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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
25/128

P-025 風呂が出来た


 数日経つと、町から薬剤ギルドの関係者が荷馬車と共に、村にやってきた。

 一月程は村のギルドを通さずに薬草を薬剤ギルドに納めることが出来るとのことだ。

 

 収穫したグリルを背負い籠2つで運んだら、560Lで売却出来たし、1日おきに納めるグリルは150Lを下回らない。

 春の薬草収穫は俺達にとってありがたいものだと思う。これである程度の蓄えが出来るから、長雨が続いても大丈夫だろう。


 今日でグリルを終了して、次の薬草を採取しようと番屋で相談を始めた時、シグちゃん達がグリル収穫の総額を発表してくれた。


 「グリルの売り上げは、全部で980Lです。5等分して、1人分を生活費にします。1人196Lですよ」

 

 そう言いながら俺達に分け前を配ってくれた。前のリスティン狩りの分け前と合わせると大分増えるな。

 明日からは、レブルという薬草なのだが図鑑を見ると、ゼンマイワラビにしか俺には思えない。

 柔らかな薬草らしく、背負い籠に投げ込むのは問題らしい。

 少し大きな深めのザルを2個買い込んで、集めたレブルを入れて背負い籠に入れることにした。

 

 「ところで、風呂はどうなったんだ?」

 「そうだな、そろそろ頼んでおいたのが出来たかもしれない。明日の帰りに寄ってみるよ。レイナスに頼みたいこともあるし……」

 

 「何だ?」

 「あのタライ船に穴を開けて欲しいんだ。3箇所程ね。位置は、武器屋に頼んだものが届かないと確定しないんだ」


 俺の言葉に、それ位なら簡単だと言ってくれたけど、なるべく密着させたいからな。結構大変な作業だと思うぞ。


 そして、次の日からはレブル採取が始まった。

 10日もすれば茎が伸びて使い物にならないらしい。季節限定の薬草だな。

 

 その日に採取したレブルを薬草ギルドに売り渡して、武器屋に寄った。

 早速、主人である親方を呼んでもらい、パイプが出来たかを確認する。


 「中々来ないんで心配したぞ。1回で上手くいった。2巻きさせたがこれで良かったか?」

 「十分です。ホントに貰って良いんですか?」


 「新たな技を教えてくれたんじゃ。次に何か武器を揃えるときも安くしとくぞ」


 そう言って、鉄パイプを渡してくれた。

 鉄パイプの太さは3cm程で肉厚だ。2巻きしてあるが上下のパイプ間隔は30cm程あるから丁度いい。それに密に巻いていないから火の通りも良さそうだ。


 早速持ち帰って、タライ船の枠に合わせてみる。

 少し炉を下に作らなくちゃならないようだが、寸法的には良さそうだ。鉄パイプの直管の長さが30cm程あるから炉とタライの間隔を空けることができるぞ。


 さっそく、夕食が終ったところで、お風呂を作る場所を皆で考える。

 最終的に、番屋の西側に掘っ立て小屋を作る事になった。

 

 「柱を4本立てて周りを覆えばいいんだから、簡単に作れるぞ。問題は、土台なんだ……」

 

 タライに水を張るから水平が取れていないと零れてしまうし、タライに変な力が集中するから歪んで使い物にならなくなる。

 出来れば20cm位土台を上げたいところだ。


 「石を運んで枠を組むしか無さそうだな。早めに薬草採取を終えて、岩場を回って帰れば少しずつでも集められるだろう」

 

 そして、10日間のレブル採取が終了した。

 1人あたりの報酬は125Lとまあまあの報酬を受取り、いよいよ本格的にお風呂を作る事になった。

 

 2日程、休んで石を運び。3日目には狩りを始める。

 狩りと言ってもラビーを目当てに集まる野犬の駆除だから、それ程の収入はない。

 1日で50Lが目安だ。

 そして、帰りに森から小屋を作る為の柱をレイナスと一緒に運んでくる。

 10本は欲しいし、使えない場所は薪になるから問題はない。

 それ位の立木は自由に伐採しても大丈夫と、事前にミーメさんから承認も貰っている。


 「【クリーネ】で体は綺麗なんだから、洗い場はいらないだろう。服を脱いで水気を拭き取る場所があれば問題ない。それにタライを置く場所と火を焚く炉が必要だから、これ位の大きさになるかな?」

 「狭く感じるが大丈夫か?炉の周りは火事にならないように広くしておいた方が良いぞ」


 レイナスの一言で風呂場が一回り大きくなった。

 確かに炉で火を焚くからな。火事にでもなったら大変だ。


 レイナスに頼んで、タライの側面の2箇所に穴を開けてもらう。

 曲ったパイプの両端をタライの側面において炭で回りをグルリと縁取れば、位置合わせが終る。

 その大きさよりやや小さく穴を開けてもらう。


 「結構小さいな。だが任せとけ!」

 

 そう言ってレイナスは雑貨屋へと向かって行った。

 俺はタライを載せる台座を作る為に、木杭を作って何本も打ち込んだ。そこに少し大きめの石を並べて積み上げる。

 粘土かモルタルが欲しい所だ。

 ちょっと考えて、俺も雑貨屋へと足を運んだ。


 「石を接着するんですか……。それなら、これになりますね」

 

 そう言って、袋を納屋から持ってきた。

 結構重そうだな。


 「粘土と石灰の粉に砂が入ってます。水で混ぜて捏ねて使うんですよ」


 原始的なセメントだな。使い方は分るが、確かこれはかなりのアルカリ性だったはずだ。

 浅い桶を1つにセメントを2袋購入した。ついでに革手袋を1つ買い込む。今使ってる皮手袋を使って作業をしよう。

 これで、80Lだから意外とセメントは安いのかもしれない。

 

 早速帰ると、桶でセメントを捏ねて石の間を塞いでいく。中からやれば少しみっともなくても隠れてしまうからな。

 20cm程石を積み上げて、その中に砂を投入する。小石混じりに入れて行き、ドンドンと足でしめていく。


 そんなことを繰り返していると小石が足りなくなったので、シグちゃん達を連れて岩場へと急いだ。

 2回ほど小石を運んで20cm程の高さにする。

 最後は表面に水を流してドロドロにしたセメントを流し込んだ。

 これで、見た目には平らな台が出来上がった。


 次の日には炉に使う石を取りに行く。

 なるべく平らな石が欲しいとシグちゃん達に伝えて一緒に運んで貰う。

 俺は少し大きめの石を運んだ。

 

 2日が過ぎて、レイナスの仕事が終ったようだ。

 

 「どうだ。綺麗に丸い穴が開いたぞ」


 得意そうにレイナスがタライを俺に見せてくれた。

 確かに丸い穴だ。

 早速パイプを差し込んでみる。少しきついがちゃんと通ったぞ。

 問題はこの隙間の塞ぎ方だ。

 そして、このパイプの出口からはお湯が出るから、それを受ける板をタライに付けねばならない。

 板を張る位置をレイナスに教えて、穴を塞ぐ接着剤について雑貨屋に聞いてもらうことにした。


 「意外と面倒なんだな。任せとけ!」

 

 そして俺は炉を作ることにした。

 かなり上にコイルが突き出るから、その位置に見合うように少し火床を上に作ることになりそうだ。そして、灰を取出しやすく作る必要もあるだろう。

 そして最大の関門が煙突だ。

 短いと、風呂に入って煙たいし、火の粉が飛ぶ恐れもある。

 2mは伸ばさなければなるまい。


 レイナスが樹脂系の接着剤を購入してきた。それを使ってパイプをタライに接続する。

 風呂に入れる板は、タライの側面に溝になるように板を付けて、そこに落とし込むことで何とかなりそうだ。風呂の片側20cm位だから、邪魔にはならないだろう。パイプはタライの側面から3cm程突き出している。


 いよいよ炉を作る。

 パイプが動かないように石をつみあげて安定させると、炉内の大きさが40cm位になるように石を積み上げてはセメントで固定する。

 コイルの上面をカマボコ状に石を重ねてその奥に煙突を作る。

 煙突は太い柱の周りに石を積み上げるようにして作っていく。

 柱は三脚で吊ってあるから積み上げるにつれて引き上げれば良い。

 そんなことで2日が過ぎた。


 最後に全体を残ったセメントで塗りたくっておいたから地震でも来なければ安心できる。


 その間に、レイナスが風呂の蓋を作ってくれた。

 2分割だからシグちゃん達でも蓋を開けられるな。


 そして、今度は風呂を覆う小屋を作る。簡単に4角に柱を立てた掘っ立て小屋だから1日で骨組みが仕上がった。

 屋根と壁、そして入口の扉は柴を刈ってきてそれを両側から棒で押さえていく。

 村の外れだし、覗きに来るような不埒な奴はいないだろう。

 2日も芝刈りをすると屋根と壁に十分な覆いを作ることが出来た。

 三角に両端が開いているが、中で煙を出すからこれ位は開けておかないと問題だろう。

 

 「さて、終了だ。早速お湯を沸かしてみようか?」

 「これで沸くんですか?」


 シグちゃん達はちょっと懐疑的だな。

 シグちゃんに【クリーネ】でタライを綺麗にしてもらうと、皆で井戸から桶で水を運ぶ。

 結構な大きさだ。シグちゃん達なら2人一緒に入れそうだぞ。

 少しずつ溜まっていく水を見ながらそんな事を考えた。

 レイナスはパイプの接続箇所から水が漏れていないか注意してみている。たっぷりと樹脂を塗りこんで、その後を板で突き込んでおいたからな、そう簡単には漏れないと思うぞ。

 7分目位になったところで作業を終える。中板が入っていることを確認して蓋をした。


 「今度は風呂焚きだ。時間が掛かるかも知れないけど、とりあえずやってみよう」

 

 隣に作った炉に火を焚く。小さく作って全体が暖まったところで太い薪を投入した。後は待つだけだな。

 一服したところで、炉に近いほうの蓋を開けると、手を入れて温度を確認する。上手い具合にお湯が循環しているな。


 「レイナス。手を入れてみろ」


 俺の言葉に風呂に手を入れると、目を見開いて俺を見た。


 「お湯が出ているぞ。あのパイプでお湯が作れるのか?」

 「本当はもっと巻いたほうが良いんだけど、まぁ、そんな感じだ。たまにこの棒で掻き混ぜないといけないんだけどね」


 薪を継ぎ足して、外から風呂場を眺める。良い具合に壁の上に開けた場所から煙が抜けていく。

 そんな光景を眺めながら、レイナスとパイプを煙らせた。


 「これで、お湯に入れるのか?」

 「ああ、入れるぞ。出来れば冬の前に作りたかったが、今では俺達の家だからな。色々と便利にしようぜ」


 「出来れば、ファーを最初に入れさせてくれないか?」

 「シグちゃんと一緒で良いよな。俺達は後から1人ずつゆっくり入ろう」


 夕暮れが迫る頃、お風呂が沸いた。

 少し熱くして、入り時に用意した桶の水で温めれば良い。

 俺達が入るときには少し薪を燃やせば十分だ。

 

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