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12月23日
今日は光司のノートに俺の名前を書いた。
海道朝陽という文字を見て光司は首を傾げていたが、俺の本当の名前だよ。と言うと、嬉しそうに笑顔を向けた。
夜川 流星
そう書くと光司の笑みが消えた。
当たり前だ。捨てろと忘れろと言われた自分の名前なのだから。
海道 朝陽
夜川 流星
こうして見ると綺麗な字面だが、俺たちは二度とこの名を言うことも書くことも無い人生を歩むはずだった。
「もうお前は光司という仮の名前を名乗らなくていい。忘れなければならないのは光司という名前だ。」
俺がそう言うと光司はすぐに「どうして?」と書いて見せてきた。
「これが本当の名前だからだよ。」と言うと、光司は混乱していた。
教団での光司の名前は坂城光司。
俺も元々は世話係の名字を名乗っていたが、世話係が居なくなり新しく坂城という名を与えられた。
世話係が居なくなれば、その名字も捨てるんだ。
だけど光司はこのことを知らない。
知らなくていい。
だってもう、名乗ることはないんだから。




