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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
101/128

P-101 一角獣が出たらしい


 ギルドで待っていると、ローエルさん達が合流した。やはり俺達と同じような待機指示があったらしい。


「ローエルさん達が一緒なら心強い限りですけど、いったい何でしょうね?」

「倒すのが面倒な奴、ということなんだろうな。だが俺としては、そんな依頼にお前達が一緒になったことが嬉しく思うぞ」

 そう言ってサドミスさんと一緒に笑っている。


「良いんだか悪いんだか微妙ですけど、少なくとも相手の名前ぐらい教えてくれても良いと思うんですが」

「それは俺も同じだ。後でギルドに忠告しておこう。だが、あの大きなイネガルを良くも倒せたものだ」

「俺達なら……、いや、やはり苦労するだろうな。落とし穴とは考えたものだが、浅い穴なら飛び出すだろうし、深い穴なら掘るだけで数日かかる。で、本当のところはどうやったんだ?」


 待つ間は暇だから、この間の狩の方法を説明して時間を潰す。

 ローエルさん達だけでなく、たまたまギルドに居合わせたハンター達も椅子を運んで俺の話を聞いている。


「なるほど、落とし穴というよりも一種の罠と見るべきだな。楔型に溝を掘る等初めて聞いた話だ」

「だが、そのおかげでイネガルは直ぐに経てなかったということになるな。前足が挟まった状態では体重が前に掛かるから、確かに抜け出すのはホネだろう」

「その一瞬を逃さずに槍を放てるだけの場所を上手く選んだようだ。リュウイ達だからこんな狩ができる。直ぐに真似をするようでも困るぞ」


 ローエルさんの言葉に、俺達を囲んでいたハンター達が頷いている。

 俺としては真似をすることにも意義があるように思えるけどね。先ずは普通のイネガルで試してみるのも良いんじゃないかな?

 上手くはこべば、そのやり方をマスターできるし、他の狩に応用することだって出来そうだ。


「だいぶ盛り上がってるな」

 聞き覚えのある声に、声の主を探すとガイエンさんだった。ギルドの扉の開く音が聞こえなかったのはハンター達の話声がそれだけ大きかったに違いない。

 王都の有名なハンターを知る者は多いようだ。直ぐに暖炉の近くに席が用意される。


「あぁ、大きなイネガルをどうやってし止めたかの話を聞いていたところだ。あと少し早ければ、3倍ほど大きなイネガルをリュウイ達がどうやって狩ったかが分かったのだが」

「ほう、それは是非とも聞かせてほしいものだ。ローエル達に頼みたかったのは、エラステモン……一角獣だからな」

「何だと!」


 ガイエンさんの言葉に、いつも冷静なローエルさんが大声をあげた。サドミスさんは絶句して口を開けたままだ。相当やばい相手ということになるんだろうか?


「大きさはイネガルの数倍。全身の皮膚は厚く槍を通すのも困難だ。その上、かなり敏捷ときている。南東の村付近に現れたそうだ」

「だが、それは少しおかしくないか? エラステモンの生息地は隣国の遥か南だと聞いたぞ」

「隣国の貴族が飼育していたらしい。柵を破って逃げ出したのが回り巡って南の村だ」


 まったく困ったことだという表情だな。ローエルさんの方も苦笑いを通り越して複雑な顔をしている。


「貴族なんてのは碌でもない連中だが、王国の運営には無くてはならないようだ。民衆に害を及ぼさないなら……、まぁ、必要悪として認めることもできよう。そんなわけで我等に討伐の依頼がやって来た。隣国に被害を与えるとなっては貴族の面子が丸つぶれだから報酬は一桁上になる。手伝ってくれるか?」


 速い話が、逃げたペットの始末ってことなのかな? 

 確かに被害が出たなら、飼い主に請求が行きそうだ。それも他国からとなればかなりの問題になる可能性もある。

 ガイエンさんもいろいろとご苦労な事だ。イリスさんが銀を目指せと言ってたけど、こんな話ばかりが舞い込むんだったら、ここでのんびり野犬を狩っていた方が良いように思えるな。


「村人が困っているなら出掛けねばなるまい。リュウイ達のイネガル狩りが参考になりそうだ。詳しい話はリュウイの家で良いか?」

 ガイエンさんが頷くのを見て、慌ててローエルさんに頷くと急いで番屋に向かった。早く知らせねばなるまい。


 番屋に戻ると来客の話をして、暖炉にお茶のポットを掛けておく。

 簡単な依頼の話をしたんだが、エラステモンという獣はロクス達も知らないようだ。でも、シグちゃんは一角獣についてお母さんに聞いたことがあるらしい。


「大きな体をして額に1本の角を持っているそうです。その体は弓矢では傷つけることもできないそうですよ」

「同じような話をガイエンさんもしていたよ。槍もままならないそうだ」

「そんな獣を倒せるのか?」

「要は狩の方法だ。相手の習性と体を調べれば狩れない獲物は無いんじゃないかな?」


 そんな話をしていると、扉を叩く音がする。

 直ぐに、シグちゃんが扉を開けに行くと、入ってきたのはガイエンさんにローエルさんとサドミスさんだった。テーブルに招きガトルの毛皮を敷いた席に案内する。


「妻が喜んでいるぞ。王都の貧民対策はお后様も悩んでおいでだったが、良い資金源ができたということだ」

「俺達は村に産業ができましたから、住み慣れた村を離れることが無くなったと娘さん達が喜んでいますよ」


 うんうんと頷いているのは、そんな産業の無い村をいくつも見ているんだろうな。どうにかせねばと思っていても、その方法が考え付かないのだろう。


「この村がリュウイ達を迎え入れたことは良いことには違いない。だが、他の村はそうでもない。やはり食うや食わずの生活をしていることも確かだ」

「畑を荒らされでもしたら、路頭に迷うことにもなりかねない。すでに小麦の種は撒かれて芽が出ているはずだからな」


 シグちゃん達が皆にお茶を入れてくれる。サドミスさんが美味そうにお茶を飲んでるな。


「俺達も協力にやぶさかではありません。ですが、エラステモンがどんな姿でどんな性質なのかが分からなくては……」

 

 俺の言葉を待っていたように、ガイエンさんがバッグから分厚い本を取り出した。しおりが挟んであるので、そこを開けてみると……。

 サイだ。それも1本角だな。一角獣というのは童話の中にある姿とはかなり違っているが、現実はこんな物だろう。

 この姿を見ると、アフリカ産よりもインドのサイに似ている。分厚いヨロイのような皮膚が幾つかのパーツのように体を覆っている。

 この皮膚が問題なんだな。矢では貫けないし、槍でも有効な傷を負わせることは難しいかもしれない。

 大きさは……、イネガルの5倍だと! 

 思わず絶句してしまった。


「リュウイでもそうなるか。それを狩る方法を考えねばならん。子供でもイネガル並みだ。それぐらいならどうにか狩れるが大人になると狩るのは軍隊が動員される。隣国の不始末で王国の軍を動かすのも問題だ。できればハンターで狩るのが一番なのだが……」


 小型バス並みってことだな。これに数人で挑むのはさすがに無茶としか思えないけどね。


「もし狩れない場合はどうするんですか?」

「ハンターを集めて隣国に追い払うことになる。上手く行くかどうかは分からんが……」


 隣国も同じことをしたらイタチごっこになりそうだ。となると、やはり狩ることになるんだろう。

 その方法だが、この間のイネガル狩りを参考にすれば良いか。問題は止めの刺し方だ。

 下手に近づけば長い角を振り回すことになるんだろうし、槍も効果があまりないらしいからね。

 俺達のウーメラでも無理かもしれないな。ロクス達が俺達より力があるといってもそれほど深くは刺さることが無いだろう。まぁ、通常の槍よりははるかに効果がありそうだけどね。


「強い力で、強力な槍を打ち込む……。そんな狩になるんでしょうね」

 俺の言葉に皆が頷く。思いは同じのようだな。


「私達のクロスボウでも、この獣の目は小さすぎます……」

 シグちゃん達の狙いは目ということか。それも方法だけど、このつぶらな瞳では当てるまでに何本のボルトを放つことになるんだろうな。ボルトケースの12本、全てを放っても難しいんじゃないか?

 それよりは、この首筋を……。あった!


「それ良いね。倒し方が分かったよ。確かにクロスボウは使えるぞ」

「無茶言うな。ファー達のクロスボウはヨロイ通しを使っても槍より効果が小さいぞ。ウーメラとあまり変わらないはずだ」

「俺達のクロスボウならそうだけど、サルマンさんのクロスボウならどうだ? 槍をヨロイ通しにすればかなり使えると思うが?」


「あの、グラフィンを狩るクロスボウってことか? あの銛を80Dも飛ばせる奴だな?」

「銛を放てるようなクロスボウがあるのか?」

「こいつらが作ってやったそうだ。1頭を1日掛かりで狩れるかどうかの獲物を、半日で2頭狩ったらしい」

「妻が喜んでいた香油はそれの返礼か! それを使えば強力な攻撃ができるのだな?」


 ローエルさん達がしばらく話していたけど、ガイエンさんの質問が俺に回って来た。


「現状では最善の策だと思います。こんな具合に落とし穴を掘り……」


 この間のイネガル狩りの手順をおさらいするように落とし穴の位置と、大型クロスボウの位置をメモ用紙に描いていく。

 全員が覗き込むようにして自分の位置を頭に描いているようだ。


「ただ、一つ問題があります。クロスボウの弦が強すぎて猟師さん達も5人掛かりで引くような代物です。クロスボウには5人以上貼り付けることになりますよ」

「槍も作らねばなるまい。そのような武器があるなら数本を俺が作ろう。この村のギルドに用意しておけばかなり流用できそうだ」


 専用の槍となると、少し考えなくちゃならないだろうな。分厚い皮膚を貫通させてダメージを与えるとなると、通常の穂先ではちょっと問題もありそうだ。柄の太さも太くなるだろうし、何度か試射して感触を確かめる必要も出てくる。

 準備の役割分担を大急ぎで行い、レイナスが俺を描いた槍の絵を持って、武器屋に走って行った。

 俺の役目は、サルマンさんからクロスボウを借り出すことだけど、季節的には問題はなさそうだ。今夜にでも隣の番屋に行ってみよう。


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