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やったぜ。5  作者: 水前寺鯉太郎


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第6話

投稿者:土方のわし 2025年9月3日 19時頃

 やったぜ。なんとか岡山市内のアパートという名の「出口」に帰り着いたんじゃ。

 兄ちゃんとおっさんをそれぞれの根城へ送り届け、わしは一人で近くの「ゆめタウン」へ足を運んだ。惣菜コーナーへ突っ込めば、夕方の割引シールがドバーっと、卑しく貼られた揚げ物の匂いが鼻をひくひくさせてきよる。

「……たまには、こういう汚れにまみれるのも悪くない」

 わしが選んだのは、衣がしなしなになった「メンチカツ」と「竹輪の磯辺揚げ」じゃ。元コックとしては出口のない邪道かもしれん。だが、ボロボロになった53歳の体には、この冷え切った惣菜が丁度ええ。降伏じゃなく、一時的な「盛り合い」の中断じゃ。

 アパートで惣菜を喉の奥へ突うずるっ込んだ後は、太郎の散歩じゃ。

「よし太郎、津山の山とは違う、岡山のドブ板の『生』の匂いを嗅がせてやるぞ」

 いつもなら兄ちゃんが付き合うとるが、今日は一人と一匹の密室劇じゃ。

 だが、こいつ、隙あらば卑しい拾い食いをしようとしよった。道端の焼き鳥の串に、汚れ好きの鼻を近づけた瞬間、わしの腕力が炸裂したんじゃ。

「コラ太郎! それは治療費が気が狂う程跳ね上がる毒じゃ! 出口はそこじゃねえ!」

 リードをグイッと引き、太郎の口元を鉄壁のガードで封じる。太郎がわしを舐めるように見上げた。不服そうな、身悶えするようなツラをしよる。

 電柱一本ごとに十分。太郎の「クン活」と、わしの「阻止活」が、夜の住宅街でじりじりと火花を散らしとる。

 あぁー、もうめちゃくちゃや。

 それからはもうめちゃくちゃじゃ……は二度言うたが、それでええ。

 とにかく二時間もしこたまかかったんじゃ。もう、おえんわ。

 追い除菌を太郎の足に二回、ドバーっと吹きかけて、ようやく玄関の鍵を開けた。

 太郎の奴、わしより先に深淵へ入り、玄関でそのまま白濁した夢の中へひっくり返りよった。

「お前が散歩に行きたかったんじゃろ。わしを振り回して満足か」

 太郎は答えん。もう、気が狂う程眠っとった。

 こんな変態親父と二時間散歩遊び、しないか。

 あぁ~~早く布団まみれになろうぜ。

 岡山の夜、リードを握りしめて、太郎の鼻先を舐めるように見守っとるぞ。

 ――強力なライトをしこたま持って来てくれる奴、おらんかのう。

 土方姿のまま、わしは暗闇に潜む「毒」を照らし出し、太郎との盛り合いを完遂させるんじゃ。

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