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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-011 森の異変

 俺達に向かって走って来たガトルの群れの手前に火炎弾が炸裂した。

 それに驚いて怯んだ一瞬、先頭のガトルの背に矢が突き刺さる。

 

 キャン!っと叫んで昏倒した仲間に目もくれず、残りのガトルが俺達に向かってくる。

 

 槍を短く棍と同じように持つと「ウオォー!」っと叫び声を上げて俺に向かってきたガトルに突っ込んで槍を振り下ろす。

 ゴズ!っと鈍い手ごたえが腕に伝わる。

 続いて次のガトルに柄を突き上げるようにして空中に放り上げた。

 落ちて来たところを槍で一突き。

 

 血塗れの槍を引抜いたところでレイナスの方を振り返ると、最後のガトルに止めを刺しているところだった。


 「無事か!」

 「あぁ、大丈夫だ。4匹なら何とかなるな。もう2匹位は増えても大丈夫だろう」


 俺達が槍の血を草で払っているのを見て、シグちゃんが【クリーネ】を掛けてくれた。

 

 「ファーはこっちの奴を頼む。俺はあそこのガトルを始末してくる。リュウ、監視を頼んだぞ」

 

 レイナスの指示に従って俺達は作業を始める。

 ガトルの毛皮は結構な値段で売れたし、牙も換金できるからな。切味の良いナイフで皮を剥いでるシグちゃん達も嬉しそうだ。


 パイプを咥えながら辺りを歩いて森の中を見ているけど、俺達を襲うような獣はいないようだ。

 野兎に似たラビーを見掛けたが、臆病な奴だからな。俺の気配で森の奥へと駆けていってしまった。


 「お~い!」って、呼ぶ声に振り返ると、皆が立ち上がって俺の方を見ている。

 どうやら作業終了のようだ。

 急いで戻ると、俺が背負っていた籠にガトルの毛皮が入っていた。


 「この毛皮だが、これから冬だから囲炉裏に敷けば結構暖かいぞ。俺達とリュウ達fで2枚あればいい。4枚あるから加工費を取られても少しは俺達に収入が入る筈だ」

 「それは良いな」


 シグちゃん達もその方が良いだろう。

 板張りは冬は冷たいからな。敷物は無いんだろうか?カーペットみたいなものがあれば良いんだが。


 「ついでに、板張りに敷く物も探さないとな。布団を直に敷くよりも暖かいと思うんだ」

 「そうだな。たぶん、何かあるはずだ」


 そんな事を話しながら、森を抜けて村へと帰る。

 途中で拾えるだけの薪を取ると、小さくまとめてレイナスが抱えている。

 ちょっとしたことだが、薪がなければ長い冬は越せないからな。

 

 一旦、番小屋に戻って薪を下ろすと、レイナス達は雑貨屋に俺達はギルドに向う事にした。


 「明日も、薬草で良いな?」

 「あぁ、それでいい。だが、ライトンは止めといた方が良いぞ。そして、森の奥に向かうのもだ」


 たぶん、俺達のレベルを考えてのことだろう。意外とレイナスは慎重だな。今までが妹と2人の狩りだったから無理は避ける傾向になったんだろう。

 だが、それは大事なことだと思う。

 獣を狩るのもハンターの仕事だがリスクが付き纏う。俺としてはリスクは少ない方が良い。まだ少女になりきれない2人の女の子がいるんだからな。


 手分けして店やギルドに出掛けても、後でシグちゃんとファーちゃんがキチンと分配してくれるから安心だ。

 不公平感が出たら安心して狩りなど出来ないからな。


 ギルドに行くと、カウンターのミーメさんの所に行って依頼達成を告げると、シグちゃんが依頼書と薬草を備え付けのザルに取り出した。

 

 「あら、だいぶ採って来たわね。ちょっと待ってね、数えるから」

 「それと、これも換金出来ますよね」


 シグちゃんがガトルの牙を4本取出した。


 「ガトル!……。どこで、これを?」

 「地図を見せてくれ。……え~と、此処だな。森に入って直ぐの広場だった。俺達には丁度いい薬草が採れたんだが、帰ろうとして、丁度この辺りから出て来たんだ」


 「2番広場ね……。この場所に来るようでは、森の奥はどうなってるのかしら? 2組がこの奥まで行ってる筈なんだけど、5日過ぎても戻ってこないの」


 俺が示した場所は2番広場って言うのか。たぶん村に近い場所から順番ってことなんだろうな。

 

 「この後で、依頼書を探そうと思ってるんでしょうけど、明日にした方が良いわ。今夜ギルドマスターと筆頭ハンターで協議すると思うから、その結果をみてからの方が安心よ。掲示板の一番右に張り出させるから直ぐに分かると思うわ」

 「ありがとうございます。何とか倒せましたが、もう少し多いと無事では済みませんでした」


 そして、俺達に報酬を渡してくれた。

 サフロン草が70で90L。ライトンの実が30で65L。そしてガトルの牙は100Lになったぞ。全部で255Lだから、どんな風にシグちゃん達が分配してくれるか楽しみだな。

 

 ギルドから番小屋に戻ってみると、レイナス達は未だ戻っていないようだ。

 とりあえず、水を汲み直して囲炉裏に火を起す。

 

 パイプを取り出して一服を始めた時に、レイナス達が帰ってきた。

 俺の向かいに座ると、ようやく湧いてきたポットでシグちゃんが皆にお茶を入れてくれた。

 早速、ファーちゃんと報酬の分配を行なってる。

 原則は必要経費を差し引いて2分割だから揉めることはないと思う。


 「ギルドのミーメさんにガトルの牙を出したら、今夜マスターと筆頭で協議するといっていたぞ。そして、2つのパーティが戻ってこないらしい。今日は依頼を探さずに明日に張り出されると言っていた」

 「その話は、雑貨屋でも聞いた。食料を5日分買い込んで出掛けたらしい。青5つ前後と言うから、ガトル相手に不足は無いと思うぞ」


 「まぁ、俺達はムチャをしなければ良い。近場で確実にで行こうぜ。それでも、今日の狩りは255Lになっていた」

 「俺のほうも45Lになった。敷物は5日後に取りに行く約束だ。それと、敷物だが、草を編んだ物を敷くのが一般的だと言っていた。横が8D、長さが10Dと言う事だ。暖炉の前に敷いて、その上に毛皮と言うのが一般的らしいぞ」


 下敷きと言う訳だな。どんな品でも1枚下に敷けばそれだけ暖かいに違いない。

 値段は毛皮を取りに行った時にでも聞いてみれば良いだろう。


 夕食は雑貨屋で購入した野菜中心のスープだが、その中に干物の切り身が入っていた。

 ちょっとした食材の変化だが、レイナス達は嬉しそうだな。

 俺にはちょっとだな。……味は良いんだけれどね。


 食事が終るとマントを床に敷いて横になる。

 今は未だ暖かいから良いけれど、これから寒くなる。早めに毛布位は買っておいた方が良いかも知れないな。

               ・

               ・

               ・


 「これじゃぁ、しばらく他所に行った方が良いかもしれんな」

 「あぁ、第5広場の先は黒限定となると、ちょっと辛いな。今更、採取はどうかと思う」

 

 ギルドの掲示板の前は結構賑わっている。

 この村にはこんなにハンターがいたんだ。20人近いハンターが張り出された紙を読んで、仲間と相談を始めたようだ。

 早い連中は、カウンターで村を去る手続きをしている。


 「何て書いてあるんだ?」

 「待ってろ、今読んでくるから!」


 レイナスがそう言うと人込みの中に入っていく。

 そしてしばらくすると、人込みを掻き分けて俺達のところにやってきた。


 「軽く、薬草採取に出かけよう。俺達にはあまり関係はないが、カウンターは大忙しだ」

 「そうだな。薬草採取なら事後契約でも対して変わらない」

 

 そんな訳で、森の最初の広場へと出掛ける。

 森へと続く荒地を歩きながら、掲示板横に張り出された注意書きについてレイナスが話してくれた。


 そこにはギルドからのお達しが2つ書かれていたらしい。

 1つは青8つ以上のハンターへの集合指示だ。3日後の昼にギルドに集合とあったそうだ。

 2つ目は、青7つ以下のハンターに対して、第5広場から森の奥に向かうことを禁じるとあったそうだ。同時に該当する区域での狩りとなる依頼書は掲示板より全て撤去してあったから、青や黒の依頼書は全くなくなったようだ。

 となると、俺達の依頼を上位者がすることになりかねないな。

 仕事が減るのはちょっと問題だぞ。


 そんな俺を見てレイナスは笑っていた。


 「心配するな。白や青の連中は、別に料金でも貰わない限り赤の依頼書には手を出さない。自分を低く見せないためにギリギリの高さの依頼書を漁るんだ」

 「そうなのか? だが、そんな見栄を張っても良いことは無いのにな」


 となると、あの村で俺達の依頼を先に請け負ったハンター達は、誰かから料金を貰ってやったということになるな。

 ハンターの誇りを忘れたのはどうかと思うぞ。たぶん後悔はしてると思うが、一生着き纏いそうだな。

 俺も、レベルが上がったらその辺は注意しよう。


 やがて、広場に着いた。これは第1広場だから昨日のようにガトルが現れることは無さそうだが、それでも注意することに越した事は無い。

 常に見張りは2人が当る。そして、俺とシグちゃんで30個程採取したところで、レイナスが俺の肩を叩く。


 「様子がおかしい。良いか、ゆっくりと広場を離れるぞ」

 「ガトルか?」


 「分らん。だが、おかしいことは確かだ。ファー!シグちゃんを連れて森を出るんだ。走るなよ。ゆっくりと歩いていけ!」

 小声だが声の調子は鋭い。

 シグちゃんが俺を見ているので、頷く事でレイナスの言葉を肯定する。

 

 2人がゆっくりと俺達を離れていく。

 今度は俺達だな。


 「どうやら、出て来たようだ。あの木の向うを見てみろ。奥のほうだ!」


 レイナスの告げる先を見ると、大きな影が動いている。しかも1匹じゃ無さそうだ。

 

 「なんだ? 初めて見るぞ!」

 「おれだって、そうだ。獣じゃないな。あれは昆虫だ」


 となると、最初に注意されたフェルトンってことかな? だが俺にはどう見ても巨大なアリのように見えるぞ。


 「ミーメさんがフェルトンに注意しろって言ってたな。あれがそうか?」

 「分らん。だが森の奥とも言っていたぞ。……さて、俺達も少しずつ下がるぞ。何時までも此処にいる訳にはいかないからな」


 少しずつ後ずさりして、広場からはなれる。

 広場が見えなくなったところで、一目散に駆け出した。

 そして森を出ると、心配そうな顔をして待っていた2人が、俺達を出迎えてくれた。

 

 真直ぐ、村に戻ってギルドに行く。

 流石に昼過ぎだから今朝の人込みはなくなっていた。

 俺とレイナスがミーメさんの所に行くと、シグちゃん達は掲示板に向かった。


 「あら、だいぶ遅かったわね。今から明日の依頼を探すの?」

 「いや、先行して薬草を採っていたんですが……、第1広場の向かいの森で大きな昆虫を見かけました。群れていたように感じたんで、一応報告しときます」

 

 そこにシグちゃん達が依頼書を持ってやって来た。

 ミーメさんが隣のお姉さんに何か告げると、そのお姉さんがシグちゃん達を手招きしてる。

 

 ミーメさんがテーブルで話をしているハンターに向かって軽く頷いた。


 「あそこのテーブルにいるのが、この村の筆頭ハンターのローエルさん達よ。今の話をしてあげてくれないかしら?」

 「えぇ、良いですよ。早速行ってみます」


 テーブルには3人男女が座っていた。30台半ばといった所だろうか。見るからにハンターって感じだな。着ている革の上下も良い風合いに色が落ちている。


 

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