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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
22/128

P-022 リスティン狩り


 森で手に入れたビーベルの値段は2匹で50L。

 シグちゃんが8Lずつ俺達に分けてくれた。12Lは食費ってことだろう。それでも、これでタバコが買えるな。レイナスと顔を見合わせて直ぐに購入する。

 

 番屋に帰る前にギルドに寄って掲示板の依頼書を確認する。

 まだまだ俺達には荷の重そうな獣の狩りが並んでるな。

  

 帰ろうとしたところで、暖炉際で数人で話し合っていたローエルさんが俺達に手を振っている。

 シグちゃん達を先に帰して、俺とレイナスでローエルさんのところへ歩いて行く。


 「まぁ座ってくれ。レビトとサドミスそれにゾルトネンだ」

 

 俺達が座ったところで、ローエルさんが話を始めた。

 どうやら、大型の食肉用の獣を狩る相談らしい。

 群れを相手にするのと、大型で角を持ってるからそれなりの危険はあるらしいのだが……


 「基本は追い込み猟に近い。出来ればその一端を任せたいのだが……」

 「ところで、狩るのは?」


 「リスティンだ。この季節は山から降りて来る。小さな牛ぐらいだが大きな角はそれだけで危険だ。青レベルの獲物ではあるのだが、前にお前達の働きを見せてもらった。レベル以上の働きが十分出来る。獲物を捕らえる一端を任せられると考えているのだが……」

 「出掛けるとしたら、何時ですか?」


 「明日には出掛けたい」


 俺とレイナスは顔を見合わせた。

 ちょっとレベル差がありそうな気がするな。

 だけど、……やってみたい気もするのは確かだ。

そして、俺とレイナスは同時に頷いた。


 「やってみます。ですが、大型獣を狩るのは初めてですからよろしく教授してください」

 「やってくれるか。なら明日の朝、ここに来てくれ。食料は3日分あれば十分だ」


 俺達は直ぐにギルドを出ると番屋へと走った。

 番屋の扉を開けると、早速囲炉裏の前に座り、2人に狩りの手伝いの話を始める。


 「リスティンですか。村でそんな獲物を仕留めて来たハンターを見たことがあります。大きかったですよ。そして鋭い角が2本前に出てました」

 「私達で狩れるのかにゃ?」


 「ローエルさんは大丈夫だと言ってくれた。俺も何とかなると思ってる。俺達に一端を任せたいらしいから、俺達だけで狩りをすることになるんだが……」 


 そう、前置きをして簡単な対策を打ち明けた。

 俺達4人が【アクセル】状態で、柵に足止めした状態で狩れば良い。

 シグちゃん達は立木に隠れながら弓で攻撃すれば良いし、俺とレイナスは槍で挑めば角で怪我をすることも避けられるだろう。


 「柵は蔦で作ればいい。要するに足止めだけだからな」

 「矢はたくさんありますから私とファーちゃんは大丈夫ですよ」


 「となると、槍を今夜作れば良いな。食料は3日分と言ってたぞ」

 「それ位は何時でもバッグにあります。それにパンを焼いておきましたから、それも持ってけます」


 まだまだ夜は冷える。古い毛布を1枚持っていこう。

 そして、俺とレイナスの槍を作って明日に備えることにした。

                ・

                ・

                ・


 次の日、早速4人でギルドに出掛ける。

 既に10人近いハンターが集まっているようだ。

 

 「来てくれたな。これで大猟が期待できそうだ」

 「あまりお力にはなれないと思いますが、よろしくお願いします」


 俺達はそう言って、暖炉際に集まった連中に頭を下げる。

 こういうのは、最初が肝心なのだ。相手を持ち上げておけば向うだって悪い気はしないし、実際相手のほうが遥かにレベルが上なのだ。

 

 「フェルトンの話は聞いている。頼りにしてるぞ」

 

 そんな事を言いながら次々に握手してくれる。

 そんな光景を、見ていたローエルさんが椅子から立ち上がって俺達に出発を告げる。

 カウンターのミーメさんに手を振って、俺達もその後に続いてギルドを出た。

 

 村を北に抜けて、森への道を歩く。

 折角罠を仕掛けたんだが、またダメになりそうだな。

 そんな思いで、第1広場を抜けて更に東へと進んだ。


 「止まれ!一旦ここで休息だ。焚火を作ってお茶を飲もう!」


 先頭を歩くローエルさんが振り返って大声を上げる。

 早速周囲の森に分け入って少しばかりの薪を取ってくるとパーティ毎に小さな焚火を作ってお茶を沸かした。


 「ここが第4広場だ。お前等は来た事が無いかも知れんが、良い狩場なんだぞ」

 「まだ先なんですか?」


 「もう少しで森が一旦切れる。そこがリスティンの通り道なんだ。大きいから吃驚するなよ」

 

 少し離れた焚火でパイプを使っている男が俺達に教えてくれる。

 子牛程あるといっていたな。だとするとどうやって運ぶんだ?


 そして、休息が終ると、また歩き始める。

 もう、昼は過ぎてるな。夕暮れ前に狩場について野宿と言うことになるんだろう。

 

 2時間程歩くと森の木々が疎らになってくる。

 更に歩くと、突然に森が切れガレ場が姿を現した。

 50mほど先に再び森が広がっている。

 地形が少し窪んでいるところをみると、枯れ沢みたいだな。

 大雨が降ると、ここが川になるんだろう。だから表土が流されてガレ場になってるに違いない。


 「止まれ!……早速野宿の準備に入る。場所は何時もの所にするぞ。各自、両手一杯の薪を取って、あの大岩の下に集合だ!」


 ローエルさんの言葉に俺達は薪を探す。

 ガレ場には流されてきた枯れ木が沢山あるから、探すのに苦労はしない。

 そして、目印の大岩に薪を持ち込むと、既に何人かの先客がいる。


 「薪はそっちにおいといてくれ。この場所はハンターの野営地として長く使われてるんだ。20人は一度に寝られるからレベルが上がったら来ると良い」

 

 そんな事を教えてくれたが、確かに大岩だと思っていたら岩に平べったい岩が乗り上げたような形になった場所だった。

 両側は開いていたんだろうが、小さな岩が重ねられて壁のようになっている。

 これなら雨や風も防げるだろう。そんな岩屋の手前には2m四方の炉が切ってあり、太い枝で三脚まで作られていた。

 

 全員が揃うと、大鍋に携帯食料を入れて早速夕食作りが始まる。鍋の傍には各パーティのポットが置かれるから野趣満点だな。

 

 「聞いてくれ、リスティンの群れは朝方ここを通る。俺達はそれを狩るんだが、良いか、6頭を目標にするんだぞ。あまり多いと運ぶのが容易ではない。俺達は殺戮者ではないんだからな。群れの後ろを矢で狙って、槍と長剣で止めを刺す。配置は……」


 俺達はガレ場の右側だな。左はサドミスさんのパーティが受け持つようだ。一番下にローエルさんのパーティが着く。


 後の話を聞くと、矢や火炎弾で攻撃して昏倒したところを槍や長剣で止めを刺すらしい。

 俺達の弓矢担当は腕が良いからな。期待できそうだぞ。


 順番で焚火の番をしながら夜を過ごす。

 俺達はパイプを楽しみ、シグちゃん達は編み物をして過ごすのは何時もの通りだな。


 「いよいよだな」

 「ああ、だが俺達にはこれがある」


 そう言って俺が作った槍を研ぎだした。

 手作りだがフェルトンで実績もある。長い角を持っているといってもこれを投げれば致命傷を受けるだろうな。


 日の出前に起こされて朝食を食べる。

 どうやらリスティンの移動は早朝に行なわれるらしい。

 

 「姿を隠して待つんだ。必ず岩を背にしてガレ場の上から見られないような場所を選ぶんだぞ。そして狙うのは群れの最後尾のリスティンだ」

 

 そして、レビトさんが俺達に【アクセル】を掛けてくれた。

 ローリイさんの言葉通りに、ガレ場を降りながらそんな場所を探したが、なかなか良い場所が見付からずにいた。


 「あれが良いにゃ!」


 ファーちゃんの言葉に俺達がその場所を見詰める。

 確かに大きくはないがちょっと岩が張り出した場所があった。しかも後ろには大きな岩がある。

 俺とレイナスは槍を持って飛び出すんだから、シグちゃん達がちゃんと隠れるばしょさえあれば問題ないな。

 

 「レイナス、あそこにしようぜ」

 「そうだな。何も全員がそこにいる必要はないんだからな」


 ローエルさん達に俺達の場所を手を振って告げると、シグちゃん達の下に陣取ってパイプを取り出す。

 槍を肩に置くと、石に腰を降ろしてひたすら待つことになった。

               ・

               ・

               ・


 「何か聞こえるにゃ!」

 

 ファーちゃんの声にレイナスが他のパーティに手を振って合図をする。


 「来たのか?」

 「間違いない。俺にも聞こえるやり過ごして、最後尾の奴を狙うぞ!」


 シグちゃん達が矢を取り出した。

 鎧通しを使うのか? まぁ、あれなら深く刺さるけどね。


 「矢の刺さったリスティンに槍を打ち込む。少し離れていようぜ」

 「そうだな。俺が上手で良いか?」


 俺は軽く頷いた。

 数m離れた場所に、岩に張り付くようにしてガレ場の上手を見ていると、ドドド……と音を立てながら大きな獣の群れが走ってくる。

 なるほど、長剣ぐらいの長さの角だ。

 そして、確かに大きい。


 ガレ場の石を蹴立てるようにして群れが俺達の目の前を通り過ぎようとしている。

 そして、急速に足音が小さくなった時、甲高い弓音が聞こえた。

 直ぐに槍を構えて、その場で嘶いたリスティンに向かって槍を投げる。

 前足を上げて立ち上がった所に上手く槍を投げたので腹に突き刺さった。そのまま前のめりに倒れたから更に深く槍がリスティンを貫く。

 

 隣では横腹に刺さった槍を払おうと角を振り立てているところに、2本続けざまに矢が首に突き刺さる。そして更に2本の矢がリスティンの胸にも突き立った。


 思わず、俺とレイナスが互いの腕を掴んで力を入れた。


 「やったな!」

 「おお!」

 

 少し遠巻きにリスティンを眺めていると、サドミスさんがやって来た。


 「上手くやったな。次ぎは内臓を抜いて首を落とせ。首を下にして尻を上げれば血抜きが出来る。素早くやるんだぞ。そして1人俺と来い。運ぶ道具を拵える」

 「俺がこっちをやる。リュウイはサドミスさんと行ってくれ!」


 早速、ナイフを取り出してレイナスガ解体を始めた。

 そして俺とサドミスさんは盛るに入って、互いに数本の棒と蔦を手に入れる。


 「これでソリを作るんだ。ソリに載せればお前達でも2頭は運べる。作り方は……」

 「大丈夫です。イネガルを狩った時にソリで運びましたから」

 

 そう言って、レイナス達が待っている場所を目指す。

 リスティンの解体現場は血の海だな。

 それでも頭と内臓だけでかなりの重量軽減になるだろう。


 太目の棒を2本片側を革紐できつく縛る。

 下を開いて横木3本縛ったところに、縦にもう1本棒を通しておく。

 通常は2本で良いのだが、重量があるから3本の方が良いだろう。そして2頭のリスティンを載せて蔦できつく縛り付けた。


 「これも貰って行こうぜ」

 

 レイナスがリスティンの角を根元から斧で叩き折ってバッグに仕舞いこんだ。

 これで終了だな。ガレ場を上に曳くことは出来ないから、ゆっくりと下に向かってソリを引き始めた。


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