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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-017 野犬の群れ


 ビート狩りを6日続けて、俺達は1人120Lを受取った。思いも寄らない高収入だな。早速雑貨屋に出かけて革の上下を手に入れた。

 町や、村で少しずつ仕上げが異なるようで、この服は縫目にそって飾りのビラビラが沢山付いている。そしてブーツを履くとまるでインディアンだな。

 これに装備ベルトを付ければ……、完璧だ!


 「リュウイさん、似合ってますよ!」

 「そうか? やはり、これは俺に合う感じなんだよな」


 シグちゃんの褒め言葉もなんとなく嬉しく感じる。

 値段はブーツを含めて250Lに値引いてくれた。少し大きいとのことでずっと売れなかったらしい。

 ついでに、タバコの包みを買っておく。シグちゃんは番小屋に持っていく酒を買い込んでる。

 

 何と言っても格安の宿代だ。4人で5日が20Lなんて物件は何処にも無いぞ。

 自炊が大変だけど、これはシグちゃん達がやってくれるから助かってる。

 たまに、薪を届けてあげるんだがその都度お返しが来るんだよな。

 

 俺達の番小屋に着くと、早速ファーちゃんと一緒にシグちゃんはお酒を届けに出掛けた。


 「リュウイ、似合うぞ」

 「おだててもダメだよ。だが、これはあったかいな」


 「流石に夏は着てられないが、その下に綿の上下とセーターを着れば冬の狩りはだいじょうぶだ」

 

 そう言って、俺にお茶を注いでくれた。

 パイプを囲炉裏で付けると、ガトルの毛皮の上に座り込む。

 そんな俺を見て、レイナスもパイプに火を点けた。


 「罠猟は何時から始めるんだ?」

 「もう少し、後だな。荒地に草が無くなると、ラビーが森に集まってくるからそれからが狙い目だ」


 という事は、それまでの間は他の仕事を探さなくちゃならないな。

 

 「それでだ、リュウイ達が雑貨屋に出掛けてる間にギルドの掲示板を見てきたんだ。

 野犬が荒地にかなり出ているらしい。しばらくは野犬を狩ろうと思うんだが」

 「俺は構わないがシグちゃんやファーちゃんはだいじょうぶなのか?」


 「ガトルすら狩れたんだから問題は無いだろう。大きな群れはヤバそうだが、10匹程度の群れを狙えばそこそこ収入が得られるぞ」

 「任せるよ。小さな群れなら何とかなりそうだ」


 レイナスは慎重派だからな。小さな群れなら問題無いだろう。

 荒地は隠れる場所が無いから、フォーメーションの組み方が難しそうだ。そこは俺とレイナスでカバーしなければなら無いとは思うんだけど……。


 「貰っちゃった!」


 そんな声と共にシグちゃん達が帰ってきた。

 ビートの足を10匹分付けてあげたのがよかったのか? 何時も、魚を貰ってるから渡したんだけど……。


 早速レイナスが腰を上げて桶を覗いてる。

 

 「海老か。これだけでも20Lはするぞ」

 

 今夜は海老が食べられそうだ。

 村の宿よりも良いものが食べられるチャンスがこの番小屋にはあるな。

 

 ちょっと贅沢な食事を堪能して、布団に入る。

 だいぶ夜は冷えてきたけど、囲炉裏の薪は十分あるからな。

 そして待望の布団もあるし、今夜は暖かくして寝られそうだ。

               ・

               ・

               ・


 朝早くギルドに出掛けたものの、ギルドの中は閑散としていた。

 依頼掲示板の俺達向けの依頼書は3枚しかなかったぞ。それも、全て野犬狩りだ。

 よく見ると、場所が少し違っているだけだな。


 「どれを狩るかだな」

 「あぁ、これから見ると群れの大きな奴は森になるな。荒地だとこれがあるだけだ」


 森の野犬は20匹以上だが、荒地の方は10匹となっている。

 これは選択以外の問題だな。

 

 「やはり荒地を選ぼう。群れが森に移動してるから、残ってるのは小さな群れという事だろう」

 「分った。荒地にしよう」


 レイナスの言葉に同意すると、後を見る。

 シグちゃん達も特に異論は無いようだ。


 俺達は掲示板から依頼書を剥ぎ取るとカウンターのミーメさんのところに持って行き、確認印を押して貰った。

 野犬の牙は1匹15Lで毛皮も売れるから、10匹で200Lになる。

 実際には、シグちゃん達が【メル】を使う場合もあるだろうから、それ以下になりそうだな。


 「さて、出掛けるぞ!」

 

 レイナスの言葉に俺達は頷くと、後について歩き始める。

 村の北門を門番さんに挨拶して出て行くと、畑の畦伝いに西に歩いて行く。

 1時間も歩けば、畑が尽きて荒地がずっと見渡す限りに続いていた。

 葉を落とした雑木林があちこちに散らばっている。


 野犬数匹は山の村でもやっていたからな。

 あの時に比べればレイナスもいるのだ。10匹同時は辛いかもしれないが、何とかなりそうな数ではある。


 そんな俺達の殺気に気付いたのか、少し西に歩いても野犬の姿は見付からない。

 

 「やはり、餌で釣るしかなさそうだな」

 「ラビーを狩るのか?」


 「そうだ。ファー、シグちゃんとあれをし止めてくれ!」


 レイナスが後を振り返ると、近くの藪からこちらを覗っているラビーを指差した。

 直ぐに2人が弓を持って左右に展開していく。

 何時の間にか連携を覚えたようだ。


 「どうやら、夜の狩りになりそうだぞ」

 「そうだな。何処で待つ」

 

 周囲を見渡して、少し大きな茂みを持つ小さな雑木林で待つことを決める。俺が先行して場所を確保し、レイナスは2人の帰りをここで待ってもらう。


 少し歩いたところにあった雑木林は数本の雑木があるだけだが、密集した茂みがあるから、茂みを後ろにしておけば安心出来るな。

 雑木から薪を取って小さな焚火を作る。

 ポットを載せておけば、皆が来た時に直ぐにお茶が飲めるな。

 そして上手い具合に、此処は茂みの南側だ。冷たい北風が後ろの茂みが防いでくれる。


 少し足を伸ばして近くの雑木から更に薪を集める。

 2回ほど運べば今夜の薪は十分だろう。


 のんびりとパイプを吸っているところに、3人がやってきた。

 レイナスの両手には2匹のラビーが下がっている。

 

 「此処か。これなら暖かく野犬を待てるな。リュウイ、もう少し薪を集めてくれ。俺はこれをバラしてくる」

 「そうだな。夜は冷えるからな」


 俺が両手で薪を運んできた時には、焚火に串焼きの肉が4本炙ってあった。

 鍋にはスープが入っている。


 そんな夕食を食べたところで、お茶を飲みながらパイプを使う。

 

 「こん夜来なかったら、明日は一旦村に戻ろう。全く野犬がいないと言うのもおかしな話だ」


 別な要因があるという事か?

 前に此処で野草を採取していた時はだいぶ見掛けたからな。

 ひょっとして、全ての群れが森に行ったという事なのかも知れないな。


 さて、交替で眠ろうか……。そんな事を言い出そうとした時だ。


 「来たぞ。準備しておけよ。だいぶ数が多そうだ」

 

 俺と、レイナスが槍の穂先のケースを外して腰にケースの紐で巻きつけておく。

 シグちゃんとファーちゃんが弓を取り出して矢筒から矢を1本取り出した。


 「シグちゃん、レイナスの合図で光球を3つ上げてくれ。この上と、左右前方100D(30m)だ」

 「分りました。何時でも合図してください」


 俺達の会話を聞いていたレイナスが頷いた。

 俺にも、奴等の気配が分るような気もするが、これは殺気というやつだろう。やばそうな気配が左側から近付いてくるのが分る。


 「シグちゃん!」


 レイナスの声で、シグちゃんが次々と光球を上空打ち上げる。

 そして、周囲を照らし出した時、とんでもない数の野犬が俺達を遠巻きにしているのが見えた。


 「【アクセル】、【アクセル】……」


 シグちゃんが俺達にアクセルを掛けてくれた。

 かなり体が軽くなったぞ。

 目の前の野犬は50を越えていそうだが、体が軽いから何とかなりそうだ。

 

 「レイナス! 2人を頼む」


 そう言って槍を横に構えて数歩前に出る。

 ある意味、この槍は6尺棒に近い。真中付近を肩幅に広げて持てば、棒術に近い形で振るうことが出来る。

 数回槍を振り回して、元の形に戻ると、やや足を前後にずらして野犬を睨む。


 右手に火炎弾が2個飛んで奴等の中に落ちて爆ぜた。数匹の体が日に包まれる。

 それが合図になったのか、一斉に俺目掛けて走ってくる。それに向かって俺も走る。


 先頭の野犬を下から振り抜いた杖で顎を砕くと、その場で回りながら、槍先でやつらを牽制する。

 数匹の顔を切り裂いたような感触があったが、確認などしていられない。

 ひたすら数mの範囲を回りながら槍を振るう。

 振るうたびに鈍い手応えを感じる。


 少し離れた場所の野犬に矢が突きたってその場に倒れるのを見ながら、ひたすら槍を振るい続けた。

 少し遠巻きになった群れはこちらから追い掛けて倒し捲る。

 振るうたびに野犬の鳴き声と、群れが放つ唸り声だけが辺りに聞こえていたが、不意に、それが途絶える。


 何時の間にか野犬の群れが遠ざかり、光球の下にはおびただしい野犬が地面に倒れていた。


 「終ったのか?」

 「どうやら凌げたようだ。お前がいてくれて良かったよ」


 そんな事を俺に言うレイナスだが、彼の周りにも相当数の野犬が倒れているぞ。

 

 疲れた体を焚火の傍に持って行くと、ドサリと言う感じで座り込む。

 レイナスも焚火越しに座るとパイプを取り出した。


 パイプを使いながら、ファーちゃんが入れてくれたお茶を飲む。

 ホッと一息付ける感じだな。


 「こんなにいるとは聞いてないぞ」

 「全くだ」


 そんな事を言っているレイナスの足にシグちゃんが【サフロ】を使って手当てしている。どうやら噛まれたようだな。


 「大丈夫か?」

 「大丈夫だ。シグちゃんに【サフロ】を掛けて貰ったからな。ファーは魔力を殆ど使ってしまったらしい」


 ネコ族の魔力は少ないからな。

 そして、全て使い切るほどだったのは回りを見れば良く分る。

 30は越えているだろうな。


 「やはり埋めるのか?」

 「いや、このままで良いだろう。夜も遅いが毛皮を剥いだら村の近くまで移動だ。まだ半数近くいると思うぞ」


 シグちゃんだって魔力は心細いに違いない。

 4人でお茶を飲み終えると、早速野犬の毛皮を剥ぐ。

 そして、毛皮の数は46枚。牙の数は52個。やはり火炎弾が直撃したら毛皮は剥ぐ価値が無いな。


 「しかし、良く倒せたな」

 「お前が言うか? だが、確かにそうだよな。良くも倒せたものだ」


 成功報酬の20Lと合わせると、1,030Lだ。銀貨2枚以上が分配されるな。

 そうなれば、次に手に入れるものを考えなければならない。

 それとも、少し貯めこんで良い武器を買う足しにするか……。


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