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君色スカイ  作者: 悠太
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桜舞い散る坂の上から(香苗サイド2話)

私は、昨日と同じ用に100年桜坂を上っていた。

ただ違うのは、今日は紺色の制服を着ていること。

今日は入学式だ。

私は、今日から高校生になる。

とはいっても、高校生になったから何かがいきなり変わるとは思わないけれど。

まあ、中学には無かった文化祭なんかは楽しみだけど、

高校生活にはそんなに期待はしていない。

きっとあんまり中学と変わらないと思う。

部活もきっとやらない。

親はいましかできないことだから何かやってみればとうるさいけど。

私はもともとあんまり運動が得意ではないし、絵も下手、譜面も読めない、演劇もきらいだ。

要するに得意なものも、興味もないわけだ。

そんな無趣味な私にも最近少しだけ興味があることができた。

それは、小説を書くこと。

小説といってもたいしたことは書けない。

もちろん、誰にも見せたことは無い。

ただの自己満足だ。もともと本が好きだったわけではない。ただなんとなく書いてみたかっただけ。

書くのはだいたいが青春もの。

でも青春ものの小説を書いていると変な気分になる。

自分は高校生活に何も期待していないのに、

書いている小説は、部活をしたり、恋をしたりと凄く楽しそうだ。

自分は本当はこういう生活を期待しているのかもしれないと思うものばかりだ。

でも、それは小説の中の話であって、実現はしないこともわかっている。

私もいつの間にか大人になったらしい。夢と現実がかけ離れた存在だということを私は知っている。

私ももう小学生ころのように、ただ何も考えずに「お花屋さんになりたい」なんていえる歳じゃなくなった。

あのころは、なぜか知らないけど。

お花屋さんになりたかった。

なりたかったというより、なれると思っていた。

でも今は、なりたいものも無い。

高校を卒業したら、適当な大学にいって、適当に就職して、そのうち結婚して、子供が出来て、仕事やめて、子供が自立したら好きなことやって、そのうち死ぬ。

これが私の人生計画。

ものすごく平凡だし、やたらと適当な計画だと自分でも思う。

きっと何かに才能があったり、何かが凄く好きな人はそれに人生をかけるんだろうけれど、

私にはそんなものは無い。

まあとりあえず適当な高校生活をこれからはじめよう。



坂を上りきって、今まで歩いてきた道を坂の上から振り返ってみた。

そこには同じ制服を着たたくさんの人が私の立っている場所を目指して歩いている姿があった。

ちょっと優越感だ。

私は人の上に立つのが意外と好きかもしれない。

でも人の上に立てば責任やらもめんどくさいし、

反感や妬みを買うこともある。

だから私は表立っては立たない。

身近なことだと、クラスの委員長なんかだ。

私は絶対にそういうところでは立たない。

だからこうやって私だけの世界のなかで、他の人に気づかれずに立って優越感だけ味わう。

私って嫌な奴だ。


そんな優越感と自己嫌悪を味わっていると。

坂の下の方から、視線を感じた。

そこに居たのは、昨日のバスケ少年だ。

今日は入学式で2年生や3年生は休みだから、かれも1年生ということだ。

そして昨日部活に来ていたということは、きっと部活動推薦で入学したのだろう。

それにしても凄い視線だ。

結構遠くに居るのに、見られているのにすぐ気がついた。

それに彼の視線は、私の表面を見ていない。

なんだか、私の内面を見透かされている感じだ。

すごく不思議な人だ。

これ以上見られると私の汚い部分まで見透かされそうで怖くなってそこを立ち去ることにした。

でも、何の挨拶もなしに立ち去ったら嫌な奴だって思われるかもしれないから何かアクションをしてから立ち去ろう。

もうこの考えが嫌な奴だ。

自分が誰かに嫌われるのが怖くて、嫌われないように計算して行動する。

友達を作るときも、自分に有益な人を選ぶし、友達になっても自分の中のある最終防衛線より中には絶対にいれない。

自分は最低だ。こんな自分は大嫌いだ。でも自分が大事だから辞められない。



手を振ってもよかったのだが、手を振ってもし自分を見ていたのでなかったら恥ずかしいから辞めた。

これも自分を守るために計算だ。

手を振る代わりに、私は彼にニコッと笑ってから、その場を立ち去った。


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