プロローグ
雪が舞う夜の街で、僕は、婚約者である莉菜を守るための体を失ってしまった。
どうすればいいのだろうと途方に暮れた時もある。
でも、 僕は、あれだけ愛していた莉菜を記憶の彼方に置きざりにして逃げてしまった。
怖かったんだ。莉菜が、僕に、失望した目を向けるのが。
二度と、元に戻れない関係になってしまうことが。
現実から逃げてしまえば、記憶の中だけでも、僕は、莉菜の恋人でい続けることができる。
運命なのか、僕らは再会を果たしたね。
でも、僕を見て、表情が全く変わらない莉菜の表情に僕は絶望した。
仕方がない。僕の姿が全く変わっていたのだから。
莉菜の心がボロボロなのは、一目見て分かった。
目線は宙を舞い、唇はかさつく。どこにも潤いはない。
体は痩せ細り、ふらつく歩みを見ていられない。
今から思うと、なんとひどいことをしたのかと、現実から逃げた自分を責めている。
僕は死んでいなかったと伝えれば、莉菜は立ち直れたのかもしれない。
いや、逆に、絶望の崖に引きずり込んでしまったかもしれない。
僕は再び迷うものの、先に踏み出すことはできなかった。
僕も命を守ってくれた莉菜をー生守ると誓っていたのに、こんなことになるなんて。
ごめんなんて、チープな言葉では謝りきれない。
身をもってー生、陰から莉菜のことを守り続ける。
何があっても、君をずっと見守る。
君が幸せになるまで。




