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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-016 ビート狩りは箒を使う


 布団がようやく手に入ったが、その布団を見て驚いた。これはダブルサイズだよな。

 一緒に寝るのを気にしないのだろうか?

 ちょっと聞いてみたら、「暖かく寝られるから良い」って言ってたけど、理性を保てるかが問題だよな。

 まぁ、囲炉裏を挟んでレイナス達もダブルだからそれでいいのかもしれないけどね。

 そして、流石に毛布はシングルだった。

 それでも、意識してしまうのは、俺だけなのかな?


 「リュウイ。この包み紙を使って、番屋の隙間を塞ごうぜ」

 「そうだな。前の紙も取ってあったんだよな」


 雑貨屋で、糊と刷毛を買ってきて、壁板にペタペタと紙を貼っていく。

 冬は此処でも北風みたいだから、北側の板壁を中心に貼っていき、余った紙で東西の壁を貼っていく。

 当然、全てを貼るなんて出来ないから、残りは少しずつ貼っていけば良い。


 それでも、秋風が吹き込んでいた部屋だったが、貼り終えるとそれ程気にならなくなった。

 囲炉裏の火も真直ぐ上がっている。

 南の壁まで貼り終えれば、結構冬も暖かく過ごせる気がするぞ。


 西の荒地で何日か薬草を採りながら、薪をせっせと運んでおく。

 雪は降らないがみぞれは降るらしい。そして冬は雨が多いそうだ。冬の雨なんて聞いただけでも寒そうだ。

 冬の貯えは薬草を積んで稼げば何とかなるだろう。そして、何とかならないのは薪なのだ。村で購入出来ないから、これだけは自分達で準備しなければならない。

 番小屋の土間の片隅に隙間なく積み上げると、これも隙間風を防ぐ効果があるようだ。

 左右の土間の壁際にどんどん積み重ねていった。

 そして、軒下にも積んでいく。いくらあっても困る事は無いからな。


 フェルトンを森で倒してから10日が経って、ようやく森へ俺達も入れるようになった。

 それを一番喜んだのは村人だった。冬越しの薪が取れないので困っていたそうだ。

 梯子を背負って数人連れで森に入る村人を、薬草採りの傍らでだいぶ見掛けたぞ。

 俺達も、薪を籠で運んでいる。5cm程の広葉樹なら枝を切っても良いそうだ。鉈を買い込んでどんどん運ぶことにした。


 「冬は薬草が採れないから、罠猟をしようと思うんだが……」

 「やり方は任せるよ。無論協力するぞ」


 囲炉裏でパイプを咥えながら、冬の仕事の段取りを考える。

 冬は当然薬草が獲れない。春先まで待たねばならないのだ。

 その間の4ヶ月ほどを無収入にするわけにはいかない。携帯食料や、ライ麦、ジャガイモ等を購入するための予算はギリギリ稼いではいるのだが、心許ないからな。

 

 話を聞くと、革紐で輪を作って、ウサギに似たラビーを捉えるらしい。

 胡散臭い罠だが、20個も仕掛けると、2日に1匹は掛かるとのことだ。ダメ元ってやつかな。確かに気晴らしにはなるだろう。


 「罠を見回りながら、ファー達に弓でラビーを狩ってもらうつもりだ」

 「それなら、結構獲れるんじゃないか?」


 ある意味、俺とレイナスは用心棒に近いな。罠は片手間ってやつだ。

 そして、野犬が出れば積極的に俺達が狩れば良い。それも報酬が出るからな。


 「罠猟に必要な物はレイナスに任せる。俺はシグちゃん達の鏃を研いで置くよ」

 「そうだな。それと、リュウイもその服ではなく、革の上下にした方が良いぞ。冬は寒いからな」


 確かに俺だけが未だに綿のGシャツにGパンだからな。足はスニーカーだ。そしてスニーカーが、かなり痛んできたことは確かだ。


 「もう少し稼げば何とかなるだろう。マントもあるからもうしばらくは大丈夫だ。ところで、革の上下と、ブーツでどれ位になるんだ?」

 「そうだな。ピンキリだから、銀貨2枚もあればそれなりのものが手に入るぞ」


 後で、幾ら持ってるか確認しよう。銀貨1枚以上はあるんだよな。それ程先にならずとも買えるかもしれないな。

 

 ある日、何時ものようにギルドに入って、レイナスと掲示板を見る。

 この頃少しは、依頼書の文字が読めるようになってきた。

 表音文字でローマ字に似た構成になっている。

 

 その日、赤レベルの掲示板にあったのは、ビートを50とある。それで60L。しかも50以上狩った場合は1匹に付き1Lとある。

 赤の掲示板にあってそのレベルも赤の3。薬草があまり取れなくなった秋の終わりには嬉しい依頼だな。

 

 「レイナス。ビートは狙い目か?」

 「そうだな。依頼を受けて置こうぜ。狩りの仕方は森の道すがら教えるよ」


 早速、依頼書をカウンターのミーメさんに渡して確認印を貰う。

 

 「この依頼書なんだけど、ここをよく読んで欲しいわ。期間が今日から6日間になってるでしょ。7日目に町から商人が受け取りに来るの。だから、今日だけでなく、6日間はこの依頼が継続されるの。最初のビートは50匹で60Lだけど、それ以降は全て1Lになるわ」

 「大丈夫です。冬前にこの依頼は助かります」


 そう言って、俺達はギルドを出て早速森に向かった。

 歩きながら、レイナスがビートのことを教えてくれる。


 どうやら、バッタの一種らしいが大きさは手の平ぐらいあるといっていた。

 そのビートを何故欲しがるかは、依頼書にかいてある。後ろ足2本で1匹と数えるという事だ。

 

 「足なんかどうするんだ?」

 「どうやら、食べるらしいぞ。俺は食べたことは無いけどな」


 まぁ、イナゴやハチを食べる人もいるぐらいだから、大きなバッタの足なら食べてもおかしくはないだろうな。

 俗に言う珍味と言う奴だろう。

 とはいえ、大きなバッタに違いない。どうやって狩るかが問題だな。


 「ファー達は弓を使えば良い。フェルトンの時に使った長い鏃なら抜くのも楽だろう。それに20D(6m)より手前に近づけるから結構当るんだ。そして、俺とリュウイはちょっと道具がいるな」

 

 そう言って、4m程の竿を森から切り出して、先端部に雑木の枝を沢山革紐で縛りつけた。ちょっと柄の長い箒に見えなくもない。


 「これで叩くんだ。上から打ち付けるような感じで押さえつけると言った方が良いかな。雑木の枝で動けないところを採取ナイフで頭を叩けばいい。後は足を根元から切るんだ」


 子供の遊びのような狩りだが、そんなんでバッタを捕まえられるのか?

 それでも、ホイ!って渡された長い箒を持って森の中を進んでいく。


 第2広場が俺達の狩場だ。

 何時もは薬草を採るんだが、この季節になってあまり取れなくなったんだよな。

 

 「いたぞ。あれだ!」

 

 レイナスの指差す先には確かにバッタがいた。広場の草叢に紛れるように緑色をしている。

 ファーちゃんが矢を矢筒から抜き取って弓につがえると、そうっと近付いていく。

 そして矢を放つと矢が震えている。当ったようだな。

 急いで矢を回収すると、先端に大きなバッタがもがいていた。


 足元に下ろして採取ナイフで頭を叩くと、それで大人しくなる。ゆっくりと胸から採取ナイフで足を切り落とせば1匹分だ。薬草採取の籠にポイって投げ込んでる。

 それを見て、シグちゃんも早速バッタを見つけて矢を放った。

 矢が草叢で震えてるから当ったみたいだな。


 「最初は俺が獲るからリュウイは辺りを見張ってくれ。ビートを狙って野犬が来ることがあるんだ」

 「分った。ついでにこの辺りに焚火を作っておくよ。休んだ時に直ぐにお茶が飲めるからな」


 俺の言葉に頷くと、レイナスは箒を持って広場を探し始めた。

 俺も、持ってきた短槍を大きな木の根元に突き刺して、辺りを注意しながら薪を集める。

 何度か往復して薪を集めたところで、火を点けた。

 ポットに水を入れて、焚火の近くに置いておけばそのうち沸いてくる。


 1時間もしないうちに、休憩を取るようだ。

 早速お茶が配られ、レイナスと俺はパイプを咥える。


 「結構取れたな。次ぎはリュウイの番だ」

 「おう、任せとけ!」


 シグちゃんの方は2人で30匹ほど狩ったようだ。レイナスは11匹と言っていたから、昼を過ぎる頃には100匹近く獲れるんじゃないか?


 そして、いよいよ俺の番だ。

 先ずは獲物を探す。

 次に、そう……っと近付いて、箒の一撃。

 箒をその場に置いて先のフサフサしている場所を、見ると柴に絡まってバッタがもがいている。

 採取ナイフで軽くポカリとやると昏倒するから、その隙に後足を採取ナイフで切り取った。

 そして小さな籠に両足を放り込めば、先ずは1匹分だ!


 少し低い姿勢で探すのが良いみたいだ。

 次々とバッタを狩る。

 虫取りは色々やったけど、こんな獲り方は初めてだな。

 難しいのは、バッタとの距離の目測だ。

 何度か外してしまったのは、この目測の誤りが殆どだ。意外と、ビート狩りはシグちゃんのように弓を使うのが良いんだろうな。

 だけど、弓を持たなくともそれなりに狩れるのがこの狩りの良いところだ。


 少し疲れたところで焚火の方を眺めると、皆が俺のことを見ている。

 どうやら、休憩のようだな。

 俺も、焚火に向かって歩いて行った。


 「どうだ。おもしろいだろう?」

 「あぁ、子供に返ったようだよ。結構獲れたぞ」


 そう言って、レイナスの前に籠を出した。

 後足が山になってる。


 「リュウイさん、だいぶ獲りましたね」

 

 そう言って、俺の前に置かれた籠には、大きな山になった後足があった。

 どう見ても、俺達の2倍は越えてるぞ。


 「どれ位かな?」

 「どう見ても100は越えてるぞ。もう少し獲って今日は終わりにしようぜ」


 そして、再び立ち上がり狩りを始める。

 今度は30分ほどで切り上げて、帰り支度を始めた。


 「10匹分ずつ縛らなくちゃならないんだ。足を20本並べて草の茎でこう縛る。ちゃんと数を数えるんだぞ。多い分には問題ないが、少なければ信用に係わる」

 

 細かな作業はレイナス達に任せて、俺は薪を集める。

 幾らあっても困らないからな。

 籠に詰め込んで、焚火のところに戻ってくると皆が俺を待っていた。


 そして、焚火に土を掛けて消すと、村へと森を歩いて行く。


 「130だ。4匹足りなかったが、直ぐに数を合わせたぞ」

 「大猟だな。薬草採りよりも上になるんじゃないか?」

 「何時でもあるわけではないからな。冬の手前の半月ほどが猟期なんだ」

 

 まぁ、後5日はこれ位の収入が期待出来るってことだろうな。

 それが終れば、手持ちとあわせて銀貨2枚を越えるから、革の上下を買う事が出来るかもしれないぞ。

 

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