フェイダウェイ(融サイド6話)
入学式から1週間がたった。
僕は毎日部活に明け暮れている。
クラスには何人かの友達と呼べる存在ができた。
学校はそこそこ楽しい。
正直授業はもうだるいけど。
気になる彼女とは入学式の日から話していない
なんだか避けられている気がする。
最近話しかけたくてしょうがない。
授業中も気になってしょうがない。
でも、僕から話しかけることはしない。
だって入学式から1週間で女の子に自分から近づくなんて、
がっついているようにしか見えないじゃないか。
僕は周りからの評価やイメージを大事にするタイプ。
なんてのは嘘。
ただ、自分をよく見せたいだけ。見栄っ張りなんだ。
そういえばバスケの練習でもそんなことをヘッドコーチに言われた。
確か「お前のプレーは見た目だけなんだよ。汚くたって点を取ればそれでいいんだよ」
だった気がする。
僕のポジションはシューティングガード。
簡単に言うと点取りやだ。
3ポイントやカットインなんでもやる。とにかく点数を取る事が仕事だ。
有名どころだと、マイケルジョーダンがシューティングガードだった。
得意なのは、フェイダウェイやストップ&ジャンプ。
好きなのは、3ポイント。
苦手なのは、ダブルクラッチ。
嫌いなのは、レイアップやリバースレイアップ。
要するに、きれいに決めれるのが好き。
レイアップのようにカットインしてディフェンスとぶつかりながら打つシュートは好きじゃない。
フェイダウェイやストップ&ジャンプでディフェンスをはずしてきれいなシュートが打ちたい。
欲を言えば、ノーチェックでパスもらって3ポイントを決めるこれが1番きれいだ。
だが相手が強くなれば強くなるほどノーチェックの場面も、ディフェンスが外れる場面も少なくなっていく。
だから、汚いシュートも打たなければいけない。
でも僕は見栄っ張りだからできるだけ、汚いシュートはしたくない。
自分でも自分勝手で、最悪のシューティングガードだと思う。
日常生活も同じで基本的に自分はきれいでいたい。
だから、嫌われ役なんか絶対にやらないし。
反感を買うことも絶対にしない。
自分から告白もしない。振られたときに周りからかわいそうとかそんな目で見られたくないから。
最低な奴だ。
僕は自分が大好きだ。
でも大嫌いだ。
きっとこんな性格だからフェイダウェイが得意なんだろうなとこのとき思った。
フェイダウウェイはデイフェンスと距離をとるために後ろにジャンプして打つシュートだ。
僕は常日頃から、人と距離を作って生きている。
近すぎると、本当は汚い自分の内面に気づかれそうだからだ。
近づきすぎたら、後ろに飛んで距離をとる。
自分なかにある。境界線より中には誰も入れない。
自分を守るために、きれいな自分で居るために、フェイダウウェイ。