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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
114/128

P-114 グリスト狩り


 ローエルさん達がやって来たのは、シグちゃん達がお弁当を持ってギルドに来てからしばらくのことだった。

 サドミスさんのパーティと一緒だから7人になる。俺達と合わせて11人だが、果たしてどんな狩になるんだろうな。


「待たせてしまったか? このまま出掛けるぞ」

「そうですね。今夜は第二広場の奥まで行きたいところです」

 

 腰を上げてカゴを背負うと、槍を杖代わりに持った。

 今回は全員が槍を持っている。レビトさんも2mほどの槍を持っていた。


「リュウイも今回は槍ってことだな。穂先を片手剣にしたのは考えたな」

「俺も短剣を使ってるぞ。サドミスも同じだろうが」

「さすがに片手剣は考えなかったぞ」


 驚いてるのか、感心してるのか微妙なところだ。まあ、戦ってみればわかるだろう。ローエルさん達はグリストを狩ったことがあるんだろうか?

 同じような武器を持つことにはなったけど、果たしてローエルさんはどうやって狩るんだろうな?


 森の手前で昼食を取り、第二広場で小休止、第二広場から次の広場に向かう途中の森の中で今夜は野営をする。

 冬のさ中だから風が冷たいけど、森の中はそうでもない。焚き火を囲んで毛布にくるまれば十分に寒さを防ぐことができる。

 

 具沢山のスープは、サルマンさんからの頂き物の魚の切り身が入ってる。野菜にも出汁が浸みて良い感じだな。

 サドミスさんがお代わりしてるけど、俺にはこの1杯で十分だ。


「リュウイも槍を作ったということは、やはり離れた場所から狙うということだな?」

「あの姿ですからねぇ。狩を始める前に毒消しも必要だと用意しました。それと、もう一つ、今レイナスが作っているのが俺達の切り札です」


 パイプを咥えながらずっとレイナスは投げ槍の柄を作っている。ローエルさん達にはそんな風に見えたんだろう。レイナスの後ろに4本の投げ槍が束ねてあるから、今回用に余分に作っていると思ったに違いない。


「あのウーメラで槍を投げるんだろう? あれは強力だからな。俺も期待してるんだ」

「そういえば、数を聞いてませんでしたが?」

「7匹らしい。青のパーティが確認してくれた」

 やはり、数が多いのが問題だよな。上手く銛が効けばいいんだが……。


「あれは銛の柄になるんです。ロープを付けた銛を打ちこんで木に縛りつけられれば、俺達の狩もしやすくなると思いまして」

「銛だとすぐに外れてしまうんじゃないか? 奴の体は獣と違って柔らかいぞ」


 そんなことから、銛先が回転することを説明したのだが、それなら外れても傷口を広げられるとの評価だった。

 やはり、体組織が柔らかいのだろうか? 外骨格に近い構造だからな。それなら体の固い表皮で止まってくれるかもしれない。


「ものは試しというからな。リュウイ達は、それを使ってみてくれ。ダメでも、あの槍なら効果が高そうだ」

 

 やはり、一度相手をしていると次の狩に繋がるんだな。

 そういう意味ではローエルさんの誘いはありがたく思うが、グリストの狩は本来なら黒の連中の獲物らしい。ようやく青になった俺達にはちょっと荷の重い依頼だと思うんだけどね。

 交代で焚き火の番をして睡眠を取る。早ければ明日にも狩が始まりそうだ。


 翌日、簡単な朝食を取ると直ぐに第4広場へと向かう。冬は下草が枯れているから歩きやすいのだが、あまり急ぎ過ぎないことも大事だとレイナスが教えてくれた。

「冬の汗は乾きにくいし、何といっても体を冷やすんだ。北の狩では命に係わるんだぞ」

 たぶん、昔の狩でそんな目に合ったんだろう。

 小さなファーちゃんを連れて、レイナスは苦労をしてきたようだ。

 だけど、今では俺に冗談を言うことも多くなったし、ファーちゃんの笑顔がいつでも見られるようになった。

 このままずっと一緒にいられればいいんだけどね。


「よし! ここで休憩だ。サドミス、先行偵察をしてくれないか?」

「任せとけ。レイナス、一緒に行けるか?」


 第4広場に出たところで、俺達は休憩を取ることになったのだが、レイナスはサドミスさんの誘いに槍1つを手に付いていった。

「レイナスが一緒なら問題あるまい。サドミスの目は良いんだが、ネコ族の勘はそれを上回るからな」


 焚き火を作りながらローエルさんがファーちゃんに説明してるけど、兄さんを褒めてもらって少しはにかんでるようだ。

 シグちゃんと毛布に包まってたき火に手をかざす姿は、シグちゃんの姉さんにも見えるな。やはり、俺達を置いてレイナス達は大人になったんだろう。


 焚き火にお茶のポットを乗せて、俺達はパイプに火を点ける。

 レイナス達が南に向かってからだいぶ経つがまだ戻ってこない。ローエルさんはまるで心配していないから問題はないんだろうが、少し遅い気もしてきた。

 ファーちゃんが不安げな表情で南をじっと見ていたが、急に表情が柔らかくなった。


「帰って来たにゃ。もうすぐ姿を現すにゃ」

 その言葉に、ファーちゃんが見ている方角を見てるんだが、俺にはさっぱりだ。

 やがて、がさがさと繁みを揺らしながら2人がこちらに戻って来た。


「やはり7匹だ。5匹が固まって、2匹はその後ろにいる」

 ファーちゃんが渡したお茶のカップを美味そうに飲みながら、サドミスさんが地面にグリストの位置関係を描いて説明を始めた。

 どうやら小さな獣を狩ったらしく5匹が争うようにして獲物を貪っていたようだ。


「こっちの2匹は少し小さいですね。胴体の大きさはフェルトンよりも小さい感じです」

「となるとこっちの群れに付いてきておこぼれを狙うってことだろう。そんな習性を聞いたこともあるぞ」


「となると、5匹を狩ってもこちらは攻撃してこない可能性もあると?」

「分からんが、その可能性もありそうだ。だが油断はするなよ」


 最初に5匹を狙い、2匹はその動きで判断するとローエルさんは言っていたから、場合によっては2匹が逃げ出すとも考えているようだ。

 攻撃してきても時間差があるし、小型であれば大型のグリストよりは対処し易いとの思いも、脳裏にはあるんだろうな。


「ここから、10M(1.5km)も離れていねぇぞ。準備ができた状態で進んだ方がいいな」

「ということだ。準備を早めに終えてくれ」


 すでに銛は柄が付いているし、40mほどの細いロープも結ばれている。投げ槍をまとめた紐をほどき、ウーメラをベルトに差し込んだ。

 荷物は狩場まで持っていけそうだ。背負い籠を俺が持つと、シグちゃん達もクロスボウを背中に担いでいる。ボルトケースにぎっちりとボルトが詰まっているから、15本は入ってるんじゃないかな。その上に数本を纏めて腰に差してるぐらいだ。


「できたか? サドミス、案内してくれ!」

「おう、任せとけ。レイナス、先ずはその銛を投げてみろ」

 

 返しが開いた銛はサドミスさんには頼もしく見えるんだろう。レイナスも真剣な表情で頷いている。

 となれば、俺は端の方から打ち込んでいくか。都合4本で獲物の数には1本不足だが、そこはローエルさんの技量に期待しよう。


 南の森もあまり藪は無いようだ。結構見通しが効くけど、まだグリストの姿は見えない。

 まだまだ先かと思っていた矢先、サドミスさんの足が止まった。


「いたぞ。やはり5匹だな。残り2匹はもっと南にいたんだ」

「サドミス、真ん中を狙えるか?」

 ローエルさんの問いにサドミスさんとレイナスが頷いた。

「なら俺は右からだ。リュウイは左を頼む。足が4対あるからかなり素早いぞ」

 俺の後ろにシグちゃんと20台後半の男が槍を持ってやって来た。急いで、毒消しのビンを飲み干して、簡単に攻撃手順を打ち合わせる。

 俺が銛を奴の左手に打ち込む。その間、シグちゃん達はグリストの前で囮になってもらう。


「銛が効かなければ、投げ槍を打ち込んでくれ、体液が流れれば少しは奴の動きが鈍る」

「分かりました。銛を先に投げ槍を2本打ち込みます。シグちゃんもボルトを頼んだぞ。近づいたら、火炎弾を頭に放ってくれれば向こうも躊躇してくれるはずだ」

「だいじょうぶですよ。それぐらい上手くやりますから」


 俺が片手を上げて準備ができたことを伝えると、サドミスさんが軽く槍を上げて了解を告げてくれた。

 サドミスさんが立ち上がったら狩の開始だ。

 ジッと、サドミスさん達が隠れている立木の影を見る。やがて、銛をウーメラにセットしたレイナスが立ち上がると、グリスト目がけて駆けだした。


「ウオォォ!」

 大声を上げて俺も銛を掲げるとグリスト目がけて駆けだした。

 俺に一瞬体を向けようとしたグリストに火炎弾が炸裂する。傷を負わせたかはわからないけど頭と尻尾を、シグちゃん達のいた方角に向けたから、安心して銛を放った。


 深々と銛が胴体に突き刺さると、銛先に結んだロープを近くの木に一巻きして力の限り引き絞る。

 ズリズリとロープがこちらに引かれているからしっかりと銛先がグリストに食い込んだはずだ。

 そのままロープを結んで、投げ槍を投擲する。

 ウーメラで投げた投げ槍は柄まで体に突き通る。やはり、表皮はフェルトンよりも柔らかそうだ。


 頭をシグちゃん達に任せて、尻尾の毒針をなんとかしようと槍を持って後ろに回った。奴の感覚器官は全て頭にあるから、後ろからなら近づけるだろう。

 グリストが毒針を頭の方に向けたすきを狙って、尻尾に思い切り槍を叩きつける。

 ちぎることは出来なくとも、片手剣の打撃も半端ではない。大きな傷を負わせたようで、尻尾の動きが鈍くなったのが分かる。


 体を俺の方にむけようとしたとき、がら空きの横腹に槍が突き入れられたようだが、通常の穂先では表皮を貫通しただけであまりダメージを与えたようにも思えない。

 グリストが向きを変えるのに合わせて俺も尻尾の後を追う。小さなスキをついて再び薙刀のような槍を尻尾に叩きつけた。


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