09月07日
教祖様に呼ばれた。
吐き気がした。
だけど俺は従った。
部屋に入るといつものように微笑みかけてくる教祖様。
教祖様の前に座ると、教祖様の手が俺の方へ伸びてくる。
いつもなら黙って受け入れるんだけど、俺は初めて「待ってください。」と言ったんだ。
教祖様は驚き動きを止めた。
俺は、最近悪夢を見ることを話した。
流石に相手が教祖様とは言えず、教団員らしき人を殺そうとする夢だと話したんだ。
教祖様は俺の話を黙って聞いていた。
俺の話を聞き終えた教祖様は「それはとても辛かったね。」と俺の頭に触れた。
その手からは確かに温もりを感じたんだ。
鳥肌も立たないし、嫌悪感も無い。
「きみはよっぽどその人の事が好きなんだね。」
教祖様はそう言うと、俺をじっと見つめたんだ。
その目は俺の心を読んでいるのか?と聞きたくなるほど、真剣な眼で見つめる教祖様。
「夢に出るほどその人の事を考えているということ。」と、教祖様は仰ったが俺はそれに対して疑問を抱いた。
「それは嫌いな人にも当てはまりませんか?」と聞くと、教祖様はこう言った。
「そうだね。嫌いな相手のことを考える、つまり憎い気持ちが増大し脳を支配するほどその存在も大きくなる。
夢に現れることもあるだろうね。
だけど、きみの場合は相手の言葉を聞き躊躇してしまう。
心のどこかで、殺したくはないと思っているのだろう。
嫌いな相手なら……きみはまず相手の言葉に耳を傾けないはずだ。違うかな?」
俺はあれだけ刺しておいて、殺したくはないと思っているのか?
俺があまり納得していないのを察したのか教祖様は落ち着いた声でまた話す。
「きみは人にあまり関心が無いと思っていた。
だから、あの子……光司くんを傍に置いたんだよ。
もしかしてその夢に出てくる教団員というのは、光司くんの事かな?」
俺はすぐに首を横に振った。
夢であろうと光司にあんな真似をするわけがないし、想像しただけで目眩がする。
「では誰だろうね。
きみが今一番関心を寄せているのは光司くんか私だと思っているのだけど。」
俺は教祖様の言葉を聞いてゾッとした。
きっと、相手が誰なのか分かっているんだ。
教祖様の顔を見ると教祖様はいつも通り微笑んでいたんだけど、目の奥が笑っていない。
昔からそうだ。
教祖様はいつもこうして微笑み接してくれるし、それは誰に対しても同じなんだけど、何を考えているのかいまいち掴めない。
俺はずっと、教祖様の目が怖かった。
優しいんだけどどこか冷たくて。
だけど恐怖心を勝る優しさで包み込んでくれるから気にしないようにしていた。
だけど今の俺は、教祖様が怖い。




