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秘密の報告書  作者: 藤岡
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12月25日

クリスマス。

この日の報道番組は朝から夜まで同じ内容ばかりが流れた。

その内容は、12月24日の深夜に孤幸教の本部に警察が乗り込んだというものだった。

今まで様々な事件に関与したと噂をされるが証拠不十分で家宅捜査すら行えぬ状況であったが、とある一人の男の協力を得て決定的証拠を入手した警察はやっと動くことができたのだという。


警察による緊急記者会見では、二人の男警官と複数の女警官がカメラの前に姿を現し頭を下げた。

「協力してくれたのは教団員の一人であった。

彼は加害者であるが、被害者でもある。

我々警察が捜査を打ち切らなければきっと彼は今頃どこかで幸せに暮らしていただろう。

我々は、彼に対して敬意を払い感謝を述べたい。

終わることのない悪夢を終わりへと導いてくれたのは間違いなく彼である。」

そう語ったのは左門大我である。


左門の隣に座る女性警官の前には、浅賀百合と書かれたプレートが置かれていた。

浅賀は涙を零しながらこう語った。

「すぐそばにいながら助けることができなかった。

彼はそれを望んでいたように思いますが、それでも私は彼も救いたかった。

初めて会った時、彼の目を見て全身に鳥肌が立ちました。

どういう生活をすればそんな目が出来るのか?と思うと同時に、彼の今までの悲惨な生活が私の脳内を巡りました。

思い付く限りの絶望、苦しみ全てを合わせてもきっと、彼が経験したものの足元にも及ばないのでしょう。

教団から与えられたこの苦しみは、我々警察が与えたも同然です。

もう二度とこのような事がおこってはいけない、そう強く思います。」


SNSでは孤幸教がトレンド入りし、日本国内だけに留まらず世界各国から様々な意見が寄せられた。


憶測に憶測を重ね出鱈目を言う者や、協力した教団員の男を批判する者、追悼の言葉を書き連ねる者、孤幸教を庇う者。


記者会見が終わると左門と浅賀はとある場所へと向かった。

その場所とは、警察が管理する重警備された施設だ。

被害に遭った者を保護する場所である。

左門と浅賀が訪れた部屋の中にいたのは夜川流星だった。

壁にもたれかかり座ったまま一点を見続ける。

そんな流星の姿を見て浅賀は涙を堪えきれなかった。


流星は被害者であり重要参考人である。

幼い子供であっても、話を聞かなくてはならない。

左門が声をかけても、浅賀が声をかけても、流星は反応を示さない。

ゆっくりとした瞬きをする以外何も動かさない。

医師を呼び状況を聞いてみたが、流星はまだ眠ってすらいないという。

今日の夜も眠らないようであれば、薬で寝かせることも視野だという。

食事も摂らず水分も補給しようとしない。

大人の力が無いと何もしようとしないのだ。


左門と浅賀がまた日を改めると言って帰ろうとした時、ポーンという音が響いた。

流星の部屋を覗くと、汚れた青いボールがコロコロと転がり、流星がこちらを見ていた。

左門と浅賀は息を飲んだ。

流星の目は絶望の一色に染まっていたのだ。

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