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君色スカイ  作者: 悠太
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小さな運命(香苗サイド3話)

入学式は退屈だった。

まあ学校の○○式と名のつくものが面白かったことは無いけれど、

これほどまでに退屈な式も珍しいと思うほど退屈だった。

「桜の花も新入生の門出を祝うかのように咲き誇り・・・・・」

とかいう校長の挨拶。

桜は咲き誇っても、お前の髪は散り行く一方だぞ。

校長先生という生き物は何でこんなにも、親父の代表のような姿をしているのだろうか。

太っていて、髪は薄く、しゃべり方がいちいち気に障る。

根本的に私は先生と言う生き物が嫌いだ。

特に服装なんかを注意されると思う。

お前は学生時代、制服を毎日校則どうりに完璧にきていたのかと。

一度も服装で注意されたことが無いのかと。

他にもある。

お前は授業中に1度も寝たことが無いのか。

廊下を走ったことがないのか。

あげればきりが無い。

極め付けが、

放課後に彼氏と手をつないで歩いたことがないのかと。

(これは私が中学のころに放課後友達がそのころ付き合っていた人と手をつないで歩いていて、次の日生徒指導室で注意されたときに思ったことだ。先生たちにとって手をつなぐことは不純性行為らしい。なら日本のほとんどの学生が不純性行為をしている。)

先生たちだって1度や2度学生のころに、服装で注意されたり、授業中寝たり、彼氏と手をつないで歩いて居たはずだ。

それなのに注意するときは決まって。

「これだから最近の若い子は」っていうんだ。

先生たちが学生のころだって、きっとそうやって言われてたんだ。

ようするに私から見れば

「これだから古臭いおばさん、おじさんは」ってわけだ。


入学式が終わった後にクラス発表があった。

私はF組らしい。

正直言って何組でもいい。

2年生のクラス替えなら、仲のいい友達と同じクラスがいいとかで

自分が何組であるかは非常に重要なことだと思うけれど。

1年生の場合、ほとんどがはじめてあった人で、何組になろうが、誰となろうがあまり関係ない。

私の中学からN高に来たのは6人。

一番近い高校なのに異常な少なさだ。

それはきっと、この街が田舎過ぎるせいだろう。

電車は一時間に1本だし、遊ぶところといえば今にもつぶれそうで、最新曲が1年後に最新曲になるカラオケ店か。

この街にしかないのではないかと思う、平屋のジャスコだ。

ジャスコといっても普通のスーパー級だ。

食品売り場と小さなゲームセンターときっとここにしかない聞いたことの無い洋服屋さんが3軒これだけだ。

幼稚園から中学校までこの街に居た人は高校になるときみんなこの町を出て行く。

田舎ならではの都会への憧れって奴だ。

田舎に限定しなくても最近の高校生はみんな住む街よりも上った住んでいる街よりも都会にある高校に進むらしい。

私は田舎に残ったから最近の高校生じゃないのか?

今度先生に「最近の高校生は」とかっていわれたら、

私は最近の高校生じゃありませんって言おうかな。

でもそんな古臭い高校生の私もマクドナルドにはあこがれる。

都会の高校生は学校帰りにマクドナルドに寄るらしい。という話を中学の友達に聞いた。

私の住む町にもハンバーガーショップはある。

知る人ぞ知る、ドムドムバーガーだ。

毎週土曜日はドムドムの日なんですよ。知ってました?

知らないですよね。

そんなドムドムしか知らない私たちから見れば、マクドナルドで買い食い。

もうこれは都会の高校生の象徴でした。

なんせ一番近いマクドナルドがある町まで電車で一時間かかりますから。

私も人生で2度しか食べたことがありません。

でも都会に行きたいとは思わなかった。

満員電車とか想像するだけで最悪。

やたら長い信号も、駅前のキャッチセールスも大嫌いだ。

あ。でも痴漢は一度だけ会ってみたい。

で犯人をその場で自分で捕まえるの。

「この人痴漢です」って。

まあ絶対無理だけど。

本当に痴漢にあったらきっと私はフリーズしてやられ放題だと思う。

都会で一番嫌いなのは空が汚いこと。

テレビでしか見たこと無いけど、東京の空は凄く汚い。

きっと東京ほどでなくても、マクドナルドがある街の空もきっと汚い。

私は特別空を見るのが好きなわけではない。

ただ何か落ち込むことがあったときに、近くの海に行って空を見るのが好きなだけだ。

きっと落ち込んだときに、空が汚かったら私はもっと落ち込むだろう。

ただそれだけだ。



F組は4階立ての校舎の4階の中央階段のすぐ左の教室だった。

中学では一年生は体が小さくて階段を上り下りが多いと大変だろうからということで1年生は1階か2階だったが、

高校では1年生が最上階で3年生が2階だ。

理由は高校生は2年3年と進級するにつれて、登校時間がぎりぎりになって行く傾向があるかららしい。

教室に入るとそこにはまだ4、5人しか居なくて、黒板に座席表が張ってあった。

私の席は廊下側から2列目の後ろから3番目だ。

一様自分の席の周りの席の人の名前だけは見ておいた。

私は最初の一日目で1人以上友達を作っておけば、連鎖反応のように数日でクラスの大半の知り合いになれることを知っていたからだ。これも自分を守るための計算。

私は小学校のころに3回転校をしている。どれも両親の都合だった。

3回も転校をしているうちに、自分の居場所をどうやれば簡単に作れるのかや、少し話しただけでその人の性格などを理解できる能力が身についた。

たぶんこの転校で私は人と付き合うときに知らず知らずに計算して行動するようになったのだと思う。



しばらくするとクラスに人が増えてきた。

でも私の周りの席の人はまだ来ていない。

私は決めていた。友達のの連鎖反応を起こすための触媒には一番最初に来た周りの席の人を使うと。

誰かに声をかけられては周りの人が一番最初でなくなってしまうから、

回りの誰かが来るまで机に伏せて寝たフリをすることにした


そして一番最初に来たのは右隣の男の子。

名前は西脇融。

私はこの名前を前から知っている。

私のお気に入りの小説家恩田陸の「夜のピクニック」の主役だ。

「夜のピクニック」は二人の高校生の主人公、甲田貴子と西脇融。

この二人は同じ高校で実は異母兄弟。周りは誰もそれをしらない。

二人はお互いに近づきたいんだけど遠ざけていた。

3年生になって最後の鍛錬歩行祭。(鍛錬歩行祭とは、全校生徒が1日かけて80キロを歩きとおすイベント)

この鍛錬歩行祭で、二人の距離が変わっていく物語。

この物語の、近づきたいけど近づけない。その貴子の気持ちがよくわかってお気に入りだ。

でこの小説は映画化されていて、名前はわからないけど映画の西脇融役の人が結構タイプだった。

そのせいもあって、同姓同名の右隣の西脇融君にもちょと期待していた。


右隣の西脇君はバックを机の横に置いた。

そのバックを伏せたまま手の隙間から見た。

ビックリした。

そのバックには昨日見たバスケットボールのお守りが着いていた。

驚いて顔をあげて右隣の西脇君を見ると。

西脇君もこっちを見ていた。

やっぱりこの人に見られるのは、他の人のそれとは全然違う。

昨日あったバスケの少年。

今となりに居る西脇君。

は本のなかで会った西脇融に少し似ている。

なにか自分だけの秘密を持っていて。

いい人なんだけど、暗黒面っていうか違う一面があって

視線に不思議な力がある。


このとき私は自分でもビックリするぐらいこのとき乙女な発想をしていた。

運命。

簡単に言うとそういうこと。

本当に小さな運命。

自分でも運命なんて自分には似合わないと思うし

私は運命なんて信じないと思っていた

でもまだ私の中にも少しだけ

女の子だけが持つ、幼くきれいな心が残っていたらしい




そして彼を連鎖反応の触媒にするために話しかけようとしたときに

先生が入ってきてしまって話しかけられなかった




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