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秘密の報告書  作者: 藤岡
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浅賀百合

23日22時55分頃

坂城聖生は自室から出てくるとこう言った。

「一日早い日記をつけちゃったよ。」

ヘラっとした表情を見せたが、彼の声は震えていた。


23日23時頃

坂城聖生は教祖の部屋へ入っていった。


23日23時30分頃

教団員達が寝る支度を始める。


23日23時35分頃

部屋へと戻ったはずの教団員の一人が叫びながら食堂へ戻ってきた。


23日23時36分頃

血のついたナイフを片手に坂城聖生がじっとりと教団員たちを睨み付けた。

幹部の人間は坂城聖生を押し退け教祖の部屋へ。


23日23時39分頃

戻ってきた幹部は突っ立ったままの坂城聖生を殴り付けた。

幹部の手と袖にはべっとりと血痕が付着していた。


23日23時40分頃

坂城聖生はこう言った。

「今日で孤幸教を終わらせる。教団員は全員俺が殺す。」と。

そう言うと彼はすぐそばに居た幹部の首を目掛けてナイフを突き立てた。

教団員達は青ざめ、パニックに陥っていたが、坂城聖生はぐるりとこちらを見ると、ニタリと笑みを零し次々とナイフで切り刻んでいった。

私の目に映ったのは、絶望の淵に立った覚悟を決めた人間だった。


23日23時45分頃

食堂から逃げ出した教団員は坂城聖生の部屋へと向かう。

それを坂城聖生は見逃さなかった。


23日23時47分頃

坂城聖生の部屋から「ガキはどこにやった!?」という教団員の声が聞こえてきた。


23日23時48分頃

「光司に手を出したら許さない。」

坂城聖生は部屋に侵入した教団員を複数回殴打した後腹をナイフで切り裂いた。


23日23時50分頃

道具を手にした教団員たちが坂城聖生の部屋へと押しかけた。

見える限りでは殆どの教団員の手が震えていた。

男達の目の前にいるのはただの教団員では無いからだ。

教団員で一番狂っている男が猛烈な殺意を抱き睨み付けている。

もしこれが私の敵であれば私だって恐怖しただろう。


23日23時52分頃

一人の教団員が坂城聖生に飛びかかった。

坂城聖生は、待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべると、教団員の殴打を受けた後に首元へナイフを押し当てた。


23日23時55分頃

一人の教団員が「こんなことは辞めましょう。」と説得にかかるが、坂城聖生は黙ってその教団員を睨み付けたかと思えばこんなことを言い出した。

「望んで教団員になった頭のおかしいお前らと、強制的に教団員の一員にされた俺。

話すだけ無駄だと思わねぇ?」

小馬鹿にしたようなものの言い方に教団員は少し苛立ったような顔をした。


23日23時58分頃

教団員は説得は無理だと悟り全員で坂城聖生に向けて道具を振り下ろす。

複数の刃物が坂城聖生の体に突き刺さると、坂城聖生は今まで聞いた事のない楽しげな笑い声を上げこう言った。

「お前たちの負け。」


24日0時

門が開く音がした。

坂城聖生は上に乗る男たちを蹴飛ばすと、テーブルの方へと腕を伸ばす。

教団員が再び坂城聖生に襲いかかろうとした時、坂城聖生は片手を上に突き上げた。

それを見て立ち止まる教団員たち。

坂城聖生が突き上げた手には銃が握られていたのだ。


24日0時1分頃

バンッという大きな銃声。

天井からはハラハラと粉が舞った。


24日0時2分頃

私はこっそりその場を離れ玄関扉を開いた。


24日0時3分頃

総勢100人を越す警察と特殊部隊班が突撃。

私はトイレに入るとそこに隠しておいた制服に着替える。


24日0時5分頃

警察と教団員の激しく争う声と物音が鼓膜を支配した。

私は顔を隠すようにして坂城聖生の元へと向かった。

まだ助かると、そう信じて。


24日0時6分頃

坂城聖生の部屋の前には遺体が増えていた。

額に穴が空いていた為、坂城聖生が撃ったと考えられる。

横たわる坂城聖生はまだ微かに息をしていた。

私はすぐに救援要請をした。


24日0時7分頃

坂城聖生は小さな声で話し始めた。

後で聞くから今は黙っていてと言っても彼は聞く耳を持たなかった。

もう長くは無いと察していたのだろう。

彼の第一声は、「光司は無事か?」だった。

丁度その時左門からの報告が入ったところであったため、「無事に保護しました。」と伝えると、坂城聖生は安堵したように微笑んだ。


24日0時8分頃

教祖の部屋に行くと教祖は自ら浄化を求めに来たのか?と嬉しそうに話したと言う。

坂城聖生が今の自分の気持ちを話すと教祖はそれを黙って聞いていた。

坂城聖生が話終えると教祖は「私を殺すつもりなんだね?」と微笑みかけたという。

見透かされているようで怖くなった。

光司の逃げ場もバレているのでは?と不安でいっぱいだった。

でもここで辞める訳にはいかないと、坂城聖生は手を広げ待つ教祖の胸部にナイフを突き立てた。

その後は瞳から完全に光が消えるまで何度も何度も刺した。

刺している間涙が止まらなかった、と坂城聖生はどこか悲しげな顔をして言った。


24日0時10分頃

出入口での争いが激しく救援部隊が坂城聖生の部屋まで来ることが出来ない。

私は部屋に散らばる衣類で坂城聖生の傷口を押さえていたが、負傷箇所が多くて間に合わない。

急所から外れていた事は幸いであるが、出血量が多すぎる。

手に生暖かい感触が伝わり広がる。


24日0時12分頃

坂城聖生の瞳は虚ろだった。

それでも坂城聖生は手を伸ばし何かを取ろうとしていた。

最後の力を振り絞って。


24日0時15分

坂城聖生は縄跳びを掴むと、一瞬だけ目を大きく見開き輝かせた。

私が驚く間もなく坂城聖生は、「これを流星に」と私に縄跳びを渡し、涙を流しながら目を閉じた。

どうしてかは分からないが、なにかに反応したかのように目を見開いた後、坂城聖生は微笑んでいた。

その微笑みは優しい人間にしか出来ない。


24日0時20分頃

救援部隊がやってきた。

坂城聖生が運ばれていく。

私は縄跳びを握りゆっくりと外へ出た。


24日0時22分頃

左門からの連絡を受ける。

坂城光司改め夜川流星が坂城聖生、海道朝陽の名を叫んだと。

夜川流星は気を失うようにして眠りにつき、今は病院へ移動中である。

夜川流星が「朝陽くん」と叫んだ声が耳から離れないと。

我々がした事は本当に正しかったのか?と自分を責めているようだ。

私も今、このやり方は正しくなかったのではないか?と疑問に思っているところである。


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