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秘密の報告書  作者: 藤岡
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08月23日

久しぶりに光司と外に出た。

嬉しそうに走っていく光司を追いかけている時、俺は体力の低下に気付く。

今までなら息を切らさず到着していたのに、今日は少し呼吸が乱れたんだ。

このままでは駄目だなと思った俺は縄跳びをする光司の隣で腕立て伏せと腹筋をしていたんだ。


腕立て伏せをしている時、手のひらに食い込む砂利が痛ぇななんて思っているとズシッと背に重みを感じた。

「何やってんだよ。」と言うとケラケラと声を上げて笑う光司。

その状態で何度か腕立て伏せをすると光司はきゃっきゃと高い声を出した。

まさかな、と思いながら俺はそのまま腕立て伏せを続けた。


「一回休憩」と言うと光司はお茶が入った水筒を持って俺の前にしゃがみこみ目を見て微笑んできたんだ。

俺は光司から水筒を受け取り冷えたお茶を流し込んだ。


「光司」と呼びかけると光司はいつものようににこにことしながら俺の隣に座る。

「今日はいつもより声が出てた気がするけど、調子が良いのか?」と聞くと、いつもなら首を振って答える光司がとても小さい声で「うん」と言ったんだ。


全身に鳥肌が立った。

手足が痺れるような感覚で、目に熱を帯びた。


今までも漏れ出たような声は聞いてきたんだ。

ただ、話すことが出来ないだけでそこに声は存在する。

その声は存在を隠すように、自分の存在に気付いていないふりをするように、じっと静かに身を潜めていた。

だけどやっと、少しだけ顔を覗かせたんだ。


その後ペラペラ話すなんてことはなく、前のように頷いたりジェスチャーで伝えようとしたりする光司に戻った。

でもそれでいいんだ。

俺は確かに今日光司と声でのやり取りをした。

その事実がとても嬉しいから、そんなすぐに多くは望まない。

まだ、時間はあるから。

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