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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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G-019 フェイズ草を探そう


 朝、起きてみるとなにやら音がする。

 寒い朝だから囲炉裏の熾きを掻き立てて薪を継ぎ足す。直ぐに薪が燃え出して番屋の中を照らし出した。


 それにしても、寒さが酷いぞ。

 ポットをもって、外に出ようと戸を開けた時に、その原因が分った。

 アラレが降っているのだ。

 雪はたまに降るとか言っていたが、寒いからアラレになったんだな。

 そんな事を考えながらポットに水を汲んで番屋へと戻った。


 「ご苦労さん。だいぶ冷えるな」

 「あぁ、アラレが降ってるよ。積もりはしないだろうが、寒さは酷いね」

 

 薪を継ぎ足していたレイナスに教えてあげる。

 ちょっと驚いてるな。


 「「ほんと(にゃ)!」」


 俺の脇を2人が駆けて行って扉から外を見ている。

 そして直ぐに帰ってくると、囲炉裏の傍で温まってるぞ。


 「とはいえ、罠は見てこなきゃな。俺とレイナスで行こうぜ」

 「そうだな。特に2人がする事も無いだろう。2人でゆっくり休むと良い」


 温かな朝食を終えると早速、2人で森に向かう。先頭のレイナスが槍を持ち、俺は籠を背負っている。

 まぁ、罠に掛かるかどうかは、向こうにも都合があるのだろう。

 ぽつりぽつりって感じだな。

 それでも、ラビーを村の宿屋兼食堂に持っていくと、1匹10Lで引き取ってくれる。

 冬は薬草採取も出来ないから貴重な収入源と言う訳だ。

 たまに、罠のラビーを野犬が襲っているが、これは見付け次第何とか倒している。ラビー以上に貴重な収入源だ。出来ればラビーでなく野犬が掛かってくれると助かるんだがな。


 第二広場に着くと、目印の革紐を探す。

 そして、罠を1個ずつ確認していくのだ。掛かっていなくても、罠を調整するから、結構な時間が掛かる。

 

 「掛かってるぞ。これで2匹目だな。まだ半分も見てないから、今日は大猟だと思うぞ」


 レイナスがそんな事を言ってるが、それはタヌキの皮算用って奴だろう。

 終ってみなくちゃ分らない。

 そんな感じの猟が罠猟の特徴だと思うぞ。


 結構寒いけど、獲物が獲れてればあまり気にならないな。

 レイナスがまた獲物を罠から外し始めた。

 確かに大猟だ。

 

 だが、こうも大猟だと……。やはり、やってきたぞ。

 

 「レイナス。後どれぐらいだ?」

 「そうだな。後数個だ。どうした?」


 罠を手直ししているレイナスに声を掛けると、振り向きもせずに応えが返って来た。

 

 「お客さんだ。10匹前後だと思う」

 「どれ位、持ちそうだ?」


 辺りを眺めてみる。幸い、俺達を狙っているのは広場の奥からこちらを覗う群れだけだな。


 「何とか最後までは持ちそうだ。だが、油断するなよ」

 「あぁ、後3個だ」


 その3個が問題だな。

 少しずつ近付いて来てるぞ。

 槍のカバーを外してベルトに挟む。どうやら時間切れらしい。


 「先に行くぞ!」

 

 そう言って籠を投出して広場に向かう。野犬も一気に走り始めた。

 野犬とすれ違いざまに槍を突き刺して力で放り投げる。

 飛びついて来たところを槍の柄で思い切りバットを振るように撥ね飛ばす。


 「こっちは任せろ!」

 

 レイナスが背中の片手剣を抜いて参戦してきた。

 たちまち1匹の胴を切り裂く。

 結構切れ味が良さそうだな。

 そんなレイナスを見ながらも振り向きざまに1匹の横腹に槍の石突きを力ずくで突き入れる。


 そして、周囲に残りがいないことを確認すると、野犬の牙を採取ナイフで叩き折った。毛皮はレイナスが素早く剥ぎ取っていく。


 「野犬の方がみいりが良さそうだな」

 「あぁ、ラビーが6に野犬が5だ。どっちにしても今日は大猟だよ」


 ラビーが60Lで野犬が75Lってとこだな。これも、4人で分配だ。1人25L位にはなるんじゃないかな。

 あまり長くいると次の群れがやってきそうだ。

 レイナスとともに足早に森を離れて、帰路に着く。


 みぞれは何時の間にか止んでいた。

 北風が強まりグッと寒さが強まってきた感じだな。

 早めに帰って囲炉裏の傍で温まろう。

               ・

               ・

               ・


 村に帰って、雑貨屋に獲物を卸し、ギルドに向かった。

 ギルドで野犬の牙の報奨金を貰って番屋に帰る。

 扉を開けて中に入ると、マントを戸口に引っ掛ける。

 「帰ったよ。結構な獲物だったよ」

 

 そう言って囲炉裏の傍で編み物をしていた2人にお金を渡すと俺達に50Lずつ渡そうとしたので慌ててその手を押しやる。

 

 「俺達は一緒のパーティだから報酬は山分けだ。25Lで良いよ」

 「でも、私達はここにいましたから……」


 「気にするな。俺も賛成だ」

 

 レイナスが笑いながらシグちゃんに告げた。

 ここにいたと言っても、編んだものは俺達も頂いてるんだから、間接的には参加したと一緒だと思う。でないと、ありがとうって手袋や靴下を貰えないからな。


 囲炉裏の毛皮の敷物にドカリと腰を下ろすと、直ぐにファーちゃんがお茶のカップを渡してくれた。

 レイナスとパイプを取出しながらお茶を頂く。

 シグちゃん達も編み物を止めて一息入れるようだ。


 「しかし、外は寒いぞ。この村はもっと寒くなるんだろうか?」

 「そんなことはないと思う。さっき雑貨屋で聞いたが今が一番寒い季節だそうだ。冬至が来てから一月は経つそうだ。これからは暖かくなって行くさ」


 となれば、今が一番寒い季節に違いない。

 確かに寒いと言っても、井戸に置いてある桶の氷の厚さは1cmを越えた事が無い。

 寒く感じるのは、この服装と隙間風のせいなんだろう。

 ここで長く暮らすんなら、少し番屋を改造する事も考えなくちゃな。

               ・

               ・

               ・


 次の日は朝から良い天気だ。すっかり空は晴れ渡っている。

 今朝が寒かったのはこのせいなんだろう。

 

 何時ものように、裏の井戸からポットに水を汲んでくると、シグちゃん達が不安げな顔を俺に向けた。


 「レイナスさんの熱が高いんですって……」

 「熱だって!」


 俺は、直ぐに囲炉裏の反対側に寝たままのレイナスのところに行った。

 レイナスは頭に絞った布を乗せてボンヤリした目を俺に向けた。


 「すまんな。だが、単なる流行病だ。数日で良くなる」

 「欲しい物があれば言ってくれ」

 「あぁ、今は無い。ありがとう」


 昨日は俺と一緒だったのに……。

 額に触れてみると酷い熱だ。インフルエンザみたいなものかな?


 とりあえず、自分の席に着くとシグちゃんがお茶のカップを渡してくれた。

 ファーちゃんは心配そうな顔をして、レイナス額の布を桶の水に浸して絞ると、再び額に乗せている。

 

 「フェイズ草があれば良いんですが」

 「どこに行けば買える?」


 「たぶん雑貨屋で……」


 シグちゃんの言葉を途中まで聞いて、俺は番屋を飛び出した。

 買えるんなら簡単だ。

 雑貨屋に飛び込んで、吃驚しているお姉さんにフェイズ草を注文した。


 「申し訳ありません。10日程前に切らしてしまいました。町に注文を出してますが、この季節では入荷しないかも知れません」

 「仲間が苦しんでるんだ。誰か持ってる人に心当たりはない?」

 「そうですね。……ひょっとしたら、ギルドで分るかも知れませんよ。この店にも何個かギルドから回して貰いましたから」


 「ありがとう!」って礼を言うと、今度は急いでギルドに向かう。

 扉を蹴飛ばすようにして開けると、そのままカウンターに向かった。


 「済まない、フェイズ草が欲しいんだ!」


 吃驚して、俺を見ているミーメさんに尋ねた。


 「フェイズ草は今の季節では少し難しいわよ」

 「持ってる人はいないの?」


 「知らないわ。でも、生えてる場所なら教えてあげられる」


 そう言って、カウンターに地図を持ち出して教えてくれた。

 それ程離れていないようだ。森を東の方に大きく迂回して崖に出る。フェイズ草はその崖に生えているらしい。

 そして、今の季節だと特徴的な茎が枯れているから探すのが難しいらしい。

 フェイズ草の採取季節は夏から秋と言うことだ。


 「今の季節では無理なのか?」

 「これを見て、これがフェイズ草なの。薬効成分はこの球根部分だから、もし枯れた茎が見付かれば、……そこを掘れば球根が見付かる筈よ」


 「この付近に獣は出るの?」

 「あまり聞かないけど、一応、野犬の領域よ」


 「ありがとう!」って礼を言うと、急いで番屋へと戻った。

 何とかなるかも知れないな。

 

 番屋の扉を開けるとシグちゃん達が俺を見た。

 急いで、身支度を始めたのを怪訝そうに見ている。


 「残念ながらフェイズ草は無かったよ。だけど生えてる場所を教えてもらった。これから採りに行って来る」

 「あれって、夏から秋の採取ですよ。今行っても……」


 「球根があるかも知れないってミーメさんが言ってた。大丈夫だ。待っててくれ」

 「「私も一緒に行く(にゃ)!」」

 

 「だが、野犬の領域らしい。それに、ファーちゃんは兄貴を見ていて欲しい」

 「野犬なら平気です。私は一緒に行きますよ!」


 そう言って、シグちゃんがファーちゃんに「任せて!」なんて言ってるぞ。どうしても付いて来るつもりのようだ。


 「ちょっと待ってるにゃ!」

 

 そう言って、ファーちゃんが番屋を飛び出していく。

 シグちゃんと顔を見合わせて首を傾げた。

 身支度は終ったけど、レイナスを1人にするわけにもいかない。

 その間に水筒に水を汲んでおく。

 そして、戻って来たファーちゃんは大きな袋を持っていた。


 「お弁当にゃ。6個入ってるにゃ」

 「ありがとう。じゃあ、レイナスを頼んだよ。場合によっては明日になるかも知れない」

 

 俺とシグちゃんはマントを羽織って杖を持ち番屋を出ると、浜辺沿いに東へと歩き始めた。

 結構風があるな。

 シグちゃんは毛糸の帽子を被っているから暖かそうだ。

 バッグから布を取り出して頭に被る。それだけでもだいぶ違うぞ。


 早足で歩いて行くと、村が何時の間にか見えなくなった。そして森が海の近くまで迫ってきている。

 少し渚のほうに移動して歩いているが、湿った砂は良く締まって歩き易い。

 2時間程歩いたところで最初の休憩を取った。

 乾いた砂地に2人で座り水筒の水を飲む。

 そういえば朝食を取っていなかったな。次の休憩で朝食を取るか……。


 「この辺りの森はだいぶ深そうですね」

 「そうだね。だけど、森の中に入らなければ危険は無いようだ。それでも、野犬はいるらしいから気を付けてね」


 しばらく休んだところで、再び東へと歩き出す。

 遠くに少し尾根のようなものが見えるが、あれが目的地なのだろうか?

 どう考えても、あそこに着くのは昼を過ぎてしまうな。

 そんな事を考えながらひたすら東へと歩いて行く。

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