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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
26/128

P-026 漁師さん達の頼み事

 「入ってくるね!」

  

 俺達にそう言うとシグちゃんと2人で風呂小屋に出掛けて行った。

 

 「あまり長く入るとフラフラするからね!」

 「それって、危険じゃないのか?」


 「長く入ってるようなら外から声を掛けるさ。それと、風呂の前には酒を飲むなよ。飲んで入ると一気に酔いが回るからな」 

 「ああ、気を付けるさ」

 

 そう言って、パイプに火を点けた。

 俺も一緒になって火を点けると、レイナスのカップにお茶を注いだ。


 「しかし、お前も不思議な人物だよな」

 「そうか? 至って普通だぞ」


 そう言って、レイナスに微笑むと彼も俺に微笑んだ。

 

 「お前と知り合って良かったよ。ここでなら、俺の育った村と同じように暮らせるな」

 「誰も俺達を余所者と見ないからな。家まで貰ってしまったし……」


 「その内、隣に新しい家を作れ。俺達はここで十分だ。この番屋は昔の暮らしを思い出すんだよな。ファーも嬉しそうだしな」

 「それは、かなり先だな。しばらくは一緒に住もうぜ」

 

 レイナス達のハンター生活はかなり厳しかったのだろうか?

 確かに、最初に会ったときよりもファーちゃんは笑顔を見せるようになったからな。

 もっとも、シグちゃんだってあの村では苦労していたようだからな。

 今のところは全く問題なくハンター暮らしをしているような気がする。

 少しずつ貯えも出来てきたしね。


 そんな所に、2人が帰ってきた。

 軽く上着を引っ掛けてるだけだから、ちょっと問題だな。風呂に出入りする為の服を作ったほうが良さそうだな。


 「お兄ちゃん、あったまるよ!」

 「そうか? 良かったな。よし、今度は俺の番だ!」


 そう言ってレイナスが出掛けようとしたので、慌てて後ろから声を掛ける。


 「少し、桶に水を汲んで行け。そしてちょっと炉に火を点ければ直ぐに温度が上がる筈だ。熱くなったら桶の水を入れるんだ」

 「分った。行ってくるぞ」


 嬉しそうに出て行ったな。

 その間に、シグちゃん達に、簡単な浴衣を作ってもらおうと、紙に概略図を描いて見せた。


 「風呂上りだと、服が張り付いちゃうから、これは良いですね。下着だけを着て上に羽織れます」

 「意外と簡単にゃ。明日雑貨屋に行ってみるにゃ」

 

 後は、下駄かサンダルだな。下駄は難しそうだから、サンダルを作ろうか。

 板を足の大きさに削って、足の甲の部分が入るように紐を通せば良いだろう。


 「体がぽかぽかします。今年の冬が楽しみです」

 「夏だって、ぬるめに沸かして浴びれば汗を流せるよ」


 俺の言葉にうんうんと2人が頷いている。

 喉が渇いたらしくお茶を飲んでるけど、本当は冷たい飲み物が欲しいと思うな。

 

 囲炉裏で一服を終える頃にレイナスが風呂から帰ってきた。

 囲炉裏の傍に胡坐をかくとファーちゃんの入れてくれたお茶を上手そうに飲んでいる。


 「あれは良いな。冬前に作れば良かったと思うぞ」

 「ここを何時引き払うか分らなかったからな。今では俺達の家だから、色々と便利にしないとな。今度は俺の番だ!」


 そう言って、風呂に出掛ける。

 入る前に桶に水を汲んで置く。

 レイナスが薪を少し足したようだから、炉の方は問題が無さそうだ。

 早速服を脱いで湯船に入った。

 ちょっと熱い位だが、風呂小屋の壁は隙間だらけだ。良い風が入ってくるな。

 スノコと衣服を置く小さな棚も必要な気がする。これは明日にでも作っておこう。


 10分程体を温めて、久し振りの風呂を楽しむと、番屋へと帰ってきた。

 早速、風呂上りのお茶を頂く。

 本当は冷えた飲み物が欲しいところだな。


 「レイナス。明日はタライの下の方に穴を開けてくれないか? 風呂の水を交換する時に桶でかい出すのは大変だ」

 「気が着かなかったか? もう作ってあるぞ。海側の側面の下に栓で塞いである」

 

 レイナスの方が気が付いていてくれたようだ。

 お湯が入った状態で穴を開けるのは大変だからな。


 「まだ、隣の番屋には漁師さんがいるかな?」

 「分らんが、それ程遅い時間じゃないから何人かはいるんじゃないか?」


 直ぐに隣の番屋に走って、扉を開けると数人の漁師が囲炉裏を囲んでいた。

 どうやら、サルマンさん達漁師の頭が集まって漁の相談中だったようだ。


 「おう、どうした? 何か問題でも出来たのか?」

 「いや、お風呂が完成したんで試しに入ってもらおうと思いまして……」


 俺の言葉を聞いて何人かが頷いている。

 タライ舟をくれた漁師さんのようだ。

 

 「何だ?」

 

 そう聞いたサルマンさんに経緯をその漁師さんが説明している。

 そして、順番に入ってみることになったようだ。


 「俺が最初だ。入り方を教えてくれ!」

 

 そう言って俺の前に出て来た漁師さんは、50歳を越えたような感じだな。

 俺が風呂小屋に案内すると、俺の説明を聞きながら頷いている。

 少し薪を足しておけば安心だな。


 「分った。服を脱いで裸で入れば良いんだな」

 「あまり長く入らずに温まったら次の人に交代してください」


 そう言って、小屋を後にする。

 俺達の番屋に戻ると、3人が俺を見る。やはり、ちょっと気にしていたみたいだな。


 「サルマンさん達が交代で入ることになったみたいだ。たぶん気に入るんじゃないかな」

 「絶対気に入るって! 漁師は体が冷えるらしいからな。毎晩酒を飲むのが習慣になるらしいぞ」

 

 俺達が5日おきに手渡す酒もそんな使い道なんだろうな。

 そんな事を話しながら、レイナスとサンダル作りの相談をする。


 「確かに、足が濡れてるとブーツは履きづらいからな。それは俺も納得するよ」

 

 2人で板を切ろうと相談していると、トントンと扉を叩く音がする。

 レイナスが扉を開くと、サルマンさんと2人の漁師が入ってきた。


 「夜分に済まんな。どうしても早くにお前さん達と相談したくてやって来た」

 

 そう俺達に告げるサルマンさん達を囲炉裏の傍に案内すると、シグちゃん達がお茶を出す。

 「実は……」とサルマンさんが切り出した話は、お風呂のことだった。


 「あれを作ってくれないか? そして、もっと大きく作って欲しい。数人が一度に入れれば良いのだが……」

 「出来れば作って上げたいのですが、材料を俺達は持っていません。それに大型のボイラーを作らないと大型の風呂は出来ませんよ」


 俺の顔を見てサルマンさんはニコリと微笑んだ。


 「材料とボイラー、それに小屋は俺達が何とかする。お前達はそれを作る監督をすれば良いだろう。そして、その間の猟が出来ないことになるから、1日辺り50Lを出すがどうだ?」

 「2つ、問題があります。たぶんどうやってお湯を作っているかを確認する為に炉の中を覗いたと思います。小さな風呂ならあれで十分なんですが、大きくなると違った形式が必要です。それには鉄か銅を熱でくっ付ける技術が無いとダメなんです。それに、燃やす薪が必要になります」


 「先ずは先の話だが、村の武器屋でもそれなりの技術はあるぞ。鉄よりは銅の方が良いだろう。加工もしやすいと聞いたことがある。後の方は簡単だ。流木を使えば良い。流木の始末に困ってるのも確かなんだ。村人にはなるべく持って行ってくれと頼んでるんだが、それでも溜まる一方だからな」

 

 話を聞くと、船で沖に捨ててくる場合もあるそうだ。

 中々火が付かないから、火持ちはするらしいが、森からの薪の方が遥かに人気らしい。

 要するに使い難たいって事なんだろうな。

 

 そして、遅くまで風呂の形と大きさについて話が弾む。

 最終的に大きさが横1.2m長さ2.4m深さは70cmとすることで話が付いた。

 だが、この大きさだと容量が2000ℓになる。木桶で200回は水を運ばねばならない。

 それに井戸は跳ねツルベだからなぁ……。


 「何の、それ位は漁師のかみさん連中がやってくれる。かみさん連中に一番風呂に入らせれば喜んでやってくれるだろう」

 「それに、この風呂は板で作るには強度が不足しますね。やはり柱を組み合わせて作る必要があります」


 「その辺りは、お前に任せる。明日、大工を寄越すから彼にどんな物を作りたいか説明してくれ。小屋も大工に任せよう。風呂の土台は俺達で作る。それに炉を作るのに必要な石は大きいものを運んでくるつもりだ。風呂は漁師には夢のようなものだ。絶対に作ってくれ」


 そう言って、サルマンさん達は俺達に頭を下げて帰って行った。

 やはり、体が冷えるんだな。

 ここは作ってやるべきだろう。

 3人の顔を眺めると、ジッと俺を見詰めている。

 どうやら、考える事は同じのようだ。


 「真剣に頼んでましたね。リュウイさん、出来ますよね」

 「ああ、出来るさ。だが、一番の問題はどうやってお湯を加熱するかなんだ。明日、大工さんが来たら、こんな形の物を作ってくれるように頼んでくれないかな。俺は武器屋に行って相談してくる」


 そう言って、柱を組み合わせて作る長方形の湯船を絵に描いて説明を始めた。

 材質はヒノキが一番らしいが、ここには無いからな。水に強い材質ならそれで良いだろう。


 そして、明日に備えて横になる。

 初めて村人が俺達に頼ってくれたのだ。キチンと作ってあげよう。報酬を渡すと言ってはくれたが、それは辞退しても構わない。

 リスティン狩りの報酬が十分に残っているし、俺達に宿代は殆ど必要ないからな。


 次の日。

 朝食を終えると早速武器屋に出掛けていく。

 武器屋の親父は鍛冶屋でもあるのだ。

 早速、絵に描いた加熱器の説明を始めた。


 「今回のもおもしろそうだな。銅のパイプを何本か大きなパイプに接続すれば良いんだな。だが、この間隔ではたぶん無理だ。1本ずつ抜いてはダメか?」

 「銅管の間が銅管2本分になるってことになりますか……」


 炉の形を変えれば何とかなりそうだな。平べったい炉になるような気がするぞ。


 「それでお願いします」

 「分った。だが、鉄で作れば半値以下になるがどうする?」


 「鉄でも作れますか?」

 「接続部分は銅合金だが、船の部品にも使われるほどサビには強い。俺にはそれで十分だと思うぞ」


 という事で、鉄で作ることになった。

 直径3cm程のパイプを60cm程の長さで5本並べているそれを受けるパイプの太さは5cm程だ。横の長さは40cm程になるが間隔が5cm程開いているからそうなってしまう。

 加熱されるパイプの長さは60cm程だ。水の出入する太い方のパイプの長さは1mはある。一見すると鉄で作った柵のようにも見える。


 「だいたい理解した。少し時間が欲しいな。10日は掛かるぞ」

 「それで、お願いします。それで幾らになるでしょうか?」


 その値段は銀貨10枚って事になった。この世界ではこれだけでも作るのは大変なんだろうな。

 

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