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君色スカイ  作者: 悠太
17/29

汗臭い小豆(香苗サイド8話)

集合時間は7時30分。

今は7時30分。

もう集合時間なのに誰もいない。

10分前から不安になってきていた。その不安は的中したらしい。

集合場所を間違えた。

そんなとき携帯が突然鳴った。

「香苗今どこにいるの?」

中学からの親友で同じクラスの奈緒からの電話だった。

「え。学校」と私が答えると奈緒は、

「馬鹿。そんなとこ大型バス入れないでしょ」と呆れていた。

「集合場所は駅のロータリーでしょ。ほんと香苗は話聞いてないんだから。急いで来なよ」

怒ってるというよりは毎度のことで呆れているという感じな口調で奈緒はそういって電話は切れた。

そう私はあまりの人の話を聞いていないからよくこういうことがある。

実際は聞いていないつもりはない。頭の中に残っていないのだ。

左耳から右耳へ。右耳から左耳へ。脳に停車せずに通過していくのだ。

中学の修学旅行では集合時間を間違えた。

しかも、遅れるのではなく。早く。

しかも2時間も。

普通に考えれば朝の4時30分集合なんてそうそうない。

でも私には6時30分が4時30分に聞こえたのだからしょうがない。

ただ今回は遅刻だ。

このままではみんなに迷惑がかかってしまう。急がなければ。

幸い今日はピクニック。服装はジャージだ。走りやすくて助かった。

制服にローファーで走ったらいろいろ大変なことになる。

でも今日はジャージ。小豆色の。

N高は学年でジャージの色が違う。今の3年生は青。2年生は紺。

そして1年生は小豆色。

なぜかこの色だけ他と違って青系統の色ではない。

来年入ってくる1年生は今年の3年の着ていた青色。いなくなった色が新入生の色になる。

それと小豆色は3色のなかで1番不人気だ。

私はその1番不人気の小豆色が学年で1番似合わないと思う。

もともと赤系統が似合わない。

ピンクなんて持ってのほかだ。


学校からもうダッシュで駅に向かい。出発には何とか間に合った。

「すいません。」私はそう一言言って急いでバスに乗り込んだ。

「香苗は相変わらずだね」と奈緒は笑っていた。他の子もみんな笑っていた。

凄く恥ずかしい。

そう思いながら自分の席に向かって歩いていくと

彼も笑っていた。

私はなんだか悔しくて「ちょっと。なに笑ってんのよ」と言った。

すると彼は「別に」と言ってよりいっそう笑い始めた。


そして私は彼の隣の席に座った。するとすぐにバスは発車した。

そして気づいた。

今、会話した。

ほんとに一言だったけど彼と話せた。

私は賭けに勝った。

あんなにあっさりしかもまだピクニックも始まっていないのにだ。

なんだか、拍子抜けだ。

でもうれしい。入学式からずっと話せなかったから。

今はたった一言でもいい。


幸せに浸っていると。

ふと新しい不安がやってきた。

私は学校からここまで走ってきたせいでジャージの中は汗だくだった。

隣に座っている彼に汗臭いとか思われていないだろうか。

急に不安になってきた。

バスの中ではクラスレクの伝言ゲームが始まったが私はそれどころではない。

汗臭い女の子なんて思われたくない。その思い出私の頭はいっぱいだった。

早くサービスエリアについて欲しい。

そこで必ず制汗スプレーを体中にかけたい。

早くサービスエリアについて。


私の願いも届かず1時間してやっと休憩になった。

それまでずっと車内ではひたすら伝言ゲームが続いていた。

私は彼に一言も話しかけなかった。

話しかけれなかった。汗のにおいが気になって。

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