょうか。節々の痛みには風呂が一番ですから」


 「当然考えているさ。それに日を限って女衆にも解放するつもりだ。そして評判が良ければもう1つ作ろうと思ってる。これを作るのに使った金などたかが知れている」

 

 サルマンさんは単なる村の実力者とは違うのだろうか?

 普通なら、これで金を儲けようと考えるだろうに、何時も皆のことを考えている。

 少し声はでかいし、態度もそうだけど、ミーメさんがおじいちゃんを好きな理由が少し分かった気がするぞ。


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